5.2
シスタルービの中心部にある議事堂を思わせるような白い建物、シスタルービ中央駅は利用客でごった返してたいた。しかしいつも以上に混雑していた、正面入り口にはボズロジデニア共和国軍の装甲車や戦車が止めてあり、兵士が銃を担いで歩き回っていた。周囲は物々しい雰囲気につつまれていた。
「いったい、何事だこれは」
レペンスは訝しげな顔で見渡した。
「おそらく外交問題が大ごとになってきたのかもしれません」
マルティグラは共和国と連邦との外交上の問題の懸念を局長から聞いていた。もちろん危惧すべき事態についても頭に入れてはいたが、ここまで進行が速いとは思ってもみなかったのだ。シスタルービ中央駅は地理的にはボズロジデニア共和国側に位置している。もし軍が強硬手段に出るなら鉄道の駅を抑える可能性は十分にあったのだ。
駅の窓口では詰め寄った兵士たちと駅員たちの間でやり取りが交わされていた。
「今日の午後から連邦方面行きの列車はすべて運休にしろ」
「いったい何の権限があってそんな」
「共和国政府が決定した。これは命令だ」
「ここは連邦政府鉄道省の管轄となっている。そんな指示こちらでは聞いていない。たとえ共和国軍が何と言おうとも列車は運行させる」
「よく聞け! ここは共和国の領内だ。ただの鉄道員に権限などない! こちらの命令に従え」兵士は拳銃を取り出して職員に突き付けた。「さっさと窓口を閉鎖しろ! さもないとお前の脳天を吹き飛ばす」
お互いににらみ合っったが、職員の方が折れた。
「わかった。ただし、乗客にそんな態度取ったら承知せんからな」職員は渋々といったようすで引き下がった。
様子を遠巻きにうかがっていたマルティグラは、状況が落ち着いたとみると素知らぬ顔で兵士に近づいて尋ねた。
「ちょっとお伺いしたいのですが……」
「なんだお前は」
「ええ、列車に乗りたいのですが、すべて運休になるのですか?」
「違う! パ連邦の方面に向かうやつだけだ」
「じゃあ共和国に向かうのは大丈夫なんですね」
「ああそうだ。分ったらとっとあっちに行け。邪魔だ」
マルティグラは二つ返事で兵士たちから離れると、再びレペンスの待つところへ戻った。
「いったい全体、何が起きているのだ?」
「全貌はわかりません。ですが、連邦方面行きの列車は運休するみたいです」
「私たちが向かおうとしてる方面の列車が? 待ちぼうけを食わされるわけか」
「大丈夫です。考えがありますので。第二プランへ変更することにしましょう」
「なんだそれは」
「とにかく共和国の首都へ向かう列車に乗りましょう」




