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~ 終ノ刻   結末 ~

 気がつくと、雨の降る音が聞こえていた。


 薄暗い防空壕の中で、犬崎紅は自分の置かれた状況を少しずつ整理していた。壕の中に光はなかったが、赫の一族の特性として、光のない闇のなかでも紅の目はよく見えた。


 今、自分は壕の中に置かれた椅子に四肢を拘束されている。縄目はきつく、寸分の遊びも許さないほどに、手首と足首に食い込んでいる。


 いったい、朱音の身に何が起きたのだろう。あれは、本当に自分の知る朱音だったのか。疑問は次から次へと浮かんできたが、明確な答えを出せそうにはなかった。


 外の雨音に混じり、何かが草をかきわけて、こちらに近づいて来る音が聞こえた。邪魔者を排除しに行くと言って朱音が出かけてから、かれこれ一時間程は経過している。ならば、あれは朱音が戻って来た音なのだろうか。


 足音が徐々に大きくなり、壕の中へと入って来た。朱音かと思い首を上げた紅だったが、そこに立っていたのは思いもよらぬ人物だった。


「皐月さん……」


 目の前に現れたのは皐月だった。髪も服も雨に濡れ、身体のあちこちから雫が垂れている。よほど急いでかけつけたらしく、息が上がっているのが紅にも分かった。


「よかったわ……。どうやら、読みが当たったみたいね」


「読みって……皐月さんこそ、どうしてここへ!?」


「説明は後。それよりも、今はここから逃げ出すのが先よ」


 そう言うと、皐月は一本のナイフを取り出して、紅の四肢を縛っている縄を器用に切った。


「大丈夫、紅ちゃん。ちゃんと、自分の足で立てるかしら?」


「少し、頭がふらふらするが、問題はないな。それよりも……これは、いったいどういうことだ」


「そうね……。とりあえず、ここから離れましょう。説明は、歩きながら話すわ」


 本当は、今すぐにでも皐月の口から真実を知りたかった。しかし、朱音が戻って来ることを考えると、そうのんびりもしていられない。今の朱音が自分の知る朱音でないことだけは、紅も理解しているつもりだった。


 壕の外に出ると、霧のような雨がべったりと張り付くように降って来た。山道に入ると、雨だけでなく濡れた草木までもが身体に張り付いて来る。額から流れ落ちる雫が視界を妨げ、不愉快なことこの上ない。


 熊笹に覆われた山道を、皐月と紅は早足で下った。途中、何度か木の根に躓きそうになるものの、なんとか転ばないようにしながら先を急ぐ。


「なあ、皐月さん。朱音は……あいつは、いったいどうなっちまったんだ!?」


 歩く速度はそのままに、紅はたまらず皐月に尋ねた。皐月は後ろを振り向くことなく、背中を向けたまま紅に答える。


「朱音ちゃんはね、絶影と……狗蓼家の犬神と一つになったのよ」


「それは、憑かれたってことなのか」


「いいえ、少し違うわ。朱音ちゃんは、犬神を自らの魂の中に取り込んだの。退魔師としての訓練なんて受けていなかったけど、あの子にはそれだけのことができる程の潜在能力があったのよ」


「それじゃあ、朱音は……」


「ええ。最初から、あの子は自分の意思で行動していたわ。自分の意思で母親を殺し……その犬神を奪って、今度は紅ちゃんに手を出した不良を殺していったの……」


「そんな!! 朱音が自分から人殺しなんて……そんな馬鹿なこと、するはずがない!!」


 認めたくはない。信じたくはない。だが、現実は残酷だ。この場において、皐月が自分に嘘をつく理由は何もない。


「あの子はね、紅ちゃん。あなたのことが好きだったのよ。その気持ちが大きくなり過ぎて……それが犬神と融合したことで、もっと歪んだ形になって……目的のためならば、手段を選ばない行動に出るようになったのよ……」


 そう、皐月が言ったとき、草に覆われた山道を抜けて県道に出た。だが、先を急ごうとする皐月に対し、紅はその場に茫然と立ち尽くしているだけだった。


「お、俺のせいだ……。俺が……あいつの気持ちに気づかなかったから……。あいつがおかしくなっていることにも気づかなかったから……」


 雨の中、紅の声は震えていた。いつもの彼らしくない、小さく弱々しい声。


 最近、朱音は確かにこちらを意識させるような素振りを見せることが多かった。その時点で、気がついているべきだったのだ。いや、本当は気がついていたはずだ。


 朱音が自分のことをどう思っているのか。紅とて、まったく意識しなかったわけではない。幼い頃からの知り合いであったからこそ、朱音のことを愛おしく思う瞬間があった。最初は兄として、こと最近では男として、朱音に好意を持っていなかったと言えば嘘になる。


 自分の気持ちに正直になり、相手を受け入れること。そんな簡単なことさえできなかった自分が、今になって悔やまれる。自分が朱音の気持ちを素直に受け入れてさえいれば、このような結末にはならなかったはずだ。


「皐月さん……。俺は……」


 それ以上は、何も言葉が出てこなかった。ただ、この受け入れ難い現実に耐えるので精一杯だ。


 足が止まり、これ以上は歩けそうにない。いや、歩きたくない。朱音を狂わせた原因が自分にあるならば、朱音と一緒に死んでしまいたい。それができれば、どれほどに楽なことだろう。


 だが、紅がそう考えた瞬間、空気を叩くような音が辺りに響き渡った。頬に痛みが走り、紅は思わず叩かれた場所を手で押さえた。


「しっかりしなさいよ、紅ちゃん! あなた、ここまで来て立ち止まるつもり!?」


 気がつくと、皐月がこちらを睨みつけていた。紅を叩いた手はそのままに、未だ茫然としている紅にゆっくりと詰め寄る。


「確かに、朱音ちゃんのことは私も可哀想だと思うわ。でも、ここまで来たら、もう取り返しがつかないのよ。現実を受け入れて戦うか、それとも全てを放り出して、怪物になったあの子に食べられるか……どっちがいいか、ここではっきり決めなさい!!」


「それは……」


「紅ちゃんが、ここで逃げ出すっていうんなら、私も止めないわ。その代わり、私は一生紅ちゃんを恨むわよ。あなたはまだ生きているのに……それなのに、全てに背を向けて逃げ出すなんて……私は絶対に許さないからね!!」


 いつもの人を食ったような目は、そこにはなかった。普段は悪女を気取っているが、それが皐月の本性でないことは紅も知っている。


 男を誘うような際どい冗談を連発することもあるが、あれはあくまで仮の姿。本当の皐月は、決して自堕落でいいかげんな生き方をするような女性ではない。こと生き様に関しては、誰よりも優柔不断という言葉を嫌っている。


 頬の痛みがひいてゆくにつれ、紅の瞳にも再び光が戻って来た。


 先ほどは、全てを放り出して逃げ出したいと思っていた。怪物と化した朱音に食われるならば、それも本望だと考えていた。


 しかし、それは現実を受け入れず、己の命さえ投げ捨てて逃げることに他ならない。赫の一族の末裔として、そして何よりも一人の人間として、そんなことは許されない行為だ。


 自分は生きなければならない。生きて、全てを見届けて、その上で現実を受け入れねばならない。それこそが、朱音に対して自分が果たすべき責任だ。朱音と共に闇に飲まれて死ぬことは、決して彼女に対する責任を果たすことにはならない。


「俺は生きるぞ、皐月さん。このまま生きて……全てを知る責任がある。そういうことだろう?」


「どうやら、分かってくれたみたいね。だったら、先を急ぎましょう」


 時間は無尽蔵にあるわけではない。この山は、皐月ではなく朱音の領域だ。あまり同じ場所に留まっていれば、それだけ危険も増すことになる。


 再び山を降りようと、県道を走り出す皐月と紅。が、次の瞬間、目の前に立ち塞がる者の姿を見て、二人の足は完全に止まった。


「あ、朱音……」


 そこにいたのは朱音だった。祭りの時に着ていた浴衣はそのままに、霧雨の中、こちらをじっと見つめている。口元についた赤い血は、紅に生肉を給仕した時のものだろうか。一部は雨に流されていたが、それでもなお、朱音の唇の周りを褐色に染めていた。


「どこへ行くの、紅君……」


 じりじりと、朱音がこちらに近づいて来る。皐月が紅を庇うようにして目の前に立つと、朱音の視線もそちらに移った。


「へえ……今度は皐月さんか……。まあ、誰でもいいけど……紅君を連れて行くんだったら、容赦しないよ」


「お生憎さまね。今のあなたは、もう紅ちゃんの知る朱音ちゃんじゃないわ。あなたは既に、こちら側の世界の住人じゃない。向こう側の世界・・・・・・・の住人なのよ!!」


「それがどうしたの? 言っておくけど……皐月さんの力じゃ、私には敵わないよ……」


 朱音が懐から、何やら白い紙きれを取り出す。道に撒かれたそれを見ると、どうやら真っ二つに引きちぎられた紙人形のようだった。


「こんな人形で、私を騙せると思ったのかな? その辺のお化けだったら通用したかもしれないけど……犬神様の鼻を持っている私は、いつまでも騙せないからね……」


 朱音の口元が、にやりと笑みの形に歪んだ。皐月も身構えるが、それでも力の差は明白だ。なにしろ相手は、黒影に匹敵する犬神を取り込んだ存在なのだから。


 人型。人の形を模して作った人形に、人間の爪や髪などを入れて名前を書く。呪いの藁人形の代わりにも使える物だが、上手く用いれば霊的な存在を欺くための身代わりとなる。


 正面から戦っても敵わない。そう分かっていたからこそ、皐月は人型を山のあちこちに置き、朱音が迷っている間に紅を助け出した。しかし、朱音の力は皐月の予想を更に上回り、人型を用いても大した時間稼ぎにさえならなかったようだ。


 朱音の瞳が、徐々に光を失ってゆく。血のように赤かった瞳が濁った赤銅色に染まり、全身から禍々しいまでの黒い気が発せられる。


(来る……!!)


 退魔具を取り出している暇などなかった。


 朱音の身体がその場に崩れ落ちると同時に、皐月に向かってどす黒い気の塊が襲いかかって来た。済んでのところでかわしたものの、もう少し反応が遅れていたら危なかった。


 朱音の身体から離れた気が、徐々に人の形を成して行く。それこそが、朱音と犬神の融合した者の姿。妖魔と化した朱音の本体とも言える存在だった。


≪コウクンハ……ワタサナイ……≫


 黒い影がこちらを向いた瞬間、頭の中に直接声が響いてきた。低く、地の底から響くような、重い声。その中に、かつての朱音であった時の面影は欠片もない。


 影が、大きく太く伸び上がった。獣が唸るような声と共に、巨大化した影から四肢が伸びる。赤銅色の目が輝いて、銀色の刃をむき出しにした頭部が顔を出した。


「あれは……犬神!?」


 そこにいたのは、紛れもない犬だった。いや、正しくは、犬の姿をした影だ。その大きさは、頭だけでも皐月の身の丈に匹敵する程のものがある。臙良の使役する黒影よりも、さらに一回り巨大だった。


 今や、朱音は完全に犬神と一つになっていた。改めて、皐月はその力の強大さを知り震え上がる。とてもではないが、こんな相手とまともに戦うだけの力など持ち合わせていない。


 皐月の手が、臙良から借り受けた刀へと伸びた。犬崎家に代々伝わる退魔の刀、闇薙の太刀。生者も死者も問わず、貪欲なまでに魂を欲して全てを食らわんとする諸刃の剣。


 自分の力では、闇薙の太刀を振るえるのはせいぜい一度が限界だろう。それ以上は、こちらの魂が先に太刀に食われてしまう。危険なかけではあるが、相手の隙を見て必殺の一撃を叩きこむ他にない。


 皐月が動かないのを見て、朱音の変化した犬神が地を蹴った。


 速い。こちらの思っていた以上のスピードで、相手はこちらとの距離を詰めて来た。これでは一撃を食らわせるどころか、太刀を抜くことさえままならない。


「なるほど……。さすがは犬神の力を取り込んでいるだけあるわね」


 口ではそう言いながらも、皐月の中に余裕はなかった。このまま戦っていては確実に負ける。ならば、出し惜しみをしている余裕などない。


 再び、敵が大地を蹴った。今度も真っ直ぐに皐月を捉え、銀色の牙をむき出しにして襲いかかる。


 だが、皐月とて黙ってやられるつもりは毛頭なかった。向かって来る相手に対し、懐に隠した護符を取り出して投げつける。皐月の用いる護符の中でも、特に強い力を持つものだ。その辺にいる不浄霊であれば、一枚使うだけでも十分に封じられるほどの物である。


 護符が宙を舞い、敵の身体に吸いつくようにして貼りついた。が、瞬間、その護符から緑色の炎が上がると、一瞬にして消し炭と化す。


「そんな……!? あれだけの護符を受けて、足止めにもならないなんて!!」


 攻撃がまったく通用しなかったことを悟り、皐月の顔に驚愕の表情が浮かんだ。その間にも敵は更に皐月との距離を詰め、咆哮と共に襲いかかる。


 このままではやられる。覚悟を決め、再び闇薙の太刀に手をかける皐月。こうなれば、刺し違える覚悟で敵の懐に飛び込み、太刀による一撃を食らわせるしかない。


 ところが、皐月が踏み出そうとしたその時、今度は敵が動きを止めた。ふと、足元を見ると、なんと皐月の影が細長く伸びている。その影は地面から盛り上がるようにして起き上がり、瞬く間に獣の姿を形作って行く。


「黒影……!?」


 それは、臙良の使役する犬神、黒影だった。恐らくは臙良が皐月を助けるために使わせたのだろうが、それにしても、いつの間に自分の影に入り込んでいたのだろう。


 戦うための姿となった黒影が、唸り声を上げて敵を威嚇した。その身体は相手よりも一回り小さいが、気迫では決して負けていない。


 黒影と、朱音の変化した犬神が同時に飛んだ。二体の影は空中で交錯し、その身体を互いにぶつけ合う。が、やはり体格差は隠しきれないのか、黒影の方が押し負けて弾き飛ばされた。


 バランスを崩した黒影に、敵の更なる追撃が迫る。しかし、黒影もただやられているわけではない。なんとか頭だけを相手の方に向けると、その口から青白い炎を吐き出した。


 破魔の炎。あらゆるものを焼き尽くし、魂さえも灰にする、犬神が放つ最後の武器。宵闇の世界を切りさくようにして、黒影の吐いた炎は容赦なく敵を包みこんだ。


「や、やった!?」


 炎が消え、その中から朱音の変化した犬神が現れる。さすがに今度は効いたのか、全身から白い煙を上げていた。


 相手は間違いなく弱っている。そう確信した皐月は、黒影と共に攻めに出た。黒影が再び炎を吐き、それに合わせて皐月も闇薙の太刀を引き抜く。瞬間、引き抜かれた太刀の刃から黒い気が溢れ出し、銀色に輝く刀身を包みこんだ。


 この一撃で終わりにする。魔物と化した朱音を元に戻す術はない。ならば、せめて人の手で、あるべき世界へと帰してやることが救いになる。


 黒影の炎が、皐月の太刀が、共に朱音の姿を変えた犬神に迫った。これで惨劇は終わりを告げる。破壊された日常は、元の平穏を取り戻す。そう、確信した時だった。


 敵の目が、再び妖しく輝いた。咆哮と共に口を開き、その奥から緑色の炎が吐き出される。敵の炎は黒影の吐いた青白い炎とぶつかり合い、それを飲み込む様にして押し戻した。


「黒影!!」


 皐月の目の前で、黒影が敵の吐いた炎に包まれる。が、それに気を取られている暇などない。ここで敵を仕留めねば、次にやられるのは自分自身だ。


「このっ……よくも!!」


 黒影を攻撃した一瞬の隙を狙い、皐月は相手の真横に回り込んだ。そのまま闇薙の太刀を握りしめ、その切っ先を相手に突き立てる。


 間合い、スピード、そのどれもが完璧な攻撃だった。相手の死角から、まったく無駄のない動きで急所を狙う。少なくとも、皐月はそう思っていた。


 だが、そんな皐月の希望も虚しく、彼女の一撃が敵を仕留めることはなかった。


「くっ……」


 刀の先が、相手の口によって受け止められていた。太刀から湧き出る黒い気が相手の鼻先を蹂躙していたが、それさえも意に介していない。


 獣が、刀身を咥えたまま大きく頭を動かした。皐月の身体は一瞬にして宙を舞い、激しく大地に叩きつけられる。刀が手から離れ、地面を転がった。


(これが……犬神と融合したあの子の力……。勝てない……私には、とても……)


 見ると、自分の横では黒影が、その身体から煙を上げて横たわっていた。未だ消滅はしていないようだが、とても戦える状態ではない。


 持てる全てを出しつくしても、相手にはまともな傷一つ負わすこともできない。目の前で見せつけられた、圧倒的な力の差。恐怖に身体が硬直し、立ち上がることさえも叶わない。


 絶望。その二文字が皐月の脳裏をよぎった。まともに戦っても勝てる相手ではない。奇策を用い、犬神の力を借りてもなお、その力の差を埋めることはできなかった。


 このまま自分は、ここで朱音に食われるのか。他の犠牲者と同じように、その魂まで無残に蹂躙されて。そう、皐月が覚悟を決めた時だった。


「止めろ、朱音!!」


 雨音をかき消すようにして響いた声に、獣の動きがピタリと止まった。


「もう……止めるんだ……。それ以上、人を殺すんじゃない……」


 声の主は、紅だった。その場にいる者の視線が彼に集まり、獣は徐々に人の形へと姿を変えて行く。赤銅色の瞳はそのままに、朱音の肉体から離れた時の姿へと戻っていた。


≪コ……ウ……ク……ン……≫


 人の姿に戻った影が、ゆっくりと紅の方を振り向いた。瞳と牙は獣のままだが、その影は、やはりどこか朱音の姿にも似ているように思われた。


「朱音……もう、止めてくれ……。俺のために……そんな姿になってまで、人を殺すなんて……。そんなこと、俺はこれっぽっちも望んじゃいない!!」


 紅の声が、再び辺りの空気を震わせた。しかし、その声が聞こえているのかいないのか、朱音の影は、ずるずると流れるようにして、徐々に紅の方に近づいてゆく。


≪ヒト……ツニ……ナ……ロ……。ワタ……シト……ヒト……ツニ……≫


 また、朱音の声が紅の頭に響いた。雨の中、ねちゃねちゃという不快な音がして、朱音の影に亀裂が入る。


「あ、朱音……」


 影が、裂けるようにして真っ二つに割れた。頭部から腹部にかけて、まるで食虫植物のようにして、朱音の影はその身を裂きながら紅に迫る。裂けた中身からは触手のような物が迫り出して、紅をその中に飲み込まんと蠢いていた。


 もう、あれは朱音ではない。自分の知る朱音は、もうこの世にはいない。今、目の前にいるのは、情念の塊となった一つの怪物だ。


 これ以上、見ていたくはなかった。変わり果てた朱音の姿も、その力を行使して人を殺す様も。


「許せ……朱音……。今、俺がお前の呪縛を解き放ってやる……」


 足元に転がる闇薙の太刀を拾い上げ、紅はそれを構えて足を踏み出した。一歩、また一歩と足を出す度に、刀を握る手に刺すような痛みが走る。


 闇薙の太刀は、敵味方問わずに貪欲に命を食らう武器だ。当然、使用する者の力が弱ければ、その魂も削られてしまう。先ほどの皐月もそうだったが、修業中の紅にとっても、長時間の使用は命にかかわる。


 両手に伝わる痛みに耐えながら、紅もまたゆっくりと朱音の影との距離を詰めた。互いに手を伸ばせば触れられるまでの距離に近づいたところで、紅は手にした刀を逆手に持ち替える。


 影の中から伸びた触手が紅の腕や首に巻き付いた。不思議と、痛みや苦しみはない。が、命を吸われていることだけは確かなようで、触手の触れている部分の感覚が、徐々に麻痺してなくなってきた。


 朱音はこのまま、自分の魂を食らうつもりなのだろう。そうやって、魂を己の中に取り込むことで、永遠に一つになろうとしている。犬神を自分の中に取り込んで、その力を我が物とした時のように。


 これ以上、魂を削られることは危険だった。紅は一瞬躊躇うような顔をしつつも、手にした太刀を影の中心に突き立てる。実体のない、霊的な存在が相手であるにも関わらず、刃が肉に食い込む時と同じ感触がした。


≪ア……アァァァァッ!!≫


 触手が暴れ、絶叫が紅の頭の中に響いた。闇薙の太刀に食われる痛みに、朱音の影が悶絶する。


 気がつくと、紅の瞳から涙が溢れていた。それは、魂を削られた痛みから来るものではない。朱音を救うことのできなかった、自分自身に向けられたものだ。


「…………滅」


 嗚咽を飲み込み、紅は刀から手を離して印を結んだ。その動きに呼応して、刀身から黒い気が一度に溢れ出す。


 それは、浄化と言うにはあまりにも禍々しい光景だった。ミミズとも蛇ともとれる黒い気が、無数に刀身から溢れ出して朱音の影を食らう。影も抵抗を試みるが、刀から溢れた気はあざ笑うようにして、次々と影の本体を貪っていった。


 逃げ出すことも、獣に姿を変えることもできず、影は刀に食われていった。べりべりと、皮を剥ぎとられるようにして、その身体は徐々に黒い気の中に飲み込まれてゆく。


≪コ……ウ……ク……ン……≫


 影が、最後の足掻きとして紅に触手を伸ばす。しかし、それさえも直ぐに黒い気に絡め取られ、成す術もなく食われてゆく。


≪さ……よ……な……ら……≫


 闇に飲み込まれる瞬間、朱音の声が紅の頭に響いた。気がつけば、その声は紅のよく知る朱音のものに戻っていた。


 カラン、という音がして、食事・・を終えた刀が転がった。いつの間にか雨は止み、そこには紅と皐月だけが残されていた。


「朱音……!!」


 思いだしたようにして、紅は後ろを振り返る。そこには浴衣姿の朱音が、うつ伏せになったまま倒れていた。


「朱音……」


 濡れた身体を、紅はそっと抱き上げる。名前を呼んでも、返事が返って来ないことは分かっていた。


 朱音は消えた。犬神と一つになったまま、闇薙の太刀にその魂を食らい尽くされて。


 紅のことを想うからこそ、紅しか頼る者がいなかったからこそ、朱音は紅の力になりたいと強く願った。だが、その純粋すぎる想いは結果として闇を呼び、朱音を怪物へと変えてしまった。


「畜生……畜生……」


 朱音の顔が、ぼうっと滲んで見えた。赤い瞳から零れ落ちる涙が、物言わぬ朱音の頬を静かに濡らして行く。


 救う方法などなかった。融合した魂と魂は、二度と切り離すことはできない。犬神と溶け合って一つになってしまった朱音は、既に紅の知る朱音ではない。闇薙の太刀の力を使って無に帰すことでしか、朱音を闇の呪縛から解き放つ方法など存在しなかった。


 だが、しかし、それでも自分が朱音を手にかけたということは変わらない。朱音の影に刃を突き立てた時の感触が、まざまざと両手に蘇ってくる。


「う……うわぁぁぁぁっ!!」


 やり場のない怒りと悲しみが叫びとなり、漆黒の闇に包まれた山の中に響き渡った。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 それから冬が来て、春が来て、夏が来た。そして、また秋を迎え、再び冬が訪れた。


 四国とはいえ、冬の土師見村は麓に比べれば寒かった。その日は珍しく雪が降り、村と山々を白く染め上げていた。


 山中にある滝に打たれながら、犬崎紅は瞑想を続けていた。冬だというのに、身につけているものは下着のみ。が、既に慣れてしまっているのか、不思議と苦痛は感じなかった。


 山の霊気を含んだ水を全身に受け、紅はその感覚を極限まで研ぎ澄ます。その日の修業に入る前、禊ぎとして滝の水で身を清める。季節に関係なく、今の紅にとってはこれが日課となっていた。


「やはり、ここにいたか、紅よ」


 滝壺に近づく足音を聞き、紅は閉じていた目をゆっくりと開いた。虹彩が血のように赤いのは変わらなかったが、その瞳には、一年前よりもどこか深い影が射しているようだった。


「なんだ、婆さんか。俺を呼びに来たということは……臙良の爺さんの使いか?」


「ああ、そうじゃ。今日は、お主にとっては門出の日じゃからのう。先に、犬首塚で待っておると言っておったよ」


「だったら、急いだ方がよさそうだな。大切な儀式の日に、爺さんをいつまでも待たせるのは無粋だ」


 そう言って滝から出ると、紅は岸に畳んでおいた自分の服を身に付けた。もっとも、服とはいえ、質素な黒布で作られた古臭い衣なのだが。


 草履を履き、傘を頭に乗せ、紅は多恵に案内されるままに山を降りた。その枝に白い雪を乗せた木々を横目に、ふと今までの修業のことを振り返った。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 紅が本格的な修業を始めたのは、朱音が亡くなったすぐ後のことだった。


 朱音が亡くなってから、紅は改めて臙良に修業を頼み込んだ。もう、あんな思いはしたくないし、誰かにさせたくもない。そのためには、一刻も早く自分が退魔師として独り立ちする必要がある。そう考えてのことだった。


 退魔師として一人前になれるなら、どんな修行にも耐える覚悟がある。その時、紅は臙良にそう告げた。だが、そんな紅を待っていたのは、朱音の死に追い打ちをかけるような、更に過酷な現実だった。


 修業を頼み込む紅に、臙良が見せた一枚の写真。そこに写っている者を見た途端、紅の顔が険しくなった。


 写真の中にいたのは、今は亡き紅の母である美紅だった。その隣にいるのは、恐らくは母の夫だろう。紅にとっては、父親に当たる人物だ。


 どこにでもある、仲睦まじい夫婦の写真。しかし、紅にとってこの写真は、そんな単純なものではなかった。


 母の隣に写る、優しい笑顔を浮かべた青年。その男の写真を、紅は一度朱音の部屋で見たことがある。


 狗蓼宗助くりょうそうすけ。朱音の父親であり、彼女が産まれてから間もなくして、交通事故で亡くなったと聞いていた。その宗助が、なぜ自分の母と一緒に写っているのか。そんな紅の疑問に対し、臙良から返って来た答えは残酷な真実だった。


 昔、まだ紅が産まれてもいなかった頃の話である。


 紅の母となる以前、美紅は臙良の後を継ぎ、優秀な退魔師として活躍していたらしい。若くして臙良から黒影と闇薙の太刀を譲り受け、村の周りで起きる奇怪な事件を解決していた。


 そんな折、彼女が出会ったのが宗助だった。彼は赫の一族とは無縁の男だったが、二人が惹かれ合うのに、そう時間はかからなかった。


 やがて、美紅は子を身籠り、それに伴って黒影と闇薙の太刀を臙良に返上した。宗助は犬崎家に婿入りし、二人は幸せの絶頂にあった。こと、紅が産まれた際の喜びようと言えば、筆舌に尽くし難いものがあったという。


 だが、幸福な日々は長くは続かなかった。


 紅を産んでから半年ほど経ったある日、美紅の下に事件の報が飛び込んできた。それこそが、あの元村巡査の息子が消えた神隠し事件である。


 その日、たまたま臙良は、仕事の都合で土師見村を離れていた。頼りになるのは、もはや美紅しかいない。犬神も武器もなかったが、それでも美紅は元村巡査の息子を取り戻すために山へと入った。そして、見事に事件を解決したものの、その戦いを最後に、彼女は帰らぬ人となった。


 妻の死という現実を受け入れられず、それからの宗助は、ほとんど廃人同然になってしまったという。それこそ、まともに食事さえも摂らず、完全に部屋の中に閉じこもってしまった。


 自分が妻にとって、何の力にもなってやれなかったこと。その結果、妻が二度と自分の下に戻らなくなってしまったこと。そして何よりも、己が唯一の心の支えとしていた者を失ったこと。


 大切な者の死は、宗助の心を確実に蝕んだ。かつては彼も、美紅と共に強く生きることを胸に秘めた青年だったようだが、彼女の死後は、今までのことが嘘のように絶望に打ちひしがれるだけだった。そして、そんな時に彼のことを支えたのが、他でもない狗蓼朱鷺子だった。


 朱鷺子と美紅は、もともと親戚の関係にあった。故に、宗助とも面識があり、美紅と三人で他愛もない会話に華を咲かせることも多かった。


 自分の心の隙間を埋めるようにして、宗助は朱鷺子に癒しを求めた。それは、ほとんど刷り込みのような、現実からの逃避だったのかもしれない。美紅とよくにた朱鷺子の容姿に、生前の妻の姿を重ね合わせる。そうすることでしか、心の安定を保てないほどに、宗助の魂は荒みきってしまっていた。


 だが、そんな宗助ではあったが、それでも朱鷺子のは彼の気持ちを受け入れて、彼と一緒に生きることを望んだ。宗助の目が、決して自分自身に向けられてはおらず、自分の中にいる美紅の面影に向けられているということを、あえて受け入れた上でのことである。それだけ朱鷺子もまた、宗助に淡い想いを寄せていたということだろう。


 翌年の春、朱鷺子は宗助の子を身籠っていることを臙良に伝えた。話を聞いた臙良は、何も言わずに宗助を朱鷺子のところへ婿に出した。


 もともと、宗助は赫の一族とは関係ない。こちら側の世界の住人でしかない宗助に、向こう側の世界・・・・・・・と関わる者の宿命を押しつけるのは、臙良としても本意ではなかった。


 幸いにして狗蓼家は、既に退魔師としての仕事から足を洗っていた。朱音が産まれた後、朱鷺子は犬崎の家との関わりを必要最低限に絞り、美紅と宗助の関係も紅に秘密にして欲しいと頼んだ。


 それは、向こう側の世界・・・・・・・に関わることで大切なものを失った、宗助に対する朱鷺子なりの思いやりだったのかもしれない。しかし、その宗助も不慮の事故で亡くなると、朱鷺子も犬崎の家を頼らざるを得なくなった。


 朱音と自分が異母兄弟。その事実を知った時は、さすがに紅も臙良を責めた。なぜ、今まで真実を隠していたのかと。なぜ、今になって真実を話す気になったのかと。


 そんな紅を、臙良はあくまで厳しい言葉で冷静に諭した。


 元村巡査の事件で、紅の母は亡くなった。そして、その後に父である宗助は、母の親戚であり親友でもある女性と関係を持った。その事実を知って、果たして紅が元村や宗助、果ては朱鷺子や朱音のことを、恨まずに生きてゆけるのかと。



――――闇を用いて闇を祓う。それが赫の一族の生業である。



 最後に臙良は、紅にその言葉を残して話を終えた。


 やるせない想い。歪んだ家系。決して陽の当たる場所に出ることはない、向こう側の世界・・・・・・・の住人を相手にする仕事。それらの闇を受け入れ、そして打ち勝つことができなければ、赫の一族としての務めは果たせない。ただ、力を求めるだけであれば、それは朱音と同じ末路をたどることになる。


 臙良は紅に問うた。己の中の闇を受け入れ、それに立ち向かう覚悟があるかと。一族に課せられた咎を受け継ぎ、己の業をその身に背負い、闇の者と戦い続ける覚悟があるかと。


 紅はそれに、無言のまま静かに頷いた。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 ざく、ざくという、雪を踏む音が聞こえて来る。臙良の待つ犬首塚は、もう目と鼻の先だった。


 山の中に、隠されるようにして作られた小さな祠。古びら木戸を開けると、そこには臙良が座っていた。


「来おったか……。いよいよ、この日がやってきたな、紅」


 自分の前に座する紅を見て、臙良が言った。


 朱音に刺された時の傷がもとで、臙良は刀を持って戦うことのできない身体になった。その腰は少しだけ曲がり、以前よりも少し老いが進んだように見えた。


「では、始めるぞ。今からお前に、黒影を譲り渡す」

 

 臙良の膝の上には、犬の首のミイラと思しき物が乗っていた。かなり古いものらしく、完全に干からびて元の面影はない。


 犬神とは、元は強い恨みを持って死んだ犬の霊である。その作り方は、実に残酷極まりない。


 犬を首だけ出して地面に埋め、その舌がぎりぎり届かないくらいの位置に餌を置く。そうして生殺しの苦痛を味わわせ、空腹が絶頂に達したところで首をはねる。そして、その首を人の往来する道の真ん中に埋め、多くの人にその上を踏ませて恨みの念を醸成する。やがて、その恨みや憎しみが頂点に達したところで首を掘り返し、祠に祀って神とするのだ。


 犬神だけではない。外法使いの退魔具として、犬崎家に伝わる闇薙の太刀。あれもまた、闇を用いて闇を祓う、諸刃の性質を持った刃である。


 その昔、千人もの罪人の首をはね続けたとされる一振りの刀。やがて、その刀に宿った負の力は、自ら貪欲に魂を食らうようになったという。それこそ、生者も死者も問わず、ひたすらに魂を貪る妖刀となった。以来、魔封じの呪縛を施した上で、必要に応じて犬崎の家の人間に用いられ、今日に至る。


 御霊信仰を利用した、怨霊から生み出された下級神。そして、数多の人の血を啜り、果ては魂までも食らい続ける呪われし刀。それらの存在は、赫の一族が代々背負ってゆかねばならない咎そのもの。


 その咎を力に変え、使役する者こそが外法使い。彼らに必要とされるのは、己が怨霊の負の力に毒されないだけの強い意志。


 赫の一族としての力を身につけるため、紅は臙良の課した厳しい修行に耐え続けた。今までは早朝に剣の稽古をする程度だったのが、朱音の死をきっかけに何かに目覚めた。それこそ、人が変わってしまったかのように、外界との接触を絶って修業に打ち込んだ。


 臙良の手が、膝に乗せられた犬の首をゆっくりと撫でる。犬の目と鼻、そして口の部分から、なにやら黒い影が噴き出してくる。


 影が紅の身体に重なり、その中に吸い込まれるようにして消えて行く。自分の影が徐々に浸食され、犬神が宿って行くのがはっきりと分かる。


 犬神は、使役する者の影に憑く。臙良の教えを思い出しながら、紅は自分が赫の一族として、戻ることのできない場所まで来たことを感じていた。



※ ※ ※ ※ ※ ※ ※ ※



 薄暗い壕の中で、犬崎紅は茶碗に盛られた赤い実を見つめていた。幼い頃、朱音がよく赤飯に見立てて遊んでいたものだ。


 あれからもう、二年ほどの月日が流れた。今、自分は外法使いの退魔師として、闇に巣食う向こう側の世界・・・・・・・の住人たちと戦う日々を送っている。


 生まれながらにして強い力を持ったが故に、その力に飲み込まれて闇に堕ちる。そのような者を生み出さないためにも、自分は闇と戦い続けねばならない。火乃澤町に留まり、九条照瑠くじょうあきるを守ることを決意したのも、そういった想いがあるからだ。


 兄と妹。幼馴染。そして、恋人未満であり友達以上である関係。


 色々な意味で、朱音は紅にとって初めての女だった。そして、そんな彼女の命を絶ったのもまた自分。その罪の意識は、決して忘れようにも忘れられない。


 贖罪。照瑠の父である九条穂高くじょうほだかに、紅が告げた言葉である。常世の者から現世の者を守るのは、自分にとっては正に贖罪なのだ。


 こんなことをして、一族の咎が軽くなるとは思わない。照瑠を守ったところで、朱音を殺した自分の罪が許されるはずもない。


 そう、頭では分かっていても、今の紅にはそれ以外に罪を償う術が見当たらなかった。つくづく、自分でも不器用な男だと思う。闇を用いて闇を祓い続けることでしか、己の生きる道を見つけられないというのだから。


 時刻はもうじき、昼を迎えようとしていた。南の空に昇った夏の太陽が、壕の外を温かく照らしている。


 盆の時期は、先祖の霊が帰って来る季節でもある。しかし、朱音の魂は、決して現世に戻ることはない。否、常世にも現世にも、朱音の魂は既に存在しないのだ。


 闇を食らいて闇を薙ぐ。それこそが、紅の使う闇薙の太刀の力だ。その刀に食われた魂は、全てを失い刀の闇に同化される。己の意思も、記憶も失い、存在そのものが無に帰する。


 壕の入口まで戻り、紅はふと後ろを振り向いた。そこには先ほど自分が置いた茶碗があるだけだったが、紅にはなぜか、幼き日の自分と朱音の姿が見えるような気がしてならなかった。






――――ねえ、紅君。紅君は、大きくなったら何になりたいの?



――――俺は、普通に爺ちゃんの後を継ぐつもりだよ。そういう朱音こそ、何になりたいんだ?



――――そうだなぁ……。だったら、私はお嫁さんになる。紅君が大きくなったら、私、紅君のお嫁さんになる!!

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