表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界にゲスト神として召喚されたらしいんだが……  作者: 謎村ノン


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/34

.4.ジードの従姉妹(3)

「で、さ。実は、そのう。これなんだけど……」

 彼は、うわずった声で言うと、ほんのりとピンク色をした紙のようなものを僕に渡した。

 紙のように見えるけど、プラスチックのような光沢のあるカードだった。二つ折りになっていて、小さい木の細工をクリップのように挟んでいた。

「はい?」

「これをね。彼女、エクに渡してほしいんだ」

「え?」

「エクは、僕の従姉妹でね。小さい頃はよく、他の従兄弟たちと一緒に遊んだのだけど、ね。最近、その、ちょっと疎遠になってしまっていてさ。いや、別に、喧嘩をしたとかそんなのじゃないんだけど。とにかく。僕の気持ちを伝えようと思って、この手紙を書いたんだ。ウン」

 ジードは、いきなり早口で、そこまで一気に言った。

 その勢いに驚いて彼の顔を見ると、頬がほんのり赤くなっていた。

「はあ……」

 なんか、日本の古典に似たようなシチュエーションがなかったっけ、などと僕は当惑した。

 いや、その前に――僕はジードの様子に、少々、懸念を抱いた。

「ちょっと、文面を見せていただいて、いいですか?」

 ジードは一瞬、躊躇したが、こくりと肯いた。

 木の細工を外して、開けてみる。

 すると、アルファベットを崩したような文字で、何かが書いてあった。

 じっと目をこらすと、話し言葉を理解できるのと同じように、文字の意味がアタマに飛び込んできた。

 ちょっと目眩に似た感覚を覚えた後で、まるで、文字の上に被せられたヴェールが取れたような感じで、意味が分かったのだ。新鮮な感覚だった。

 まず、理解できる文章として目についたのは、こんな内容だった。

〈愛しいエク様、わたしはあなたのことを想って、毎日眠れない日々を送っております〉

 その後、延々と、好きだとか愛するとかいう言葉が書き連ねてあった。

「うーむ」

 僕は、思わず唸った。

 ――こいつは、いわゆる思春期の男の子が経験する『恥ずかしい手紙』の一種だな、と思った。

 詳しいシチュエーションは分からなかったけど、こういった手紙が効果を示すかどうかは、相手の性格と、二人の関係性に左右されるような気がする。

 正直、かなりハイリスクだなあ、と感じた。

 実は、僕も、以前に同じようなメールを書いて、すかっと振られたことがあったのだ。

 なんか、その女の子も美人だったなあ、と記憶が蘇る。

「だめなのかな?」

 ジードが真剣な顔で、僕の方を見つめていた。

 僕は、現実に引き戻された。頭を、左右に振る。

「えーと、ですね。彼女と、どれぐらい頻繁に会っているんですか?」

「うん。ここ四、五か月ぐらいは話していない、かな。朝、散歩に出かける時にこうやって、こっそり見ることはあるけど」

 明るくて快活なジードの、意外な一面を見たような気がした。思い詰めて、ストーカーになる一歩手前、といったところだろうか。

「……彼女は、それを知っているんですか?」

「い、いや。気づかれてないはずだけど、さ」

「ふーむ」

 僕は、腕を組み、少し考えた。ジードは、傍らで息を飲んで見守っている。

「そうですね。いきなり、この手紙を出したら、彼女、びっくりしますよ」

 つとめて、もっともらしく聞こえるように話す。

「とりあえず、手紙はやめにして、彼女と普通に話をした方が、いいんじゃないかな?」

 ジードのマネをして、にこっと笑ってみせる。

「せっかく今、彼女がいるんですから、ね。そうだ、僕を彼女に紹介して下さいよ。おーい!」

 僕は、振り返ると、花園にいる女の子に向かって、大きな身振りで手を振って、叫んでいた。自分でも、大胆な行動に驚いていたけど、ジードを放っておけない気がして、つい行動していたのだ。

 ジードは、パニックを起こしたのか、あたふた手足を動かしながら、僕を止めようとした。

 しかし、女の子――エクの方が、僕達に気付いたようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ