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城に戻ってきた時には辺りはすっかり暗くなっていた。
龍王は人間の姿になると、メイリンを抱き抱えたまま当たり前のように歩き出す。
慣れない空の移動にまた脚がガクガクしているので、助かるといえば助かるが、恥ずかしい。
「…恥ずかしいのですが。」
赤子のような扱われようと、その美しい顔の近さにメイリンはどうしても照れてしまう。
しかも、この状態を沢山の人から見られるなんて恥ずかしいことこの上ない。
「すぐ慣れる。」
メイリンの意見は即座に龍王に蹴散らされてしまった。
「番い様の寝室ですが、後宮でよろしいでしょうか?」
カンレイは大人の対応で見ないフリをしながら、淡々と仕事をこなして行く。
それは嬉しいが少しばかりか助けてほしいと、メイリンは思う。
「いや、私と同じ部屋でいい。」
ジトッとした人を疑うような目でカンレイが龍王を見ている。
涼しげな目元と淡い水色の瞳が、より一層冷たくみえる。
「なんだその目は!」
「なんでもありません。」
言葉ではそう言うが、カンレイは表情を変えずに目で龍王に訴えかけている。
「湯浴みくらいなら一緒に…」
「なりません。」
今度はカンレイが龍王の意見を一蹴する。
確かに会って間もない異性と湯浴みを一緒にするなんて、メイリンは死んでも嫌だ。
「番い様は人間ですから、無理強いをすると心が離れていきますよ。」
「うっ。」
カンレイの言葉は龍王の心に刺さったらしく、大人しくなる。
「人間の生態についての辞典を置いておきますので、熟読しておいてくださいね。」
メイリンは心の中でカンレイを応援した。




