七 愛(一)
姫はいきなりこっちに倒れてきて、こう言った。
「今度から私を呼ぶときはエリスでかまいませんが、あなたの名前は?」
今はエリスが俺のほうに倒れてきている為、もちろんやわらかいなにかがあたっている。
「扇 勇だ。」
「勇様、なんで私はすぐにでもここから出れるのに、残っていたと思いますか?」
もう完全に泣き声のようだ。
「帰る場所がなかったからか?」
すると、乙女チックな答えが返ってきたのだ。
「私はずっと王子様が助けに来てくれると信じていましたからです。」
「へー」
俺は棒読み風に言う。変な事考えてるなぁ~。
「でも、来た王子様は既にアイレ様にとられていた・・・。」
「おいっ、俺とアイレはたまたまだ!」
説得を試みた。でも無理だった。
「お互いに下の名で呼び合うなんて・・・・ひどい・・勇様・・・・。」
もうだめだ。話が噛み合っていない。アイレはまだ俺の名を呼んでないから「お互い」じゃないし。こいつは完全に暴走している。暴走を止める方法は一つ!!
「えっ・・・・・。」
アイレは顔を真っ赤にし、呆然としていた。
そう。俺は今、キスをしたのだ。
唇はとても柔らかかったが、味は覚えていない。(その方がいい。)
効果があったようで、エリスは落ち着きを取り戻した。
「さっきはごめんなさい。今のはありがとうございました。私はテレポートという能力を一生に一度だけ使えるんです。
これは我々の先祖が代々受け継いできたものなんです。これであ勇様の望んだところに一瞬でワープできます。それで勇様にお願いがしたいのです。」
「なんだ?」
「さっき、勇様が申した通り、私の帰る所がありません。なので私を勇様の家に置いてください!!」
「え?」
俺の頭は一瞬、空白になった。
「お願いします!!なんでもします!!」
「・・・・・・・。分かった。」
俺はこれしか返事がないと思った。
「ありがとうございます!!勇さまぁぁぁーー!!」
エリスがさらに抱きつく。さらにぎゅっとやわらかいものがあたる。
「じゃあ、いきますよ!!ワープ!!」
「おお」
ここは・・・・・・・俺の部屋だ。生きて帰ってこれたのか。
「ここが勇様のお部屋・・・・・。勇様、もう十時のようですがどうします?」
エリスはささやくように言った。
「俺はもう寝る。」
俺がベッドに入るとエリスも入ってきた。
「スペース邪魔しちゃってゴメンナサイ。」
今、エリスの謝り方に「萌え」を覚えた。
「仕方がない。寝るぞ」
今日はいろいろあったが忘れよう。明日は休日だ。ゆっくり休むか。
俺の意識は消えた・・・・・・・。
(主人公がエリス・シルペリアの場合)
私は起きた。しかしまだ隣で勇様が寝ている。
勇様のカワイイ寝顔を見ると、イタズラしたくなるけど、夫婦生活(?)になるまではやめておこう。
私は勇様の手伝いがしたくて早く起きたのだった。
しかし、エプロンがないみたい。
なので、私は勇様の部屋のクローゼットを見てみた。
本当にすごい。もう制服だけで何着あるんだかわからないし。
こっ、これは!!
「このエプロンなら勇様気に入ってくれるかなぁ?」