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「我が番いよ!」
部屋に入ってくるなり龍王は、メイリンを抱きしめた。
「会いたかった…番いのいない時間など苦痛以外の何物でも無かった…」
力一杯抱きしめられ、メイリンは命からがら龍王の腕から顔を出した。
「おかえりなさいませ、龍王様。お仕事お疲れ様です。」
サーシャ曰く、番いを持った雄の龍は番い中心の生活になり、仕事が立ち行かなくなる。
そのために、番いの雌が雄が堕落しないように声をかけなければならない。
メイリンは龍王に対して使えそうな言葉を数種類、サーシャから伝授されていた。
「我が番いから言われると疲れが吹き飛ぶな。」
龍王はメイリンの頰を撫で、唇を重ねた。
何度か重ねる毎に少しずつ長くなる接吻に、メイリンはこれ以上できないように斜め下を向いた。
「どうした?我が番いよ。」
「夜はまだ長いですので、お話などをしとうございます。」
メイリンがニッコリと笑う。
サーシャ曰く、身体は絶対に死守すべし。龍王が興奮するようであれば、話をするべし、と。
メイリンは龍王から離れ、お茶の準備をする。
「サーシャから習ったのか?」
「はい、今日はお茶の淹れ方など、龍王さまをおもてなしする方法をお教えいただきました。」
「番いのあしらい方もか?」
メイリンが手を止め、龍王の顔を見た。
「…はい。」
「気にするな。自分がおかしいのもわかっている。わかっているが止められぬのだ。今も番いと出会えたことに心が喜んで仕方ないのだ。」
龍王は時々苦しそうな顔をする。
生憎、人間のメイリンにはそういった龍の気持ちがわからない。
けれど、少しだけ龍王の素が見れてよかったように思う。
「私はただ、龍王様のことが知りたいです。これから長く一緒にいるためにも大切なことだと思います。」
ローヤンのことがあってすぐに頭を切り替えることはできないけれど、少しずつ龍王を知れば何かが変わる気もする。
「長く一緒にいるため、か。悪くないな。」
龍王は花がほころぶように優しく、ふと微笑む。
本能に支配された感情であっても、龍王のその笑顔はメイリンもいいと思った。




