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侍女に案内された部屋に入り、メイリンは窓から外を覗いた。

窓から龍王とカンレイが見える。

龍王はメイリンにすぐに気づいて手を振り、メイリンもそれに応えるように笑顔で手を振った。


「きちんとお仕事しているようですね。」


背後から声がし、驚いてメイリンはすぐに振り返った。

目の前にはメイリンと同じく黒尽くめの人が一人立っていた。


「初めまして。番い様の教育係りを務めさせていただく、サーシャと言います。」


サーシャは両手を合わせ、腰を折って挨拶する。

そんな丁寧な挨拶をされたのは初めてで、慌ててメイリンも見よう見まねで両手を合わせて挨拶をした。


「いけません、番い様。それは目上の者に対して下々の者がする挨拶になります。…しかし、聞いていた通りの方のようですね。必要な知識から先に勉強していきましょう。」


サーシャから席に着くように促され、メイリンはイスに座る。


「番い様は龍王殿下の唯一無二の存在になります。言わば、この国で龍王殿下に準ずる立場であることをご理解ください。そして、番い様の言動が龍王殿下の評価にも繋がりますので、よくお考えの上でご行動くださいませ。」


サーシャの美しい声と言葉使いが力を持ち、メイリンにプレッシャーをかける。

小学校にさえ行っていない自分にそれが務まるか、メイリンは不安になり下を向いた。


「番い様は選ばれたのです。逃げる事はまかりません。御覚悟ください。」

「…はい…」


なんとなくだが、分かっていた。

逃げられない、と。

メイリンの有無など関係ない。

その代償のように龍王やカンレイから許容されている部分があるのも知っていた。

全てはメイリンが逃げ出さないために。


「もし…私が番いになる事を拒否していたらどうなっていたのですか?」

「龍が龍族以外を番いに選ぶ事はほとんどありません。しかし、以前には心中や幽閉などはあったと記録に残っております。したがって、龍王殿下は運が良かったと言えるでしょう。そして、番い様は良い選択をなされた。」


サーシャの笑っていた目が急に鋭くなる。

メイリンは途端に息苦しさを感じた。

思い描いていた番いとしての理想像とは程遠いものだった。

そして、自分が生きるためには自分の「番い」としての仕事を全うするしかない。


龍王様を愛せたらこの窮屈さは無くなるのかしら?


思えば思うほど、愛とは遠く感じた。

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