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第2話:身分違い恋愛スキャンダル ―学院中が“悲恋”に酔い始めました―

恋は火事。噂は爆薬。

噂の足は、騎士より速い。


昼休みには「皇太子が平民を選んだ」になり、放課後には「公爵令嬢が妨害している」に変わっていた。


私は何もしていない。

していないのに、“していそう”が独り歩きする。


教室に入れば会話が止まり、廊下ですれ違えば小声が落ちる。

視線は刺さり、礼儀だけが残る。


「……アデライード様。お紅茶を……」


差し出される湯気の向こうで、侍女の指先が震えている。

私が恐ろしいのか。噂が恐ろしいのか。


そして、決定的だったのは――夕刻の舞踏練習。


ラウレンツが、ミレイユと踊った。

ただの“指導”だとしても、周囲は勝手に意味づける。


私は舞踏室の端で立っていた。婚約者として当然の立ち位置。

なのに、私は見物人にされている。


ラウレンツの視線が何度か私へ向く。

そのたびに、彼の足運びがほんのわずかに乱れる。


(焦っている?)


でも、それが“私のため”だと信じるほど、私は自惚れていない。

政略の婚約は、感情の保険が薄い。


舞踏が終わり、ミレイユが恥ずかしそうに笑うと――

周囲の令嬢たちは涙目で囁いた。


「純愛だわ……」

「身分違いって、尊い……」


……尊い?

誰の立場も、誰の未来も、尊いの一言で消費するの?


胸が痛む。

痛むのに、私は凛と立つしかない。


ラウレンツは舞踏室を出る前、私の前で立ち止まった。

一瞬、言葉を探している顔。だが次の瞬間、後ろからヨアヒムが耳打ちする。


「殿下。ここは“物語通り”に。姫は必ず反応します」


ヨアヒム――従者の目が、計算で光る。

ラウレンツは目を伏せ、そして私に向き直った。


「……アデライード。今は、見守ってほしい」


見守る。

それはつまり、私は何もしない“悪役”でいてくれ、という宣告だ。


私は微笑みを深くして、短く返す。


「……悪辣」


その瞬間、ラウレンツの喉が僅かに鳴った。

痛みを堪えるように。


……でも、私だって同じだ。

私は、声にならないものを飲み込んで、ただ“悪役”の席に座り続ける。

次話:悪役令嬢は、誰より先に自分を罰します。

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