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恋が始まる必須条件  作者: このはな
恋が始まる必須条件
14/44

14.お願い!

 ふたりっきりの保健室という、おいしい告白のチャンス。


 失敗して好きな女の子に泣かれたばかりか、仲直りしようとした矢先に邪魔されて。


 そのうえ、ひょろっとした女みたいなヤツに、こうしてにらまれている。


 気に入らない度200%、いや、それ以上だ。


(くっそう。なんだ、こいつ。彼氏面しやがって) 


 これ以上カッコ悪いところを見せたくないし、見せられねえ!



「おい、お前。何しに来たんだよ」


 制服を着ていないので、部外者だということはすぐにわかった。


 エイジの視線からマツリをかばうため二、三歩前に出て、キンキンは自分の背中で彼女をかくした。



 彼氏(おとこ)がいるって聞いたことないから、そう思って安心していたのがバカだった。


 四六時中アイコがコバンザメみたいにくっついていたので、まさかこんなことになるとは夢にも思わなかったからだ。


 どこのどいつか知らないが、まだフラれたわけじゃないんだ。


 簡単にあきらめてやるもんか!



「ちょっと、ちょっと待って」


 急にマツリがふたりの間に割って入った。


 いくらニブちんのマツリといえど、その一触即発のただならない雰囲気を感じたのだ。


 左手はキンキンに、右手はエイジに向けて高く両腕を上げ、彼らの間の距離が縮まらないように立った。


「キンキン、違うの。知ってる子なの。弟の友達なんだよ」



「弟の友達……? ってことは、小学生なのか?」


 キンキンは驚いた顔をかくせずに、目を丸くしてエイジをみつめた。


 鳩が豆鉄砲を食らう。


 その言葉を連想させる表情だ。


 それもそのはず、エイジは美少女のような顔立ちに、キンキンと変わらないぐらいの背の高さ。


 驚くのも無理はない。


 しかしキンキンは、すぐ真顔に戻した。


小学生(ガキ)のくせに、なんでここにいるんだよ」


 相手が小学生だとわかると、余裕の笑みを浮かべた。


 威嚇するように腕を組んで、にらみつける。



 それなのにエイジは、キンキンのことなんか何とも思ってないという態度で、平然と言ってのけた。


「マツリを迎えに来たんだ。あんたには関係ない」


 キンキンをちらっと見たあと、マツリに視線を移し、長いまつげに縁取られた、きれいな茶色の瞳で彼女をじっと見た。



 え、なに?


 なんでこっち見るの?


 思いがけないエイジの眼差しに胸がどぎまぎして、マツリは上げていた両腕を下ろした。


(こんなときに、そんなふうに見るなんて反則だよ……)


 そのまま胸の上で手を握りしめ、うつむいた。



 それを目撃したキンキンは、


「なんだって!? てめえ、調子こいてんじゃねえぞ」


 と言いながら、エイジにつかみかかろうとした。



 マツリは、はっと顔を上げて身体の向きを変え、とっさにキンキンの手をつかんだ。


「お願い、黙ってて!」


 そして自分の胸元に引き寄せ、彼の手を両手で包み込んだ。


「何でもするから。だから、お願い! 黙ってて!」



(え……!?)


 小さくて柔らかな手の感触に驚いて、キンキンは思わず目をぱちくりさせた。


(オレ、夢でも見てるのか?)


 呆然と自分の目の前にいる女の子を見下ろした。


 彼女は、真剣な面持ちでこちらを見ている。


(それに、何でもやるって……?)


 『やっぱり冗談でした』って、言うんじゃないだろうな。


「マジで……?」


 思わず、ごくりとつばを飲み込んだ。

 


 マツリは、真剣だった。


(小学生のエイジ君が中学校にいるってバレたら……)


 スペシャル・ハードな大事件になるのが目に見えていた。


 謝ってすむ問題かどうかわからない。


 このまま放っておいたら、ふたりの間で大乱闘が始まりそうだ。


 そうなったら、キンキンや野球部だけじゃない。


 大会出場目指して、部活をがんばってるみんなにも迷惑かけてしまう!


 ここは大人の自分が何とかしなければ。


 マツリはこの場を丸く収めようと必死だった。 



「うん、やる。黙っててくれるなら、何でもやるから」


 本当はイヤだけど、こうなったら仕方ない。


 掃除当番だろうが、宿題だろうが、何だってやってやる!



「ば、このバカっ! なんでそんなこと言うんだよっ」


 エイジが血相を変えて走り寄り、マツリの肩をつかんで、キンキンからぐいっと引き離した。 


「オレが何のためにここに来たのか、わかってんのか?」


 心ここにあらずといった調子でぼーっとしてるヤツを一瞬見た。


 きっと良からぬことを想像してるに違いない。


 そんなこと言ってしまったら、何を要求されるんだか!


 あんなことやこんなこと、されるかもしれないんだぞ!


 全然男心をわかってないマツリに、エイジはいらいらして言った。



「わかってないの、そっちじゃない!」


(大体こうなった原因は、エイジ君のせいじゃないのさっ)


 まるでマツリのせいだと言いたげなエイジの言動に、猛烈に腹が立ってきた。


「ふん! エイジ君のわからず屋。エイジ君なんか、大っキライ」


「こっちこそ! 好きになってくれって言った覚えないね」


 今度はマツリとエイジがケンカを始めてしまった。



「あのう、もしもし?」


 と呼びかけたけど、完全に無視された。


 遅れて保健室にやって来たタカヒロは、何が起こってるのかわけがわからず、彼らを見守るしかなかった。


 エイジに言われて中学校を走り回り、自分の姉が急病だとごまかして、せっかく先生を連れてきたというのに。


 着いてみたら、マツリとエイジは大声で怒鳴り散らしケンカしている。


 おまけにその傍らには、姉と同級生らしいヤツがぼーっとして立ちすくんでいた。


 おそらく被害者だろう。


(今度は、何をやらかしたんだよ)


 タカヒロも頭を抱えたくなった。


 その肩を誰かが軽くたたいた。


 保健室まで一緒に来てもらった、若い女の先生だ。


「カンザキ君、君のお姉さん元気そうなんだけど、どういうことか説明してもらえるのかな?」


 ああ、優しそうな先生だと思ったのに。


 彼女のメガネの奥の瞳が、きらりと光った。


 もう、逃げられない。


 目の前が真っ暗になりそうな気がした。


なんとか保健室事件をクリヤできました。

コメディになってしまいましたけどね(^^;


読んでくださった皆様、ありがとうございました♪


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