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メイリンは龍王から押し倒されていた。

後宮にきて二日目の夜、龍王の本能がとうとう暴走してしまったらしい。


「ハクレン様…」

「メイリン、メイリン、メイリン…」


龍王の目が血走っている。

白い肌も龍化したときのように虹色に輝いていた。


これは危ない。


メイリンはすぐに思った。

このまま龍化してしまえばメイリン押し潰されて、呆気なく死んでしまう。

サーシャが言っていたことだ。

人間であるメイリンの身体は龍と違って軟弱であり、その為にも龍心という番いの龍の鱗を飲んで身体を強くしなければならない。

しかし、成長途中のメイリンが龍心を飲めば寿命も延びると同時に成長も緩やかになり、出産を望めるようになる年も先になってしまう。

どうしようも無くなったなら、顎の裏にある龍心を剥いで飲み込みなさいとは言われたが、そんなのは無理に決まっている。

今の龍王から龍心を剥がす自信はない。


でも、少し可哀想。


龍王はずっと本能に抗っている。

メイリンの名前を呼ぶ声が、求めているだけではないのをメイリンは知っている。


そんなに、辛いのなら…


「ハクレン様、お辛いのならば後宮を使われては?今ちょうどここは後宮になります。ハクレン様を受け入れることのできる方がいらっしゃるはずです。」


メイリンがそう言うと、顔の横に拳が振り下ろされた。


「メイリン…お前は知っている。知っているくせに…もう他の人では無理だと…」


龍王が絞り出した声は怒っているようで泣いているようにも聞こえる。

フラフラになりながらも立ち上がり龍王は扉に向かうと、即座に龍化して飛び立ってしまった。

龍王の尾が当たってしまい壊れた扉から苦しそうに鳴く龍の咆哮が聞こえた。


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