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「メイリン、乗りなさい。」


父が馬車というにもはばかられるような小さな荷台にメイリンを促す。

荷台にはメイリンが座れるように丸太がひとつ置いてあり、その横に市場で売るための羊が縛られている。

母がこの日のために出してくれた赤い服を着て、うっすらと化粧をしたメイリンが無言で馬車に乗り、丸太に腰をかけた。


「メイリン、いってらっしゃい。」


母が優しい笑顔で送り出してくれる。


「メーねーちゃバイバイ。」


弟も母を真似して手のひらを振ってくれている。

なのにこの羊と一緒、出荷される気分になるのはどうしてだろうか。

メイリンは必死に作り笑いをして二人に手を振った。


「帰りはローヤンに送ってもらいなさい。」


街に着くとメイリンは馬車から降ろされ、父からそう言われる。

ローヤンとはお隣、と言っても1キロほど離れた家の幼なじみで、同い年の男の子だ。


「はい。」


今度はメイリンが父と羊を見送る。

本当は心細くて堪らない。

しかし、どうしても言い出せなかった。


「あら、貧乏人がいるわ。臭ーい。」


とある集団の一際綺麗な女の子が声をあげた。

早速見つかってしまったと、メイリンも逃げようとするが、集団は素早く形をかえてメイリンを取り囲んだ。


「よく来れたわね。」

「あんたが来ても誰も寄り付かないから。」

「せっかくのお祭りが台無しじゃない。」


集団の面々が矢継ぎ早にメイリンに罵声を浴びせる。

確かにメイリンの家は貧乏だ。

格好もそう、メイリンの着ている服は長いスリットの入ったドレスに下にズボンを履いている。馬にも乗れるようになっているこの服がこの地域の伝統的な服装だが、集団の少女たちは天女のような美しくきらびやかな服装をしていた。


「なんとか言いなさいよ!」


一人がメイリンの肩を押すと、体の小さなメイリンは一歩後ずさってしまった。


「すみませんが、やめていただけませんか。」


ひとりの少年がメイリンと集団の間に入った。

この素朴な顔をした少年が幼なじみのローヤンだ。

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