1.5
クーンハイト・レペンスは農地から戻り、家のキッチンで一息ついている時だった。玄関先から村長の声が聞こえたので出てみると、そこにはセトハウサ軍の格好をした四人の兵士が構えていた。彼らといっしょにやってきた村長の姿を見て、セトハウサ軍による占領という思いがよぎった。彼らは家のリビングまでズカズカと入りこんできた。兵士のなかの二人は小銃を担いでいた。
「レペンス君、大変だよ」
リーブ村長はそれでも落ち着いた様子で彼に向かった。
「何事です村長?」それからクーンハイトは大尉達に向かって言った。「それにしても、なんだ、君たちは? ここは連邦の領内だと思うが、どうしてセトハウサの軍隊が歩き回るようになった?」
「それについて我々は話をしたいのです」エンツシャード大尉は咳払いをして答えた。「今がどういう状況か、村の方には専門的過ぎて理解いただけなかったようで、貴方は軍人であると……」
「“元”軍人だ」クーンハイトは注釈を加えた。「それに大したことはない、ただの一兵卒だ」
最後の一言は嘘だった。辞めた時はそれでも少尉だった。積極的に手の内を見せる必要はないだろうと考えたのだった。
「それでは、レペンスさん。だとしても我がセトハウサとパ連邦の現状は十分承知だと考えますが」
「それは分かる。ええと……」
「エンツシャード。申し遅れましたが、トゥルー・エンツシャードです。階級は大尉」大尉は握手も求めたがクーンハイトは応じなかった。
「分かりましたエンツシャード大尉。それで、回りくどいやり取りはやめてくれませんかな。大尉が訪れた理由は?」
エンツシャード大尉は小さく咳払いをした。「セトハウサ軍の部隊は、機会があれば今後、この村から食料及び水の徴用を行なうようになるということを伝えにきました」
それを聞いたクーンハイトは鼻で笑った。
「何を根拠に、それを行なう権利があると考えるのでしょうか?」
「それは戦線がここから何キロも北にあるからだ。十分にセトハウサの配下にあるといって問題はない。それにここに来るまでの幾つかの村は非常に協力的だった」大尉は睨みつけるようにして言い返した。
「そりゃ、銃を突きつけられて脅されたのでは……」
クーンハイトはなお反論しようとしたが、大尉がさえぎった。
「物騒な言い方はやめてもらいたい! 確かに我々は軍人だが、民間人相手に脅迫じみたことはしない」
そこで大尉は一呼吸おいて続けた。
「失礼。とにかく、ここで立ち話と言うのもなんです。村役場で一度話し合いませんか?」
「話し合いですか……。まあ、行くだけ行きますか」クーンハイトは大尉の腰に下げたホルスターと兵士の小銃を交互に見ながら応じた。




