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「昨夜は大変でしたね。」
「…私は大丈夫でしたが…龍王様が…」
労いの言葉を言うサーシャにメイリンは目を逸らした。
「龍王様ならお分かりですよ。今はああでも以前は賢王として名高い方でしたので。」
「…そう、だといいですけど…」
酷く傷つけてしまった気がする。
今もよく分かっていない。
どうして龍王を傷つけてしまったのか。
メイリンは愛をまだ知らない。
ましてや、龍の番いへの愛情を理解するなどとてもじゃないけれど、できない。
その無知が知らず知らずに龍王を傷つけてしまうことを知っていても、何処で何で傷つけてしまうのかわからない。
ローヤンの時はどうだっただろうか…
愛情では無かった気がする。
ただただ恩人であり、側に仕えて恩返しをして行きたい、この人ならば理想の幸せな家庭を築ける、そんな気持ちだった。
だから、あの時メイリンが傷ついたのは自分よがりな期待の所為だったと明確に言える。
難しい…
メイリンが眉間にしわを寄せる。
メイリンは自分が見た目だけで好意を寄せることの無い人間ではないことは一つ分かった。
それは美しい龍王が近づけば照れてしまうけれど、それがカンレイであっても同じだと思う。
どうしたら、龍王を愛することができるのだろう。
龍王が私に触れないと決めた時、嬉しくて暖かい気持ちになったけれど、それが愛情に関するものかどうかはわからない。
どちらかと言うと「信頼」だ。
「今日はお控えなさるとはおもいますが、あと一日で期が開けますから、明日の朝頃お迎えに来られるでしょう。」
サーシャの言葉にメイリンは唇を噛み締めた。
もう二度と迎えなんて来なかったりして。
番いの絆があったとしても、本当の龍王の気持ちはどうだろうか?
龍の方々は非常に綺麗な方が多い。
龍王は群を抜いているけれど、サーシャも侍女たちも人間に居たら驚くほどの綺麗さだ。
それなのに龍王はメイリンしか選べない。
今すぐ結婚もできない、いくら愛されても返すことができない、できたとしても同じような永遠の愛とは限らない、そんな人間を番いだなんて神様はなんと残酷なのだろう。
今、メイリンが龍王に思っていることがあるとするならば、「憐れみ」だ。




