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メイリンの容態が落ち着き、龍王は本格的に仕事を再開する日となった今日、メイリンは龍王と繋いだ手を離し難く思っていた。
龍王の庇護下にいなければメイリンは生きていけない。
その事が今回の出来事でメイリンの中に深く刻まれてしまった。
かと言って、これ以上自分本位に龍王を求めてしまえば反感を買ってしまう。
これ以上敵意に塗れたく無かったメイリンは龍王に良い顔して、自分の手を引いた。
「いってらっしゃいませ。」
揺れる心を押し隠して笑顔で龍王を見送る。
「すぐ戻るから待っていてくれ。」
メイリンの体調を気遣うように軽く触れるだけの口づけが落とされる。
その優しさよりも傷なんて痛んでもいいから、本当は龍王にそばにいて欲しかった。
メイリンの気持ちだけにはどうすることもできないほど心に傷を残していた。
龍王の手から離れたメイリンの手は静かに震えている。
その震えを抑えるように硬く握り締めてみるが、一向に治る気配はない。
ジワジワと痛む傷がメイリンを取り囲む悪意を敏感に感じさせた。
もし、私が龍だったら受け入れてもらえたのだろうか。
前の王妃は誰からも受け入れてもらえていたのだろうか。
龍王の隣に立ちたいという思いが強ければ強いほど、今の自分の今の立ち位置が隣に立てるほどの人物ではないと思い知らさせられる。
メイリンはこの城の誰からも歓迎されていないことを知っていた。
誰からも望まれない龍王の番。
そん現状は龍王の愛するこの国を愛したいと願うメイリンに少しずつ影を落としていった。




