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トロンボーン

 トロンボーンは、知ってます、よね?

 そうそう、あの、みよーんとどこまでも伸びてしまうのでは、という管がスライドする楽器です。


 公私共にトロンボーンは常にトランペットとセットにしてしまうのですが、これにはちゃんと理由があって。


 公としては、トランペットを金管としてを支えるパートであると共に、ラッパの語源となるtrombaトランペットに大(-one)を付けて大ラッパ=tromboneトロンボーンと付けたとされていて、トランペットとは昔から近しい存在です。


 そして私としては、例の性格でも近い。

 男子ラッパとトロンボーンはよくつるんでいるので、二つ合わせてラッパ隊と呼んでいます。

 どうしようもない人々と屈託無くつるめる。これだけでもう、お判りですね?



 ちなみに管楽器で唯一スライド出来る楽器なので、他楽器からちょっと面白そうだな、と思われています。

 ういぃぃぃん てスライド出来るの、羨ましい。と思っているのは私だけではないはず。

(特にガーシュウィンのラプソディ・イン・ブルーのソロクラリネットは喉から手が出る程スライド出来たらと思った筈だ!)



 吹奏楽ではトランペットに次ぐ花形で、何よりもザッとスライドが動くとそれだけで目を奪われてしまう、カッコいいぜ、ちくしょ! 中身はアレなのに!と思うのですが、片やオーケストラでは。


 ちーんと座っていてですね。

 じっと座っていてですね。

 1.2.3楽章タチェット(お休み)で4楽章だけ徐ろに大音量からコラールを吹かされる、という。

 ブラームスの交響曲第1番、第4番等がその様な使われ方をしてます。


 本番中、待ってるのつらいんだよねー。

 練習はスコア見て時間潰してるからいいんだけどさ。


 そんな感じでひたすら待っています。


 私は前出のファゴットで吠えました。

 楽譜がある限りそれは作曲家の意志で、必ず必要だから書いているのだ、と。


 ブラームスは一緒に吹いていても、第4楽章の冒頭など、太くてカッコいい低音が後ろから響いて来てゾクゾクするので、間違いなくボーンの音が欲しくて書いたとは思います。


 だがしかし……


 トロンボーンのオケのパート譜を見ていると、逆にかわいそじゃね? ここ、もうタチェットにして小節数えるのやめさせてあげた方が楽なんじゃね? と思ってしまいます。


 そしてボーンの性格からしても、俺たち要らないんじゃないかと悩む性格でもないし。


 逆に楽出来るんだったら楽してーよ、俺らそれで別にいーし。


 という、なんつーか、そんな楽器です。


 冗談はさておき、何故そんなに使われ方が限定的なのでしょうか。私は知りたくなって調べてみました。


 実は歴史的には古い楽器で、教会音楽で、聖歌隊の伴奏で使われていたんですね。

 音域も中低音で人の声に近く、合唱を支えるのに適していたのです。


 教会です、宗教的です。お葬式です。

 つまり、ミサ曲やレクイエムに使われていた。死を連想させますね。

 それ故に、トロンボーンの音は教会で聴くもの、神と共にあるというイメージが定着し、作曲家達の中でそのイメージが根強く残っていた様です。


 モーツァルトは41番まである交響曲の中で一度もトロンボーンを使っていません。

 あのベートーヴェンでさえも、神や自然の大きな力を連想する場面でしかトロンボーンは使わなかった。


 そんな歴史的背景を背に、ボーン達は考えます。


 あーーー暇……練習時間の大半、楽器吹いてないんですけど。尻痛ぇ。


 余りに待たされて退屈で、でも練習中漫画読んでたら怒られるし(当たり前だ!)しょーがねーからスコアでも読むか。


 そんな感じで読むともなしにスコアを常に読んでいるので、この楽器の人は指揮者に転身する人が多いです。


 斜に構えて読んでいるので、現指揮者の指示よりこうした方がいいんじゃねーの?

 こっちの方が絶対カッコいいって。

 と思ってフツフツと考えて、ある時、

 俺! 指揮者になるわ! 修行してくるわ!

 じゃな!

 とパッと消えてしまう。

 そして何年かしたらどこそこで副指揮者やってるらしいよ〜、と噂が流れます。

 ラッパ隊としては応援しつつも複雑で、

 戻ってきて欲しいような欲しくないような。


 だってあいつが指揮者だろ?

 あいつの指揮で演奏ってさ、なんかこう…むず痒くね?


 馬鹿話ばっかりしてたヤツが上司とまではいかないが、隊長として戻ってくる。

 複雑でしょうね。


 ま、結局は本番後にはまた呑みに行って指揮者も奏者も関係なくへべれけになり出世して帰ってきた同僚をヘッドロックかましてお祝いするのですけどね。



 そんなこの楽器に選ばれた人は、


 ごめんなさい、女子に出会ってなくて、今から言うことは男子ボーンです。


 もとい、そんなこの楽器に選ばれた男子は、


 ちょっと斜に構えてて、褒められると、

  は? 何言ってんの、馬鹿じゃね?

 と嘯いてる照れ屋さん。

 そしてスコアを読み込んでいて、ここはこうした方が良いと思ってはいるけれど、自分からは言わない。

 フツフツフツフツ溜め込んで、ある時爆発するでもなくスルッと転身出来る人。

 そして、何故か女性にモテる!!

 イケメンという訳ではないのです。

 そこがサックスとは違う。イケメンではないのに、彼女切らさない。

 去る者追わず、来るもの拒まず。

 飄々と渡っていきます。


 なんだよ、結局カッコいいじゃねーか。

 ずりぃ!

 とラッパに言われちゃう人達ですね。



 アデュー

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