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白く登る龍をメイリンが見送る。
月の光のように優しく虹色に輝く美しい龍に、初めて龍王を見た日のことを思い出していた。
ローヤンと結婚ができるとワクワクしていた自分はもういない。
今はただ自分の一部を剥がされたような喪失感がある。
それくらいメイリンは龍王と時を同じくしたのだ。
「明日は朝一でお迎えにきてくださるのだろう?」
名残惜しく空を見つめるメイリンに父が言う。
「うん。家に戻ろうか。」
振り返ってメイリンは我が家へと入ろうとすると、
「でも、安心したわ。ちゃんと夫婦やってるのね。」
ウトウトしているカイリを抱えた母がメイリンに言った。
その言葉にメイリンは目を見開いた。
「…本当にこれで良いのかわからないけれど。」
メイリンはすぐに目を伏せて、弱音を吐いた。
少しずつだけれど、メイリンと龍王の中で築けているものはあると思う。
けれど、それが正しいのかはわからない。
「そう言うものよ。でも、メイリンは運が良かったわ。とても愛されて大切にされている。」
母はメイリンを優しく諭した。
それはメイリン自身も思っている。
龍王からメイリンはとても大切にされていると思う。
きっと私の問題だ。
心が騒ついて、幸せだけれどどこか不安になる。
メイリンは寝心地の悪い布団の上で、自分の中にある不安の根源を探していた。
自分の容姿や種族のことで申し訳ない気持ちもある。
でもそれだけじゃない。
「メイリン。」
何処からか聞こえてくる自分を呼ぶ声にメイリンは布団から飛び起きた。
父でも母でもない、男の人の声。
「ローヤン?」
メイリンは聞き覚えのある声の主の名前を呼んだ。




