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「娘が龍王の番い…本当…ですか?」
父が龍王にたずねる。
「ああ、そうだ。」
事態を把握した父と母は顔面を蒼白にしている。
「メイリン、メイリンはそれでいいの?」
母がメイリンの頰に手を当てて心配そうに言う。
父も母も手放しでは喜んではくれない。
それは娘であるメイリンを愛してくれるからこそだと思う。
娘を愛しているからこそ、本当に幸せになれるのか心配しているのだ。
「誉れなことです。今も大変良くしていただいているし、きっと私は誰よりも幸せになれると思う。」
結婚する、龍王を生涯を共にする覚悟はまだ無い。
しかし、父と母には嘘をついて安心させる。
ただ自分にも思い聞かせているのかもしれないが。
「一年後、私の国で大々的に披露宴を行うが、その前に妻の故郷である地上でも式を挙げよう。費用はこちらで持つが、準備の程を頼む。」
後ろに控えていたカンレイが何やらズッシリと重そうな袋を父に渡す。
予想外の重さに父は慌てて袋を持ち直した。
恐る恐る確認すると金貨がびっしりと入っている。
「私たちどもには多過ぎます。」
さっきの無礼な態度だった父が一変して、腰が低くくなる。
龍の姿も現実離れしていたが、こんなお金などメイリンも父も母も見たことがない。
「ならば、とっておけ。あまり多くはできないが妻の里帰りも夫として許容せねばならないからな。その時のために使ってくれ。」
先ほど見せたメイリンへの執着とは違って、龍王は寛容な態度だ。
言い終わると龍王がチラリとメイリンの方を見た。
目が合い、意図が少しわかったが、メイリンは有り難く受け取ることにする。
今生の別れも覚悟してたメイリンはホッと胸を撫で下ろした。




