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進め!魔法学園2  作者: 木こる
未来を切り拓く意志
60/60

揺らぎ

まーたーぜーんーめーつーしーまーしーたー。


私の人生ってなんだろう。

毎度毎度4分33秒だけの自由時間を与えられ、

本当に自由に振る舞うと誰しもがドン引きする。

その冷たい視線に耐えながら酒を呑むだけの人生。


コンビニの向かいにラーメン屋があっても、

注文してからメニューが届くまでに時間切れ。

酒屋には当然コンビニより上等な酒があるけれど、

そこの店員にはあらゆる小技が通用しない。

宝石屋なんかに行っても意味が無い。

服屋も興味無し。私にとって服は脱ぐ物なのだ。


まあそんなわけでコンビニしかないんですよ。

残された時間で好きなように飲み食いできるのは、

この場所以外にはあり得ないのですよ。

なので私は車を降りた時点でおっぱいボロンし、

店内を早歩きして目的のブツをササッと購入します。


ビール、テキーラ、ウイスキー。

今回はこれでいきましょう。




私は前々から少し気になっていたことを尋ねました。

豊満な生乳をレジのカウンターに乗せながらです。

店員Bはその光景をガン見しています。

店員Aはいつものようになんか喚いていますが、

ただの雑音だと思ってやり過ごしましょう。


「ところでバイト君さあ、いい靴履いてんね?」


「あ、はい!

 ありがとうございます!」


「どこで買ったの?」


「ネットオークションですね〜」


「ふーん、いくら?」


「大体330万円ってとこですね〜」


「ブッ……ふぇえええ!?」


私は思わずビールを噴き出しちゃいました。

こんな漫画みたいな驚き方をしたのは初めてです。

バイト君にちょっとかかってしまいましたが、

彼は私の生乳に釘付けだったので結果オーライです。


「そりゃまた随分と思い切った買い物したねぇ……

 コンビニの給料で生活できんの?」


随分と失礼な質問ですが、

どうせこの世界はリセットされるので大丈夫です。


「ああ、全然余裕ですよ

 俺、結構貯金あるんで」


「ふーん、いくら?」


「いや〜、それはちょっと言えませんね〜」


まあ答えんわな。


「ところで、もしあと1分で世界が終わるとしたら、

 バイト君だったら何したい?」


「あなたの胸を揉みたいです」


「他には?」


「とりあえず俺もビールですかね

 ああ、あとそこのうるさい店長をしばき倒したい

 ……まあ今パッと思いつくのはそれくらいです」


「実はね、本当に終わるんだよ

 この世界は何度もループしてるの

 私の別人格がそうゆう魔法使っちゃってねぇ

 もう誰にも止められ……はい残り30秒!!」


するとバイト君は私のウイスキーを奪い、

グビグビとラッパ飲みしたのです。



……え、マジかこいつ?



「あ、すいませんねお客さん

 今からお酒コーナー行っても間に合わないんで、

 お客さんのを飲ませてもらいました

 ()()俺の分のビールも持ってきてくださいよ」



え、何?

ちょ……信じたの今の話!?



「こ、こらーーー!!

 何やってんだお前ぇ!!

 仕事中に酒飲むとかあり得ないだろ!!」


「いやいや、こんな時に何言ってんですか店長

 今の話を聞いてなかったんですか?

 もうすぐ世界が終わっちゃうんですよ?

 仕事なんかしてる場合じゃないでしょうよ」



信じたーーー!!



「お前はクビだーーー!!

 本部に報告してやるからなーーー!!」


「ええ、どうぞどうぞ

 ちなみにもし世界が終わらなかったとしても、

 俺、あんたより貯金あるんで」



ちょっ……本当に何この人?

主人公?まさかこの人がそうなの?

今までモブ扱いしてごめんなさい。



「お客さん!!

 あと何秒!?」


「えっ!?

 あ、あっ、あと7秒!!」


「うっし!!」


店長の頬にいいフックが入りました。

これでバイト君の“世界が終わる前にやりたいこと”が

2つ達成され、残りは“胸を揉む”だけとなりました。


何を血迷うことがありましょうか。

私は彼に駆け寄り、儚い夢を叶えてやりました。






──2周目。私は犬飼杏子の中で息を潜めながら、

あのロックなバイト君のことばかり考えていました。

だってそりゃもう考えるしかないでしょう。

このモモさん突撃ルートに運命が固定されて以来、

あんなにも心を揺さぶられたのは初めてですから。


私は本体の趣味に引っ張られてイケメンが好きです。

そして残念ながら、件のバイト君はブサメンです。

が、しかし。

なんかもうそんなことはどうでもいいんです。

男は顔じゃない……ハートだ!!

と、このお馬鹿な本体に教えてやりたいですね。


そんなこんなで自我が芽生えてからの長い期間、

彼のことを想いながらじっと耐え続けました。


そして……




やって参りました!!

7月31日!!

仲間が全滅した後のボーナスタイム!!


……なんて言い方は、かなり不謹慎ですね。

亡くなってしまった彼らの冥福をお祈りします。


さておき、ここからは1秒も無駄にはできません。

車を降りたらビール買う。車を降りたらビール買う。

まずはそのミッションに集中しましょう。

とりあえずコンビニ到着まであと1分ありますが、

この時点で胸パスの準備はしておきます。


「あら、犬飼さん

 もしかして息が苦しいの? 窓開ける?」


アスカ隊長の優しさが心に沁みますね。


「って、脱ぎすぎィ!!

 ボタン全部外れてる!!」


ここで前の席に座ってる2人が振り向きます。

ですが運転は続行されるので問題ありません。


「こら金子こっち見んな!!

 先生まで何やってんですか!!

 運転に集中しなさい!!

 このエロ男子共め!!」


するとエロ男子共は前方に向き直り、

バックミラーをガン見するようになります。

それでも事故が起きたりはしないのでセーフです。


「先生!!

 トイレに行きたいです!!

 漏れそうなんで早めにお願いします!!」


私はそう言いながらブラジャーを外します。

すると金子先輩は再び振り向き、ガン見してきます。


「君は一体何を漏らそうとしているんだ!?」


「こら金子どこ見てる!!

 前見ろ前!!」


「僕にはそれを見定める義務がある!!」


「ねえよ!!」


いやあ、若さっていいですね。




そして……車を降りたらビール買う!

先生が少し急いでくれたおかげで、

入店時の残り時間は3分10秒となりました。

ここから最速の早歩きでビール6缶ケースを取り、

胸パスを完了して残りはジャスト2分30秒です。


「もうすぐ世界が終わる!!

 何度もループしてる!!

 私の別人格がその魔法を使った!!

 私が自由に動けるのは4分33秒!!

 残り2分20秒!!

 これは君のビール!!

 名前教えて!!」


するとバイト君はプシュッと缶を開け、

提供されたビールをゴクゴクと飲み干すのでした。


中崎(なかさき)時雨(しぐれ)!!

 今は何周目!?」


「わかんない!!

 でも確実に数千周以上!!

 これを終わらせる方法知ってたら教えて!!」


「君以外に記憶を持ち越してる人はいる!?」


「たぶんいない!!

 ちなみに私の別人格は覚えてない!!」


「全く同じ内容のループ!?」


「そう!!

 あ、違う!!

 途中から君のスニーカーが革靴になった!!

 他にもすれ違う車が変わったりもした!!」


「それならループを抜け出せる!!

 世界は確実に未来へ進んでる!!」


「どゆこと!?」


「“バタフライ効果”と“無限の猿定理”で検索だ!!」


「もうそんな時間無いよ!!」


「ある!!

 その4分33秒を有効に使うんだ!!

 10回繰り返せば45分30秒になる!!

 ざっくりと理解するには充分な時間だ!!

 それが終わったらまたビール持ってきて!!

 スーパードライじゃなくて一番搾り生で!!」


「わかった!!

 残り1分!!

 なんでこんな話信じられんの!?」


「SFモノが好きだから!!」


「貯金いくらあんの!?」


「13億!!」


「どうやって稼いだの!?

 それとも親の資産!?」


「ネトゲのアイテムを売った金!!」


「なんでこんな所でバイトしてんの!?」


「社会復帰のリハビリみたいなもん!!」


「彼女いる!?」


「いない!!」


「残り30秒!!

 好きな女性のタイプは!?」


「ロリ巨乳!!」


「童貞!?」


「童貞!!」


「年齢は!?」


「35歳!!」


「趣味は!?」


「アニメとゲーム!!」


「電車は!?」


「興味無い!!」


「千年童話知ってる!?」


「“百鬼夜行”は神曲!!」


「残り10秒!!

 おっぱい揉んどく!?」


「揉んどく!!」


10秒後、世界はリセットされました。




いやあ……大収穫でしたね。

なんか彼の個人情報ばっかり質問しちゃいましたが、

どうせ私のことを教えても彼は忘れてしまうので、

それならこちらに情報を蓄積させた方がいいんです。

きっと彼もそれをわかっていたはずです。


それにしても嬉しいですね。

普通、『世界が終わる!!』なんて聞かされたら、

何言ってんだこいつ……って反応になりますよね?

なのに彼はすんなり信じてくれました。

信じたというか、疑わないのがすごいです。


彼は『ループを抜け出せる』と力強く断言して、

しかも攻略のヒントまで教えてくれました。

次回からしっかり勉強していきましょう。



“なんとか効果”と“なんとかの定理”について。



…………。



次回もコンビニ行ってきます。






──それから私は攻略のヒントを再入手し、

30周ほどを車内でスマホ学習のターンに費やし、

よくわからなかったので彼に教えてもらいました。


まず“バタフライ効果”についてですが、

私が“ドミノ倒し効果”と勝手に名付けてたアレです。

小さな出来事が周囲に影響を与えて連鎖してゆき、

やがて大きな変化を生み出す……みたいなやつです。


次に“無限の猿定理”についてですが、

まあ『確率が0でない限り、それは必ず起こる』

というようなことを彼は伝えたかったんだそうです。

ここに猿がいるとします。

猿はタイプライターでランダムに文字を打ちます。

制限時間はありません。猿は文字を打ち続けます。

するとランダムに打ち込まれた文字列の中に、

名作文学とまるっきり同じ文章が含まれています。

んな馬鹿な、と思うかもしれませんが、

“無限”の存在を認めると必ずそうなるんだそうです。



ざっくりまとめると、

『全く同じ内容の繰り返しでなければ

 何かしらの揺らぎが連鎖反応を起こし、

 世界がリセットされない運命に辿り着く』

という確率が存在することになります。

そして、

『確率が0でない限り、それは必ず起こる』です。


無限ループの攻略法とは即ち、

無限ループを繰り返すことにありました。



『その時が来るのを待て』──それが答えです。



はい、今までとやることは変わりません。

ですが、これからは違います。

この永遠にも思える無益な時間の繰り返しにも、

必ず終わりがあるということがわかったのです。

それに、もう私は1人じゃありません。

最高の飲み仲間が出来ました。

これからは彼と一緒に世界の終わりを待つとします。

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