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仮初のロマンス劇場 4


 翌朝、いつもよりも早く起きたニーナは手早く身支度を済ませ、カイトの部屋をノックした。

 休暇なんだからゆっくり寝かせてあげたい気持ちもあったが、夕方に始まるパーティーに向けて朝から忙しい。

 申し訳なさから控えめなノックになったが、すぐにドアが開いた。すでに身支度を完璧に済ませたカイトが「おはよう」と顔を出す。

 ニーナは渋い顔をした。


「なんだ、朝一番に、その顔は」

「いえ。普通につまらないなぁ、と思いまして」

「は?」

「寝ぐせぼざぼさの頭で、ぼんやりしたカイトが、目くそでもつけて出てきてくれたら面白いなぁと思っていたんです。いっつも完璧で、なんだかつまらないです」

「……お前、目くそはないだろ」


 呆れ顔のカイトと共に1階へ降りると、ちょうど玄関がノックされた。レイナとリオだろう。ニーナがドアを開けると、2人の子供達が勢いよく部屋の中に駆け込んできた。続いてまだどこか眠そうなレイナとその夫、リオとその妻が続く。それぞれの配偶者にその場で手短な挨拶と、カイトの紹介をしたところでリエッタとオルトがやってきた。


「みんな、よく来たわね。さあ、朝食の準備ができてますよ」


 家族全員が集合するのは、約1年、再婚パーティー以来のことだ。

 ダイニングルームの長テーブルはリオ一家と、レイナ一家それからニーナとカイトが集合してにぎやかこの上ない。机の上にはリエッタが腕を振るったロシトの郷土料理が並び、淹れたての紅茶をお供に、楽しく進んだ。

 カイトは最初こそ、にぎやかすぎるくらいの食卓に面食らっていたが、10分も経たない間に子供たちと笑いながら話をしていた。


「意外です」


 食事を終え、机の上の食器を下げながら、ニーナは言う。


「なにが?」


 両脇を子供に固められ、動物の絵を描かされながら、カイトは返した。


「そんな一面があったとは」

「子供は好きだぞ。それともなんだ。俺が子供に対して冷たい、血も涙もない男だと思ったか」

「そういうわけじゃありませんが」


 カイトの右手が生み出す、細長い丸に棒のようなもの4本生えた、犬と魚の間のような生き物を見て、ニーナは口の端に小さな笑みを浮かべる。絵はあまり得意ではないらしい。


「子供と触れ合っているところは、想像したことがなかったので」

「俺にできないことなんてあるわけがないだろう。子供の相手くらい、朝飯前だ」


 そうは言っているが、子供達はカイトの絵を見て「変なの!」「兄ちゃん絵下手だな!」とけたけた笑っている。朝飯前とは言い難い状況に、ニーナはとうとう吹き出した。

 カイトがムッと顔をしかめる。


「おい、何笑ってる」

「いえ。流石だと思いまして」

「お前、絶対思ってないだろ」


 滅相もないです。と言いかけたが、もう一度カイトの生み出した未知の生物を見て、結局声を出して笑ってしまい、カイトの言葉を肯定することになってしまった。しばらく、思い出して笑ってしまいそうだ。


「で、ニーナ、この後の予定は」


 ほんのり赤面しつつ、カイトは咳払いとともに話題を変えた。子供たちは依然、カイトを挟んだままお絵かきを続けている。


「父と兄、義兄さんは会場のセッティングや荷物の運び込みをするそうです。女性陣は会場の装飾やら料理の準備ですかね」

「分かった。俺も力仕事を手伝うよ」

「あ、いえ。カイトは大丈夫です。ゆっくりしていてください」

「はぁ? そんなわけにいくか」

「いいえ。招待客にそんなことさせられません。父もリエッタさんも、そう言っていました」


 けど、と言いかけたカイトを遮るように、ニーナは続ける。


「小さいですけど図書室もありますし、部屋で昼寝でもしながらゆっくりしていただいても」

「そうは言ったって」


 渋い顔をしてなにかを言いかけたが、カイトはぷつりと言葉を切って、口元を抑えた。先ほどまでとは違い、まるで仕事中かのように、何かを考え込むような表情をしている。「どうしました?」とニーナが聞くと、立ち上がり、顔を近づけて、ほんの少しトーンを落として言った。


「なら、街に出ようと思う」

「それは……構いませんが。大丈夫ですか。昨日ネネットさんに会ったから、今回はさすがにみんなカイトのこと知ってますよ。あれやこれや聞かれて面倒だと思いますけど」

「構わない。むしろ話せるほうがいい。支部の件、少し気になるんだ」


 ニーナは、げぇと言わんばかりの表情でカイトを見上げた。


「それは、私も気にならないわけではないですが」

「が?」

「こんなところまで来てそんな仕事中毒っぷり出さなくたって」


 そういえば仕事中毒の筆頭みたいな人だったと思い出し、ニーナは自らの言葉を否定して、「わかりました」と言った。「やめておいた方がいいですよ」と言ったところでやめるような人ではないし、そもそも「ゆっくりしていてください」と言ったところでゆっくりできるような人ではないのだ。

 結局、朝食が終わってしばらく子供たちと遊んだ後、カイトは家を出て行った。

 見送りをすませ、「さて」とシャツの袖を捲った。料理の仕込みの手伝い、テーブルセッティング、招待客が来る前に身支度も済ませてしまわなければ。今日は適当にパパっと化粧をして小奇麗なワンピースを着ればいいわけではない。

 ……ドレスか。気が重いな。

 ふう、と息を吐いたところで、「ニーナ」と名前を呼ばれ、振り返った。大きな樽2つ両脇に抱えたオルトが立っている。


「一つ持ちましょうか?」

「いいや、大丈夫だ。カイト君は?」

「そこら辺を散策してくるって、もう出てしまいました」

「そうか。残念、いや? 今回はいないほうがいいのか?」


 オルトは独り言ちて首を捻ったが、最終的に「まあいい」とニーナに向き直った。


「お前に、会いたがっている人がいるんだ」


 ニーナはこてんと首を傾げた。


「会いたがってる人?」




***


 植物の青さと甘さの混じった香りに包まれたフィント家の庭を抜け、正門をくぐりそのまま広場に出る。石畳に太陽が反射して、まぶしい。カイトは目を細め、周囲を見渡した。

 円形になった広場の中央には小さな噴水があり、広場を囲むようにいくつかの店が並んでいる。朝早いからか、まだ開いている店は1軒だけ。こんな時間から空いているということは、きっとカフェだろう。客もまだ多くはなさそうだし、そもそも周囲に人影がない。

 朝食を済ませたばかりだが、仕方がない。カイトはカフェの入口をくぐった。


 広い店内に、客はほとんど、というかカウンターで突っ伏して寝ている体格のよさそうな男以外いない。灯りもついておらず、薄暗い店内に男のいびきだけが虚しく響く。

 入る店を間違えた。

 カイトが踵を返したところで、「いらっしゃい」とどこかで聞いた声が飛んできた。


「あら? あんた……」


 振り返った先、カウンターの中に立っていた女性と目が合うと、彼女は小さく飛び跳ねた。


「“ニーナの旦那”じゃないか!」

「……ネネットさん……」


 昨日、集荷場で会ったネネットという酒場の女性だ。ニーナ曰く、“ロシト一番の情報通”。つまりここはカフェではなく、酒場らしい。さらにいえば、店内はとても営業中のような雰囲気ではない。

 入る店を間違えた。カイトは本日2回目の感想を抱きつつ、「おはようございます」と人当たりのいい笑顔を張り付けた。一瞬、まだニーナの旦那ではないと訂正しようか悩んだが、彼女から飛んでくる質問が一つ増えるだけだと、止めておく。

 今日は根掘り葉掘り聞かれたいのではなく、こっちがいろいろと聞きたいのだ。


「やだ、どうしたんだい? ニーナになにか頼まれたの?」

「いえ、すみません。開店しているんだと思って入って来てしまったんです」

「あら、そうなの。紛らわしくて悪いわねぇ」


 朝一番とは思えないほどハリのある声そう言って、ネネットはからからと笑った。


「ま、飲み物くらい飲んでいきなさいよ」

「いえ、俺は」

「紅茶、それともお酒?」

「いや、酒は」

「ははっ、そうよねぇ。朝方まで飲んだくれてこんなところでぐーすか寝てるおっさんとは違うものねぇ。紅茶用意するわ。さあ、座って、座って!」


 カウンターの席を引かれ、断る間もなくネネットは店の奥に引っ込んでしまった。

 すっかり向こうのペースに飲まれてしまい、カイトにはもう、その椅子に座る以外の選択肢は残されていなかった。そこそこの声量があるネネットの声にもピクリとも反応せず、いまだいびきをかき続けている男性の3つ隣の席にそろりと腰かける。


「散歩?」


 店の奥から声だけでネネットが尋ねた。


「ええ、そのつもりです」

「うろうろするだけならいいけれど、今日は空いてる店少ないわよ。お祭りみたいなもんだからねぇ。みーんなパーティーが楽しみでそわそわして、仕事になんかなんないんだから」

「みなさん参加されるんですか?」

「そうよぉー。大通りから広場、フィントさん家の庭までぜーんぶパーティー会場にして、みんなでおいしいもの持ち寄って食べて、歌って踊っての大騒ぎさ」


 店の奥から湯気の出たカップとフルーツの盛られた皿を持って、ネネットが出て来た。「朝摘んだばかりのフルーツよ」と、皿とカップが目の前に置かれる。フルーツは星のような珍しい形をしていた。


「楽しみにしすぎて、このおっさんみたいに前夜祭だのなんだのって、前の夜から飲んでパーティー前から伸びてちゃざまぁないけどねぇ」

「はぁ……」


 ネネットは呆れたように、いびきをかく男を一瞥してから話を続けた。おしゃべり好きらしく、カイトが聞いていないことまで、するすると話してくれる。


「この店も今日は休みさ。朝早くから開いてるのは、パーティーに持ち寄る食事を用意するから。お祝いだからね、うんと豪華にするつもりだよ。カイトさん、だったね。好きなものはあるかい? 出来る限り用意するよ」

「なんでも好きですよ。ロシトの料理を食べる機会はあまりないので、どんなものでも楽しみです」

「はー……」


 ネネットは感心したように、カイトの顔を見た。


「あんた、育ちのよさそうな子だねぇ。いいところの坊ちゃんだろう」


 自分の生まれをこんなにも直接的に聞かれるのは初めてで、一瞬面食らったが、ネネットに悪気はなさそうだ。どう答えるか悩んだが、カイトは苦笑しつつ、控えめに「まぁ」と肯定した。


「そうだろうと思ったよ! あんたみたいに品のよさそうな男はここにはいないからね。王都に住んでるのかい?」

「ええ」

「いいねぇ。生まれも王都かい?」

「いえ、生まれはフォントニアで、」

「フォントニア! いいところじゃないか。なんで王都に?」

「王都で仕事をしていて、」

「ん? そういえば、仕事ってなにしてるんだっけ?」

「それは」


 結局、根掘り葉掘り聞かれてしまっている。こちらのペースを無視して次々と飛んでくる質問に、カイトは張り付けた笑みの下で冷や汗をかいた。「ロシトの人達は、カイトの想像の10倍くらい遠慮がない人達ばかりですよ」というニーナの言葉が思い出される。なるほど、確かに、この距離の詰め方はなかなか手強い。


「だーっ、待て待て。そんな質問攻めにしたら可哀想だろ」


 突如頭上から降ってきた天の助けに、カイトは顔を上げた。

 体格のいい男性――さっきまで少し離れた席でいびきをかいていた男が、ぼさぼさの頭のまま、酔いの抜けきらない顔でこちらを見下ろしている。歳は、自分の父親くらいだろうか。ニーナの父親ほどではないが、やはり大きな体をしていて、少し汚れの目立つ作業着から丸太のようにたくましい腕が伸びている。ネネットが「ウェス」と男性のことを呼んだ。


「せっかくの紅茶が冷めるだろ」

「あら、そうね。私ったら、ごめんなさい」

「いいえ……」

「でも、人の店を宿代わりにしてたような、酔っ払いに気遣いについて言われたくないわ」


 ネネットが眉をひそめると、男性――ウェスは「まぁまぁ、固いこと言うなよ」と言ってから大きなあくびをした。


「聞きたいことは山ほどあるんだ、ゆっくりいこうぜ」


 初対面だというのに、ウェスは、まるで旧知の仲であるような顔で、隣に座った。酒の匂いが強い。ずいぶん飲んだのだろう。にもかかわらず、ウェスはネネットに酒を注文し、案の定ばっさりと断られていた。代わりに水が出てきて、文句を言いながらもそれを勢いよく飲む。

 ――ネネットさんとはまた違うタイプのクセが強い人だな。

 ロシトには変わった人しかいないのだろうかと思いながらウェスを見ていると、ばちりと目が合う。


「よお、自己紹介が遅れたな。俺ぁ、ウェス・トルハ。大工だ。そんで、」


 ウェスは白い歯を見せて笑い、手を指し出した。


「ニーナのオヤジみてーなもんでもある」




***


 料理の仕込みをしばらく手伝った後、ニーナはオルトに呼ばれ、応接室に入った。“会いたがっている人”に心当たりはない。

 少し待っていると、オルトに案内され、男性が入ってきた。目が合うと、「おはようございます、ニーナさん」と柔和な笑みで挨拶される。


「あ……おはようございます……」


 この男性に、見覚えがあった。自分よりも幾分か年上で、優しそうな男性。栗色のサラサラの髪、品のいい装い、上品な笑み。えーっと、誰だ、誰だっけ。

 余所行きの笑顔を張り付けたまま、ニーナは思案した。

 名前を呼ばれたのだから、向こうは自分のことを知っている。いつだ。いつ会ったんだっけ。


「……あ。もしかして、僕のこと、覚えていませんか?」


 ぎくり。ニーナは笑顔の端を引きつらせた。

 その様子に、男性は小さく吹き出し、腰を折った。そのまま、流れるような動きでニーナの手を取ると、甲に小さなキスを落とす。


「お久しぶりです、“美しいお嬢さん”」


 悪戯っぽい台詞に、ニーナは「あっ」と口を開けた。


「あの時の!」


 2か月前、リエッタさんが体調を崩したからとかなんとか嘘をついて呼び出されたときに会った、あの!


「そうです。ギーシーズ商会の息子の、ベルロスです」


 出会った時のことは思い出したが、自己紹介をされても、「そんな名前だったんだ」という感想しか出てこない。

 ベルロスには申し訳ないが、名前どころか、会った時のことはほとんど覚えていないのだ。あの時期にはたくさんの人を紹介されていたこともあるし、そもそも恋愛事に乗り気でなかったのもある。何より、その後が大変だったこともあって、彼のことは、記憶の片隅に埋もれてしまうくらいの存在でしかない。本当に、申し訳ないことに。

 と思いつつも、それを顔に出さないようにして、ニーナは「お久しぶりですね、ベルロスさん」と返した。


「その節は申し訳ありませんでした」

「いいえ、お気になさらないでください。僕のような男ではなかなか、ね」


 ベルロスは困ったように頬を掻いた。

 ニーナは大げさなくらい手を振り、その言葉を否定する。


「そんなこと! あなたが嫌だとか、そういうことではなかったんです。ただ、あの時は私がまだ子供だったというか……恋愛だとか結婚だとか、そういう気持ちになれなくて」


 言い訳のようになってしまったが、本当のことだ。ベルロスは間違いなく、自分にとってもロシトにとってもいい相手だろう。彼になにかしらの問題があったわけではなく、ただ、自分の気持ちの問題だ。


「……そう言ってもらえると、嬉しいです」


 ベルロスは恐縮したように微笑んだ。


「もうあの時のことは気にしないで。僕も今回は、ギーシーズ商会の息子として、ただオルトさんとリエッタさんのお祝いにきただけですから。いい友人として、仲良くしましょう」

「はい、ありがとうございます」


 いい人だな、と思った。ニーナはほっと胸を撫で下ろす。この言葉が建前だったとしても、多少心は軽くなる。本当に、友人になれるかもしれない。差し出された手を固く握り、仲直りをする子供のように手を上下に振った。


「ベルロス様」


 ふっと、聞いたことのない声がした。ベルロスの向こう側、ドアのすぐ前に黒い短髪の男が立っているのに、ニーナは今、気が付いた。釣り目気味で、背が高い。服装も顔立ちも派手な印象ではないが、それでもこんなにも人の気配に気付かないことは、ほとんどなかった。

 視線が合うと、男の目がかすかに細められた。

 刹那、ぞわりと総毛立つような感覚に襲われ、反射的に腕を引っ込めた。


「? どうしました?」


 突然手を離され戸惑うベルロスに、。慌てて「あ、いえ……すみません」と笑顔で返す。


「静電気が。すみません、私の手、乾燥しているみたいで」


 もちろん、静電気なんかじゃない。「そうですか?」と不思議そうな顔で自分の手を見つめるベルロスを横目に、ニーナはもう一度、後ろの男を見た。

 彼を見て、先程のような感覚になることはない。気配を感じにくいだとか、そんなこともない。いたって平凡そうな男だ。呼び方や立ち位置から察するに、きっと彼はベルロスの従者だろう。

 先ほどの感覚はなんだったのだろうか。嫌な予感というか、恐怖というか――

 ニーナは自分の手の平に視線を落とした。薄く汗が滲んでいる。


「ベルロス様、そろそろ」

「ああ」


 男にそう言われ、ベルロスは眉をはの字にして「すみません。まだ行かなければいけないところがありまして」と、話を切り上げた。「仕事熱心ですなぁ」とオルトが返す。


「では、ニーナさん、また後で」

「……ええ。また会えるのを楽しみにしています」


 そう返すとベルロスは笑みを深くした。ニーナもつられて、一層口の端を吊り上げる。

 互いに笑顔のまま、居心地の悪い沈黙が数秒続いた。と思ったら、突然、ニーナは腕を引っ張られ、姿勢を崩すようにして一歩前へ出た。「わ」と間抜けな声を出したと同時に、耳元にベルロスの息がかかる。


「もし、王都で困っていることがあるなら、いつでも相談に乗りますから」


 オルトには聞こえないような小さなささやきに、ニーナは前傾になりながら、きょとんとベルロスを見た。なんで急にこんなことを言われるのか、皆目見当がつかない。が、至近距離で目が合うと、「ね?」と爽やかなウインクが飛んでくる。ニーナはますます混乱したが、なんとなく雰囲気的に「なんのことですか?」とは言いづらかった。

 結果として、どこか気の抜けたような感謝を返すことになった。


「え……あ、はい。それは、どうも」

「ええ。では」


 ベルロスは満足げにそう言うと、踵を返し、部屋から出て行った。後ろから浮かれた父親が「ベルロス君はニーナにまだ気があるんじゃないか!?」とか言って騒いでいるが、ニーナには、とてもそうだとは思えなかった。


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