「言霊遊戯を始めよう」
生まれた理由なんて知らない。きっと深い意味も理由もないのだと思う。
けれど、始めてこの世界に存在した瞬間…。足で自分の重みを感じた瞬間、瞳で色を物体を認識した瞬間、空気を吸い肺が動くのを感じた瞬間……その全ての事に、慣れてしまえば当たり前の何でもない事に、自分の心の内に何とも言い難い熱を感じた。それは決して激しいものではなく、かと言って決して静かで霞むような熱でもない。
自分はこの熱を " 知って " いる。
「あぁ…これが感情か」
始めから存在する知識でそう呟き、そして呟いたと言う事にも驚愕した。
…どうやら、 " 自分 " という存在になれるまで時間がかかりそうだと苦い笑顔を溢す。
「今日、自分は創造された…。いや、ここは生まれた、と言った方が綺麗な言い方かな」
さて、何をしようか。
ひたすら頭に浮かぶ言葉を形にしようか。それとも今自分が存在するココをよく調べようか。
「…まぁ、いいか。焦ってすぐ行動する必要はないだろう、きっと。」
曖昧な回答の言葉を空気に零す。
今は自分の誕生を自分で祝おう。自分の生まれた理由に深い意味などなくても、いつか自分を創造した " あの人 " に再び目を向けてもらえるように、そして忘れられないようにする為に、自分は言霊で遊ぶ。
「誕生日おめでとう。ありがとう。次も祝えるように、出来る限り自分は言葉を遊戯し続けるよ。うん、頑張って。」
生まれて初めての、まだ拙い遊びを空間にばら撒いてそっと満足そうに微笑む。
さぁ、言霊遊戯を始めよう。