あなたはわたしの光 4
母さんが亡くなって父が倒れた後、家の中は太陽を失った世界のように、冷え切った重い空気が充満していた。リオとレイナはふさぎ込み、笑い声は消えた。ロシトの街も、どこか活気がない。みんな気を使ってくれるし、優しくしてくれるけれど、笑顔はぎこちない。
だから、せめて私がなんとかしなければ、と思ったんだと思う。
馬鹿なことをしてみんなを笑わせたり、たくさん食べて「おいしい、みんなも食べて!」と叫んでみたり、父の真似事をして困っている人の手伝いをしてみたり。
あの時なぜか、自分までふさぎ込んだら、なにもかもダメになってしまうんじゃないかという恐怖と、私がなんとかしなければみたいな、謎の使命感があった。
だから“それ”を思いついた時、世界を変える大発明をした科学者のような気分だった。
「ねえ、私お医者さんになるよ。私がお父さま、元気にするよ!」
だからお兄ちゃんもお姉ちゃんも、もう大丈夫だよ。
そう言うと、リオもレイナも視界を覆っていた雲が晴れたように、目を輝かせて頷いた。
「そうだ。素敵な案だよ、ニーナ! 僕も医者になるよ! みんなで医者になろう!」
「いいわね、お医者様。私たちみたいに、母親を亡くしてしまう子供たちを助けるのよ!」
さっそく街の人にお願いをして、隣の街から家庭教師に来てもらい、勉強を始めた。
なにもかも順調に良くなっていると思った。
けれど次第に、リオとレイナに取り残されるような感覚が強くなっていった。
そりゃあ姉とは6歳差、兄とは10歳差だ。当然といえば当然。けれど段々とできないことが増えていった。同じくらいの歳の子と比べてもあまり出来がよくないのだろうというのは、少しだけ困惑したような、がっかりしたような先生の顔を見るうちになんとなく理解していった。
がんばっていたつもりだった。だから、先生に他の道を探すことを勧められた時は、怒りもあったし失望も絶望も、悲しみもあった。
兄と姉のがんばりに比例するように、父の体調はよくなっていき、街の人々も次第に日常を取り戻していった。
私がいなくとも、世界は良い方向に向かう。いいことだけど、少し、寂しい。
「誰かを助ける方法は別に医者に限らない。例えば……ほら、ここにはないが、大きな街には騎士団っつーのがある。悪い奴をやっつけて、弱い人や街の人を助ける仕事だ!」
落ち込む私を見かね、そう慰めてくれたのはウェスさんだった。
自分が進むべき道に迷った私にとって、その言葉は一筋の光だった。
騎士団が何かはよく分からなかったし、「じゃあそれをやる」と言った時のウェスさんが慌てふためくのを見て、簡単なことではないのだろうと思っていたけれど、でも、なにか目指す場所が欲しかった。
騎士団は開かれた組織だ。性別も、生まれも関係ない。強い人間、役に立つ人間であることが全て。その理念は救いでもあったし、同時に、進んでいく先がいばらの道だと示す警告でもあった。
見習いになるために、剣の腕の立つ師を見つけ、そこで修業した。
しばらくは全身筋肉痛になってまともに動けなかった。でも、訓練は続いた。泥のように眠って、あっという間に朝が来る。また剣を振るう練習をして、体を痛めて、食べて、眠る。それの繰り返し。
だから見習いになれた時は、本当にうれしかった。やっと努力が一つ、実ったようで。
けれどすぐに、まだ努力は実っていなかったのだと思い知らされた。
騎士団見習いの日々は、人生で一番過酷な旅だった。
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