52
傷を負ったメイリンの世話と警護をするため、部屋の中には多くの龍がいた。
メイリンはその視線たちから逃げるように目を閉じて眠る。
悲しい時は家族と羊たち、それから目の前に広がる壮大な自然と時を共にすることによって、いつしか苦しかった感情は薄まっていった。
特に小学校で虐められた時はローヤンの存在があるメイリンを慰めてくれた。
今はいないけれど、いつも味方になってくれる龍王がいる。
だから大丈夫。…大丈夫よね?
それなのにメイリンの脳裏にはいつもメイリンに呆れ返る龍王がいる。
『番』という絆を理解できないメイリンは頭でわかっていたとしても、いつ、龍王に愛想を尽かされるかわからない恐怖を捨てられなかった。
「メイリン。」
名前を呼ぶ優しい声にメイリンは静かに目を開けた。
待ちわびていた優しい目覚めに自然と笑顔になる。
「ハクレン様。」
メイリンが手を伸ばすと、龍王は嬉しそうにそれを受け入れた。
「会いたかった、メイリン。身体の調子は大丈夫か?」
同じ部屋で寝起し今朝も一緒にいたというのに、龍王は感動の再会のようにメイリンを気遣い、可能な限りメイリンに触れようとする。
「おかげ様でかなり調子が良いです。」
まだズキズキと痛む傷は少しずつ治る気配はしていたが、違う痛みが時折胸のメイリンを襲っていた。
その痛みを見ないふりをしてメイリンは微笑む。
「一緒に昼食を取ろう。」
龍王の言葉にもうこんな時間かと嬉しい気持ちもあるが、まだこんな時間かと何故か残念な気持ちになった。
「はい」と返事をして体を起こそうとするが、引き攣るような痛みにメイリンはすぐに悶絶してしまった。
「まだ動いては駄目だ、メイリン。」
苦しむメイリンに龍王が唇を寄せ、同時に苦い液体をメイリンの口内に注ぎ込む。
メイリンの身体の中を通る液体はそのまま染み渡るように痛みを取っていった。
龍王はメイリンの身体を浮かせてその隙間に柔らかな枕をいくつか挟み、メイリンが食事が出来るような体勢にする。
「全てを任せてくれ。それが幸せなのだ。」
メイリンの虚ろな目に龍王の心配そうだけれども蕩けそうに微笑む顔が映っていた。
なされるがままのメイリンを龍王は嬉々として世話をする姿はまさに幸せそうで、メイリンの罪悪感を少しずつ消してくれている。
「少しばかり食べれるか?」
食べやすいものを選び、匙でメイリンの口元へ運ぶ。
それをメイリンが口に入れ咀嚼し飲み込むと、龍王はそれはそれは嬉しそうに笑った。




