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「羊!」
メイリンはそう言ってベッドから飛び起きた。
家の手伝いをしているためいつもはまだ薄暗い時間から起きていたのだが、今日は完璧に日が昇っている。
メイリンは寝坊したと思っていたが、途中、ここが家では無いことに気づいた。
隣には絶世の美人が寝ている。
そのことに驚いてしまったが、昨日あったことを少しずつ思い出しながら整理していく。
幼馴染のローヤンと結婚ができなくなって…それから龍王に連れ去られて番いだと言われ…ついでに結婚の許可も両親からもらってきた、と。
それが昨日一日だけで起こったことだ。
思い出した今でも目が回りそうになる。
最後に昨日の夜のことを思い出し、メイリンは顔が真っ赤になってしまった。
「まだダメだ。」
隣に寝ている龍王がメイリンの手を引っ張って布団の中に引きずり込む。
龍王は自分の腕の中にメイリンを閉じ込め、薄眼を開けてメイリンを確認すると満足そうに笑った。
「昨日のは…初めてだったので…私も許容してほしいです。」
「そうかぁ…初めてかぁ…そうかぁ…」
メイリンが強めに言うと龍王はボソボソ呟いて何かを反芻していた。
その顔は子どものような満点の笑みだ。
「もう少し…」
メイリンが注意しようとすると、言っているそばから龍王はまた唇を重ねた。
それはどんどん激しくなっていき、龍王の身体がメイリンに多いかぶさった。
「失礼します。」
返事を待たずに入ってきたカンレイがその場を見て固まっている。
「殿下、あれほど言っておいたはずですが?」
カンレイのジトッとした目が龍王を捉えている。
「カンレイが言ったのだ。成長が足りないと。私はその手助けの為に魔力を分けているのだが?」
カンレイと龍王が言い争いをしている間に、メイリンが布団の中に潜り込んで隠れてた。
見られたことは顔から火が出るほど恥ずかしいが、何とかしてカンレイには龍王を説得してほしいものである。
でなければ、メイリンの心も身体も持たない。
「…程々にですよ。」
カンレイのその言葉をメイリンは布団の中で聞き、絶望した。
人前でイチャついていても許されるとは、一体「龍王の番い」とはどういうものなのだろうか。
昨日龍王が説明してくれたことで少しは分かったが、やはり人間とは違う感性で戸惑ってしまう。
早急に話し合いをしなければと、メイリンは思った。




