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第7話:最強悪役令嬢のバラード ―私は悪役でいい。あなたが逃げないなら―

悪役令嬢、恋を知る。

講堂の喧騒が去ったあと。

私はひとり、回廊に立っていた。


役目は終わった。

悪役令嬢としての仕事も、たぶんこれで最後だ。


背後から足音がして、ラウレンツが現れる。

彼は、いつもの完璧な笑みをしていなかった。


「アデライード。君を傷つけた」


私は返事をしない。

言えば、泣いてしまいそうだったから。


「嫉妬させれば、君がこちらを見ると思った。……愚かだった」


ラウレンツは膝をついた。皇太子が。

それだけで、政治の重みが伝わる。


「君が“悪役”を演じるたび、私は安心していたんだ。君は強いから、耐えると思っていた。

でも違う。君は……誰より繊細で、誰より誇り高い」


私の喉が詰まる。

当てられた言葉が、痛いほど正しい。


「私は、君の賞賛が欲しいんじゃない。君の体温が欲しい」


その言葉で、胸の奥の鍵が少しだけ緩んだ。


……私は恋を知らない。

だけど、今のこの苦しさが、恋なら――私はもう逃げない。


「ラウレンツ。条件があります」


彼が顔を上げる。


「第一に。私を“悪役令嬢”と呼んだ噂を、あなたの口で終わらせてください」

「当然だ」

「第二に。政略ではなく、あなた自身の言葉で――私を選びなさい」


ラウレンツは迷わない。


「選ぶ。ずっと前から、君だけだ」


私は息を吐く。

涙が落ちそうになるのを、微笑で受け止める。


最後の一言は、いつもの防具ではなく――私の誓いとして。


「……悪辣? ええ、そうでしょう。あなたを守るなら、私は喜んで悪役になりますわ」


ラウレンツが笑った。

初めて見る、少年のような笑みだった。


そして私は知る。

“悪役令嬢のバラード”の結末は、物語に用意されたものじゃない。


私が選んだものだ。

完結までお読みいただきありがとうございました!

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