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第6話:腹黒ヒロインの正体 ―悪辣の一言で、世界をひっくり返す―

“可憐”は、凶器にもなる。

ミレイユは賢い。

賢いから、弱者の皮を被る。


泣けば守られ、怯えれば抱えられ、責められれば“悲恋”になる。

その構図を、彼女は学院で使い倒していた。


けれど、欲張りすぎた。


宝石庫の鍵が紛失した。

署名のない寄付金が抜き取られた。

そして“なぜか”その疑いは、私へ向いた。


――悪役令嬢なら、やりそう。

その程度の理由で。


私は証拠を積む。

派手な復讐はしない。筆頭公爵令嬢として、手続きと事実だけを積み上げる。


決定打は、ヨアヒムだった。

彼は“作戦”の尻拭いをするうちに気づいたのだ。


ミレイユは、皇太子の名を使って金を動かしていた。

署名の癖。印章の圧痕。筆跡の角度。


「殿下。これは……姫を悪役にして、自分が主役になるための犯罪です」


王宮付き監査官が呼ばれ、学院の講堂で確認がなされた。

ミレイユは泣き崩れ、叫んだ。


「違う! 私は愛されたかっただけ!」


その言葉に、観衆が揺れる。

――まだ“物語”を信じたい顔をしている。


私は一歩前に出た。

泣かない。怒らない。


ただ、終わらせる。


「愛されたいなら、正しく求めなさい。人の立場を盗むのは――」


私は息を吸う。

そして、短く落とした。


「……悪辣」


その一言で、空気が割れた。

物語が崩れ、現実が戻る。


私はミレイユを“晒し者”にはしない。

罰は法と契約が決める。私はただ、皇太子の未来と国の和平を守る。


――“悪役”として。


ラウレンツが私を見た。

その目には、後悔と、痛みと、それ以上のものがあった。

次話:皇太子が“本当の本音”を言います。悪役令嬢、最終決断へ。

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