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夜になり、公務から戻ってきた龍王はまるで離れを惜しむかのようにメイリンにくっついていた。
「本当に行ってしまうのか?」
「はい。」
それは少しは会う時間は少なくなるが、全く無くなるわけではない。
今のように食事を一緒にして、いつものように一緒に眠る。
それらは明日から後宮の中で行われる。
メイリンは後宮に籠ることを宣言していた。
もう何か無い限り王宮へとは近づかないだろう。
もちろん、仕事中の龍王の膝にメイリンが乗ることはもうない。
龍王はかなり嫌がっていたが、強引に納得してもらった。
「最後ですからお風呂一緒に入りませんか?」
ご機嫌斜めな龍王にメイリンがお風呂に誘うと、直ぐに顔が明るくなった。
「ならば早く支度をしなければ!」
龍王は女官よりも忙しなく動いて準備を始めた。
「後から参りますので、先にお入りください。」
メイリンの着替えをする気だった龍王は少し落ち込んだように見えたが、少し考えて納得したのか浴場へと一人向かった。
メイリンは龍王を見送ると、ささっと自分で着替えて龍王の後を追う。
「おまたせしました。」
薄い白の肌着を着たメイリンを見て、龍王は複雑な顔をしていてメイリンにはその感情は読み取れなかった。
「ああ。隣に…」
「では失礼します。」
メイリンは風呂の中に入り、龍王の隣に腰掛ける。
龍王は目の置き場所が無いのか、視線をあちらこちらに飛ばしていた。
「ハクレン様、ありがとうございました。」
今はこんなだけれど、王宮に来て幸せなことが多かったように思う。
怪我をしたメイリンを龍王は必死に世話をしてくれたとカンレイもサーシャも言っていた。
それこそ食事や着替え、身体を拭いてくれたり、時には包帯も巻いてくれたらしい。
結局包帯はうまく巻けず他の方にやってもらったと聞いて、龍王にもそんなことがあるんだとメイリンは微笑ましく思った。
そんな幸せもあったけれど、後宮の中でも同じように幸せな思い出を重ねていくのだろう。
「その言い方は好きじゃない。最後みたいだ。」
そう言って龍王が、口角を下げる。
メイリンの前だけ美しい顔を崩してコロコロと表情を変える龍王が好きだった。
できれば、それを幸せなまま見ていたいから、メイリンは明日王宮を出る。




