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進め!魔法学園2  作者: 木こる
決死行
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首切姫

首切姫はまさしく妖刀であった。


寿命と引き換えに絶大な力をもたらす呪いの刀……

そんな危険な代物が、この世には実在したのだ。


資格無き者が触れればたちまち精神を蝕まれ、

誰に対するでもない怒り、

何に対するでもない悲しみ、

行き場の無い憎しみ、

恨み、僻み、嫉み、妬み、

猜疑心、恐怖心、閉塞感、罪悪感、孤独感……

ありとあらゆる負の感情が一斉に襲い掛かり、

その者の魂を破壊しようとするのである。


そして、その剣は人々の憎悪を糧としていた。

手にした者の悪感情を引き出して増幅させ、

斬られた者の怨念が更なる呪いの養分となり、

他者の命を奪う毎に新鮮な血への欲求が昂り、

際限無く込み上げる殺意に抗えなくなるのだ。



安土桃太郎には、

その人喰いの魔剣を手にする資格があった。


主に安土家の人間が保有する特別な因子が

代償に対する抵抗力を生み出し、

精神侵食の進行を遅らせることが可能になる。

だが耐性の強さには個人差があり、

安土の血統であっても魂を破壊された者は多い。


安土家以外の者がこの刀を手にしたという記録は

わずかながら存在するが、合戦中に病死したり、

発狂して自害、生きる気力を失って餓死など、

いずれも悲惨な最期を遂げている。




「今回の件は俺の油断が招いた失態だ

 犬飼、お前には悪いことをしたな

 すまなかった

 今後また同じ事故が起こらないように気をつける」


医務室で目を覚ました杏子は事の経緯を聞かされ、

ダンジョン内で気絶したのは安土が愛用している刀、

首切姫が原因だったのだと理解した。

だが、納得はできない。


「そんな危険な物……持ってちゃダメだよ

 ちょっと指先が触れただけでこの有様だし、

 それに、いくら耐性があるからって

 安土君も平気なわけないよ

 絶対につらいはずだよ……」


実際に妖刀に触れた者だからこそわかる。

思い出すだけで体の震えが止まらなくなる。

圧倒的な感情の暴力……狂気。

ひとたびその渦に飲み込まれてしまったら、

決して長くは生きられないであろうことを。


「安土君が人を遠ざけてる理由って、あれのせい?

 だったらやっぱり手放すべきだよ!

 今のままじゃ一生友達なんて出来っこないよ!

 あんな恐ろしい力に頼らなくたって、

 安土君なら充分やっていけるはずでしょ!?

 だって安土君は普通に強いもん!!」


と、力説する杏子だったが……


「……そこまでだ

 俺の心配なんかしなくていい

 代償があるのを承知で手にした力だ

 たかがお友達欲しさに手放すつもりはない

 人を遠ざける、だと? 勘違いするなよ

 利用価値の無い奴とは関わらないだけだ」


本人の口から聞いてしまった。

『利用価値』という言葉を。

それはいい。

自分は価値のある人間だと認められているのだから。

だが釈然としない。


亀山千歳の存在が。


彼女は安土桃太郎を嫌っている側の人間であるが、

結局はパーティーメンバーとして同行しているし、

どうも彼の性格を深く理解している節がある。

顔合わせした時にも少し違和感があった。

安土の口数が若干多かったような気がするし、

彼女のことを少し褒めていたような覚えがある。


これは……確かめる必要がありそうだ。






後日、渡り廊下にて。


「え、私が安土君の元カノかって?

 あんなのとつきあうだなんて冗談じゃない

 あいつとは通ってた中学が一緒ってだけで、

 この学園で再会したのは全くの偶然よ偶然」


「そっ、そうなんだ……!」


杏子の疑念はあっさりと晴れた。


「昔からずっとあんな性格だったからねぇ

 あの、自分が世界の中心みたいな態度……

 そりゃ友達も彼女も出来るはずないわ」


「あはは、ちょっとわかるかも……」


「そういえば、あいつに振られた女子たちが

 逆恨みして面白いあだ名を付けてたんだけど

 ……なんて言ったかしら?」


「いや、私に聞かれても」


なんにせよ、亀山は安土の元カノではなかった。

友情にヒビが入るような展開にはならずに済み、

杏子は大きな胸を撫で下ろすのだった。




また後日、渡り廊下にて。

杏子は念のため猪瀬にも確認を行なっていた。


「え、ウチがパーティーにいる理由?

 安土君から聞いて……るわけないか

 まあ、ぶっちゃけノリかな〜」


「ノリ!?」


「安土君は防御役(タンク)に適任な人材を探してたんやけど、

 でもほら、元々志願する人が少ない役割やし、

 男子からはメッチャ嫌われてるわで

 ガタイのいいメンバーを確保できなかったんよ

 そんで、ダメ元で女子ん中で一番タッパのある

 ウチに目ぇつけたみたいでな、

 まあウチも暇やったし、ええよ〜って感じで」


「そうなんだ……って、

 ブタちゃん、それどこの訛り?

 一人称は『ウチ』のままだけど、

 今までそんな喋り方じゃなかったはず……」


「んー、どこだろね?

 たぶん関西あたりっしょ

 なんとなく頭ん中に浮かんできたから、つい」


猪瀬牡丹はたまに謎の遊びを突然やり始める。

そして彼女の真似をする者が何人か現れては、

女子の間でちょっとした流行が広まるのだ。


ちなみに今回のエセ関西弁ブームは1週間で終わった。

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