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「でも…」
メイリンは反論しようとしたが、龍王がメイリンの頰に両手を添えて真っ直ぐメイリンを見つめた。
「五千年かけてようやく見つけた。もう逃すものか。」
龍王の切ない顔がメイリンの心を鷲掴みにする。
この顔を見てしまえば、メイリンはもう龍王を放っておけない。
「…親御さんに挨拶してからですよ。」
カンレイの言葉がそれまでの雰囲気を切り裂き、龍王が気まずそうにカンレイを睨んだ。
「分かった今から行く。それで良いだろう。」
メイリンの答えを待たずに全てが進んでいる。
そんな状況に焦りもあるが、これといってどうしたらいいかわからないまま、メイリンは龍王に抱き寄せられ持ち上げられた。
「さあ、行こう。」
龍王ごと光に包まれ、気がつけばメイリンは龍の姿になった龍王の手のひらの中にいた。
「安心するがよい、我が番いよ。すぐに着く。」
心の準備が出来ないまま、メイリンはあっという間に住みなれた草原の小さな家にたどり着いた。
龍王の手のひらの中は防御壁が張られていて何の不便もなかったが、メイリン心が修羅場だった。
「立てるか?」
メイリンを抱き抱え、人間の姿に戻った龍王がたずねる。
「頑張ります。」
龍王に優しく降ろされメイリンは地面につけたが、案の定膝から崩れ落ちそうになる。
龍王がそれを即座に支えた。
作り物の様に美しい龍王の顔がメイリンの顔のすぐそばにあり、メイリンはギョッとする。
私がこの人と番いになる…の?
とても美しく、尊い方。
求められているそれでいいじゃないか。どうせ誰からも求められる人間ではない。
ローヤンとの結婚が無くなってしまった今、断る理由が何一つない。
むしろ、ローヤンと結婚できなけれ結婚さえ怪しいメイリンをいいと言ってくれる。
恐れ多いが幸せなことである。
それに、お見合い結婚したとしても同じように結婚してからお互いを知る、それと同じことではないだろうか。
メイリンは覚悟を決めて、家の扉に手を掛けた。




