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逆2乗法則の力を持つ女  作者: 菅原やくも


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7.5

 すっかり日も暮れた時刻、二機の航空機は経由地である大陸中部の都市クステグ上空へと差し掛かった。そして郊外にある空軍基地の滑走路へ降り立った。そして終盤は中尉はしきりに計器へ目をやっては、何かを気にしている様子だった。

「どうした?」それ気づいたウルバノ大尉は尋ねた。

「いや、ちょっとね。油圧が……」

 着陸後、機体はそのままタキシングを続け、照明が煌々とともっている格納庫の一つへゆっくりと向かった。そしてステニスの操縦する随伴の輸送機ともども格納庫の所定位置へと着いた。それからエンジンが止まり、あたりが静かになるとと誰もがほっとした思いであった。しかし、中尉だけは真っ先に外へ出ると機体の各部の確認を始めた。

「あ、やっぱりな」中尉は庫内の照明に照らされた機体の左翼エンジンをみつめていた。

 彼の視線の先、エンジンカウルにはオイルが漏れているのであろう流れ出た染みができていた。

「いやはや、オイル漏れか?」後から近づいたウルバノ大尉もそれを見るなり口を開いた。「まさか、あの攻撃をされたときのせいじゃあるまい」

「いや、違うよ。被弾はしてないから。もしかすると長距離飛行の上に、急降下はやりすぎだったかも。修理で対処できそうな感じはするけどね」

「まあ、撃墜されることを思えばマシな話だな……」

「トラブルですか?」マルティグラとレペンスもエンジンを眺める二人に近づいてきた。

「ああ、機体トラブルだ」大尉は素早くマルティグラの問いかけに答えた。

「それでは、しばらく足止めですね」

「まったく、今回は待ち時間の多い任務だことだ」それから大尉は何か考えこんだ様子だった。「そうだな、ちょっとばかし考えが浮かんだ」

「どんなことです」マルティグラが訊いた。

「まあ、どうせ今夜はここで一晩過ごすことにはなる。詳細は明日になってからだな」

「ただ、飛行機はもう勘弁してもらいところだ」レペンスが言った。「あれは死ぬかと思った」


 幸いも宿舎の空きがあったので、皆基地内で一晩過ごすこととなった。

 その夜中、宿舎の個室でマルティグラが寝ようかと思ったそのとき、部屋のドアをノックしてウルバノ大尉が入ってきた。

「今いいか?」

「ええ、ちょうど寝ようかと思っていたとこですけど」

「そいつは失礼。ちょいと連絡事項をとね。それに首都本部にも連絡を取ってみた」

「こんな夜中では、どうでした?」

「まったく、局長は相変わらず宵っ張りが強いね」大尉は軽く笑ってから続けた。「博士と伍長は無事に到着してるとのことだ。なかなか時間が取れないようでじっくり話は出来てないみたいだがな」

「ですが朗報ですね」

「あとは俺達だ。まあ、そのあいだ博士には首都観光でもしてもらうことになるな」

 それから大尉は部屋を後にしようとした。

「おっと、そうだ」ドアを閉めようとした直前、大尉は思い出したように言った。「肝心なことを言い忘れるとことだった。明日の午前中、俺は野暮用で街に出るからな。中尉にもよろしく言っといてくれ。昼までには戻る」それだけ言うと大尉は部屋を出て行った。

「やれやれ、フィエル君はいったい何を考えているのでしょうかね」マルティグラはぼやくようにつぶやいた。が、いずれにせよ大尉のことはいつものことだと思い、寝床についた。


 翌朝、マルティグラはレグロ中尉の姿を探して昨晩の格納庫へ向かった。中尉は技師たちと何か話をしている様子だった。。中尉はやや疲れのみえる表情だったが、技師たちの方はそれにも増して疲れているように見えた。マルティグラは彼らの会話が終わるのを待ってから近づいた。

「機体の方はどうです?」中尉の横から声をかけた。

「ああ、それがいろいろと問題が見つかったみたいで。技師達が夜通しの作業でエンジンの点検と修繕をしたんだけど、主翼にねじれがあるのを見つけたんだ。きっと急降下のせいかもしれないね。それで、飛べなくはないけど首都の本社工場じゃなくて、このまま近場にある工場へ持っていくことになったんだ」

「それでは首都に向かうのに、別の飛行機を手配しないといけなくなりそうですね」

 だが、それを聞いた中尉は困った様子だった。

「さすがになぁ。この基地じゃ、それは僕の権限じゃ難しいかも」中尉はそれからあたりを見渡した。「そういえばフィエル君は? 昨日は夜遅くまでここで見かけたけど……今朝はまだ寝てるのかい?」

「彼は午前中、街へ出かけるそうです。レペンス君は部屋で休んでいます」

 中尉はそれを聞いて一瞬不思議そうな顔をしたがすぐにいつもの表情へ戻った。

「じゃあ、しばらくは小休止だね。とりあえず飛行機に関してはいくつか部署をあたってみるよ」

「そこはお任せしますよ、中尉」

 それからマルティグラは宿舎の方へ、中尉は基地の建物の方へおのおの向かって行った。

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