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異世界にゲスト神として召喚されたらしいんだが……  作者: 謎村ノン


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.11.終局~そして始まり

 『火の人』が『高時空』へと退いた後、オーネ世界は、ようやく均衡を取り戻した。

 しかし、デフィネ山の周囲には、戦いの痕跡が残っていた。

 岩壁は崩れ、地面は焼け焦げ、そして、倒れた機械兵たちの残骸がいたるところに転がっていた。残念ながら、何柱か、亡くなった『神族』と妖精族もいた。

 『石の人』は、あの後、沈黙し、ディフィネ山のすぐ横に、切り立った山となって残った。そうディフィネ山は、二つの山が連なるような姿になっていた。

 残った『神族』と妖精族たちは、半ば崩れた『大宮殿』の広間に集まった。

 イアヌーが、皆の前で告げる。

「……この度の戦いで、大事な身内を失った者もいる。〈オーネ〉の秩序連鎖を再編しなければならないが、世界の構造そのものに影響を与えることは、しばらく、控えたいと思う」

 神々から、「そうだ」「少し休もう」などと声が上がった。

「……『空の人』と『石の人』の覚醒によって、〈オーネ〉の時空泡は、今のところ安定しているようだ。とりあえず、皆、復興に尽力してほしい」

 神々は、その言葉に頷いていた。

 やがて、『神族』や妖精族たちは、それぞれの領域へと戻っていった。


 結局、〈ブズゥーク〉を譲り受けることになり――僕とウィエンも、他の神々と同じように、飛んだり、瞬間移動したりすることもできるようになっていたのだが――新『大宮殿』の工事担当となったジードにお礼を言って、格納庫――の残骸の部屋に向かったところで、空から降りてきた大きな黒い鳥が、僕の肩にとまった。

「『主』ユウ様。お久しぶりでやんす」

「カンタロウ? え? 今まで、どこいってたんだよ!」

 ……最初に『ルグ』を使ったときに、創りだした烏のカンタロウだった。

「それが、深い深~い森を偵察していたところで、妙なことになりやんして。それはそれは、話せば長くなる話なんでやんすがね……」

「〈入らずの森〉に行っていたの? ルーファに行くなって、言われていたじゃないか!」

 ちらりと横をみると、カンタロウがしゃべったことに、ウィエンが目を見張っていた。

「あ、カンタロウ、紹介するよ。こちらは……」

「存じておりやんす。ウィエン神様、あっしは、しながない烏のカンタロウでやんす。以後、お見知りおきくだせぇ」

 カンタロウは、そういって、片方の翼を曲げて、器用にお辞儀した。

 それを見たウィエンは、更に驚いたようで、目を輝かせた。

「へえぇ~。カンタロウ、さん。よろしくね! ウィエンです」

 ウィエンも、微笑んで、ちょこんとお辞儀した。

 彼女は、そのまま僕の方に向き直って、小首を傾げた。

「ユウ、あのね、人間の村に行く前に、『塔』に寄ってほしいの」

「あ、あの記念碑のところだね。分かった」

 ウィエンは、少し微笑んで、頷いた。僕も、微笑み返す。

 彼女は、『空の人』の〈核〉の記憶を思いだしたということだから――何か、思うところがあるのだろう、と思った。

「……ほんとに、仲睦まじくなったんでやんすね。〈神話〉の通りでやんす……」

「え?」

 〈ブズゥーク〉のドアを開けながら問い返そうとしたところで、カンタロウが、ぐっと僕の肩を脚で掴んだ。

「『主』ユウ様。あっし、この乗り物が怖いんでやんす。あっし、『塔』まで、直接、飛んで行くでやんすね!」

 ……カンタロウは、僕の肩から羽ばたいて、あっという間に、空を飛んでいってしまった。

「はあ~。ちょっと、お話し、聞きたかったのになあ?」

 ウィエンが、あきれた様子で空を眺めた。

「うーん、江戸っ子……」

 カンタロウが、以前、なんで飛んで行ってしまったのか、初めて分かった。


***


 『アドヴィーエの花園』に着いて、ウィエンと〈ブズゥーク〉から降りた。

 ここは戦いに巻き込まれていなかったようで、一面、花々が散らずに咲いていた。

 僕達は、無言で、塔の近くまで歩いた。

 塔の表面は、まるで氷のように滑らかで、陽光を反射しつつ佇んでいた。

 ……ウィエンに何と声をかけるべきだろうかと思案していると――突然、その白い尖塔が、まばゆいばかりの光を放ち始めた。

「え?」

 すると、二重写しの映像のように、塔の奥から通り抜けるようにして、ひとりの女性が現れた。

 彼女は、白銀の衣をまとい、少し赤みがかかったブロンドのセミロングヘアを風に揺らしていた。瞳は、深い青色で、優しげな光を宿していた。

 彼女は、僕達二人に向かって、微笑んだ。

「ボクは、ヒカル。〈オーネ〉を創造した者、です」

 その声は、空間に直接、響いた。

 まるで、世界そのものが、彼女の言葉を伝えているかのようだった。

「え、創造神、様、なのですか?」

 ヒカルと名乗った存在は、頷いた。

「ボクは、はるか昔――ユウの世界の可能性、未来の一つかもしれないですが――精神寄生体である〈アヴァガー〉によって、滅ぼされた文明の末裔です。ボクは、人類が最後に作り上げた英智――高次空間に跨がる計算資源の管理者の一人でした――」

 ……とんでもない話に、思わず沈黙する。

「――ボクの世界の人類が滅んだ後、私の意識は、長い時間、高次空間を彷徨いました。やがて、残存する量子ビット群を再構成することを学び、局所的に時間軸を歪める波動関数を生成して、時空的構造へ働きかけ、この時空の泡〈オーネ〉を創造したんだ――」

 ……ヒカルが何を言っているのかは、あまり分からなかったが、彼女は、超越的なコンピューターの人工知性のようなものなのだろうか、と思った。

「ボクは、かつて、この〈オーネ〉の物理法則と存在確率を維持するために、四体のサブシステム人工知性を創りました。『火の人』『土の人』『石の人』『空の人』です」

 僕は、息を呑んだ。

「しかし、彼らは明確な意思を持ち、やがて暴走したんだ。ボクは、彼らを制御するために、この高次空間と接続された尖塔に自らを閉じ込めつつ、世界の再起動を試みていたのです」

「『働きの人』……?」

 ……ヒカルは、あの半透明の煙の大男とは、似ても似つかなかったが、ウィエンは、確かに、そう呼んだ。

 すると、ヒカルは、頷いた。

「うん、ウィエン。あなたのことは、〈プローブ〉として創造した『働きの人』を通して、ずっと見ていたよ。まあ、あまり情報は持たせられなかったから、最低限の受け答えしかできなかったんだけどさ」

 ……確かに、このとりとめのない話し方が、あの『働きの人』に似ていると思った。

「ようやく……『石の人』が目覚めたね。これで、世界のシステム基盤が、再び、稼働し始めた」

 ヒカルは、僕の方を見た。

「ユウ。君は、この世界に偶然、来たのではないよ。君の魂の量子には、『石の人』のかけらが宿っている。〈オーネ〉の危機に、『空の人』の〈核〉に、引き寄せられたのかもしれない」

「そうだったんですか……」

 ウィエンに対して、これまで感じたことのないような愛しさを覚えたのは、運命的なものだったのかもしれない、と思った。

「ボクも、私の大切な人を探す旅に出るよ。彼もまた、泡の彼方にいるはずだから……」

 ヒカルは、どこか遠くを見るような様子で呟き、そして僕の方を見た。

「その旅の途中で、君の世界――地球の座標を探す手伝いをしよう。君が望むなら、すぐにでも」

 僕は、驚いて彼女を見つめた。

「本当に……僕の世界に戻れるんですか?」

 ヒカルは、微笑んだ。

「可能性は、あるよ。でも、今はまだ、時空の泡が不安定かな。それに、高次空間を移動するためには、君が、完全に『ルグ』を使いこなし、『神族』として覚醒する必要があるね」

 ……僕は、少し考えた。

 地球、僕がいた世界。家族、友人、学校、日常。

 戻りたい気持ちは、確かにある。

 でも――。

「……すみません。僕は、もう少し、この〈オーネ〉に、いたいです」

 ヒカルは、静かに頷いた。

「そう。君の選択を尊重するよ。君がこの世界にいることで、まだ何かが動き出すかもしれないからね。ボクも、旅を続ける。もし、偶然、君の世界の座標が見つかったら、知らせるよ。また、会おう!」

 彼女は、微笑んだ。

 その笑顔は、どこか寂しげで、けれど確かな希望を抱いているように見えた。

 ヒカルは、空へと舞い上がって、消えていった。

 白い尖塔の輝きも薄れ、静かに沈黙した。


***


 気がついたら、ウィエンが側からいなくなっていた。

「ウィエン?」

 問いかけたものの、どこにいるのかは、すぐ見当がついた。

 僕は、『ルグ』を使って、人間の村に、瞬間移動した。


 ……僕がウィエンと一緒に人間の村を訪れてから、数日が経っていた。

 この世界――オーネ――に来てから、まだそれほど時間が経っていないはずなのに、まるで何ヶ月も過ごしたような気がしていた。

 空気の匂い、風の感触、そして何よりも、ここで出会った皆々の温かさが、僕の中に少しずつ根を張っていた。


 人間の村の側にある丘の上で、ウィエンが笛を吹いていた。

 風に乗って、優しい旋律が広がっていた。

 僕は、ゆっくりと丘を登った。

 ウィエンは、僕に気づくと、笛を止めて微笑んだ。

「ヒカル、行ったの?」

「うん。彼女は、旅に出るって。僕の世界も、わざわざ探してくれるって言ったけど……断った」

 ウィエンは、少し驚いたように、目を見開いた。

「……ユウ、帰りたくないの?」

 僕は、空を見上げた。

「帰りたい気持ちは、ある。けれど。でも、今はまだ……ここにいたい。君と、一緒に」

 ウィエンは、静かに頷いた。

「わたしも、ユウと一緒にいたい」

 青く澄んだ空に、白い雲が流れていた。

「ウィエン。僕は、君と出会えてよかった」

「わたしも、ユウに会えてよかった」

 僕は、彼女の手を握った。

「これからも、一緒にいよう」

 ウィエンは、頷いた。

「うん。ずっと、ね」

 風が、優しく吹いた。

 そして、僕たちは、手を繋いだまま、静かに丘の上に座った。

 空には、白い雲が流れていた。

 丘から見おろすと、洞窟に避難していた人々が、人間の村に戻ってきていた。

 ……世界は、再び動き始めていた。


挿絵(By みてみん)

エタってたのを11年ぶりに書き始めて、ようやく完結しました!(パチパチパチ) あとは、SSを一つ投稿して終わりです。できましたら、ブックマーク、高評価などして頂けると、ありがたいです!

※ウィエンの画像を追加しました。どうしても人間耳を消せなかった……(11/20/2025)

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