表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
進め!魔法学園2  作者: 木こる
未来を切り拓く意志
59/60

青春安土桃太郎

はい、アホブタが真っ二つになりました。

そして私の本体は気絶し、目が覚めたら私の番です。






──友達って大事ですよね。

こうして私が何度も時間を巻き戻してるのも、

目の前で親友が殺されて絶望するからなんです。

もし死んだのがどうでもいい相手だったら、

こんな無益なループを繰り返さなかったでしょう。


友達……友達ねえ。


猪瀬牡丹はいずれ犬飼杏子を裏切る女なんですが、

それを知ってるのは私だけというのがなんとも……。

まあ彼女が裏切るかどうかはルート次第なんで、

今のところはかえがえのない親友でいいでしょう。



さて、今回のテーマは“友情”です。


99%以上のルートで我らが安土桃太郎は

“友達いらない宣言”をしてるんですが、

極稀に友情の尊さに目覚めるパターンがあります。

それも私たちと出会う以前に覚醒済みであり、

彼は明るい人生を歩んでこれたのだと思うと、

なんだか心が温かくなってきますね。


度が過ぎなければ、の話ですが。



「さあ、隼斗君!

 僕たちと一緒に冒険の旅へ出かけよう!」


「いや、俺のことは放っといてくれ」


「そんなこと言わずに、ほら!

 君が魔法を使えなくても大丈夫さ!

 魔物は全部僕たちが倒すから安心してくれ!」


「いや、それじゃあ困るんだよ

 俺が成長する機会を奪わないでくれ

 ……というか暑苦しいから近づかないでほしい」


「そうか、残念だよ……

 じゃあ明日また誘うからね!

 いい返事を期待してるよ!」


「勘弁してくれ……」



とまあ、このルートの彼はとてもウザかったです。

友達100人出来るかなチャレンジは既に達成済みで、

今は友達1000人作るのを目標に頑張っているそうな。

目をつけられてしまった大上君には同情します。


なぜ大上君が選ばれてしまったのかというと……

“自分より弱い存在を守らないといけない”という、

まっすぐな使命感に燃えていたからでしょうね。

まあ要は大上君を見下してるんですよ、こいつは。


たしかに大上君は魔法を使えないので、

格下に見られても仕方ないことなのかもしれません。

しかし、しかしですよ?

別ルートの話になりますが、大上君は1年目の時点で

アロエ先輩との一騎討ちに勝利しています。

それに前回お話しした通り、大上君は2年目の時点で

安土桃太郎と喧嘩して、やはり勝利しています。


大上隼斗は本当に弱いんでしょうかね?




……話が逸れてしまいました。

安土桃太郎のウザエピソードに戻りましょう。



学園ダンジョン第2層での出来事です。

パーティーはコボルトの群れと遭遇しました。


「敵がいたぞ!

 剣君! 豪君!

 準備はいいかい!?」


「おっしゃあ!!」

「いつでも行けるぜ」


「それじゃあ戦闘開始だ!

 僕たちの友情パワーを見せつけてやろう!」


「おうよ!!」

「あ、ああ……」


と、ノリノリの2人+そうじゃない1人でしたが……


「うわあっ!!

 この敵、強いぞ!!」


「大丈夫か、安土?

 こっち片付くまでやられんなよ〜」

「つうか安土……

 お前、装備が重すぎなんだよ

 これでわかっただろ?

 そんなデカい剣、振り回せるわけねえって」


指摘された通り、彼はデカい剣を持ってました。

それは剣というよりも巨大な鉄板であり、

刃の部分だけで彼を覆い隠せるサイズです。

実際それはその用途で製作されたアイテムであり、

武器ではなく防具に分類される装備品でした。


王の剣・秩父防衛戦記念ver──設置式の盾です。


「くっ……!!

 剣君! 豪君!

 ここは僕に任せて、早く逃げるんだ!!

 どうか君たちは生き延びてくれ!!

 そして、みんなにはこう伝えてほしい!!

 僕は勇敢に戦った末に散ったのだ、と……!!

 僕はみんなと出会えて幸せだった、と……!!」


「あ、安土ぃーーー!!」

「随分と余裕のある最期の台詞じゃねえか……

 おい鳩中、遊んでないでさっさと終わらせてやれ」

「んだな」


鳩中剣のダッシュ斬りが決まり、

安土桃太郎を苦しめていたコボルト1匹を処理完了。

猿渡豪はフウっと一息吐き、帰り支度を始めます。


「あ、ありがとう剣君!

 もう少しでやられてしまうところだったよ……

 さて、次こそはちゃんとやるぞ!

 それじゃあ気を取り直していこう、2人とも!」


「んっ……

 いや〜、もう帰ろうぜぇ?

 今日は念願の第2層まで来れたんだし、

 1戦だけとはいえリーダーを任せられたんだし、

 いい経験ができただろ?」


「えっ、いやいや……

 まだ来たばかりじゃないか!

 僕たちの戦いはこれからだ!」


「あのな、安土

 俺も鳩中も帰りたがってる

 なんでかっつうとな……お前が弱すぎるからだ

 自力でコボルト1匹どうにかできない奴を連れて

 この先に進むのはあまりにも危険すぎるからな」


そう、このルートの彼は弱かったんです。

弱い癖に妙に見栄っ張りな性格をしており、

文字通り身の丈に合わない武器(?)を持ち込んでは

パーティーメンバーを困らせてばかりいました。

なんというか、形から入るタイプだったんですね。


なんでそんなにも弱かったのかというと……

まあ、幸せな人生を送ってきたからでしょう。

彼にはハングリー精神が足りなかったんです。




1学期の期末テストが終わりました。


「う〜ん、全教科赤点かあ

 でも難しい問題ばっかだったし、

 みんなこんなもんだよねえ

 ……隼斗君は何教科赤点だった?」


「ゼロだ」


「あっはっはっ!!

 僕も0点取っちゃったよ!!

 ……じゃなくて、赤点取った教科の数」


「だから、1つも無いと言っているだろう

 俺が赤点を取った前提で話を進めないでくれ

 むしろ全教科満点だ、これで理解したか?」


「まっ、まま、満点……!?

 えええ、すごいな君は!!

 て、天才じゃないか!!

 僕の友達がこんなに天才だったなんて……!!」


大上君は心底嫌そうな顔をしていました。

その気持ちはわかりますとも、ええ。


「あのな、安土……

 俺はお前の友達じゃないし、天才でもない

 ただ努力しただけの男だ

 なんの努力もしていないお前と一緒にするな」


貧弱ウザ太郎はポカーンと口を開けたまま固まり、

ハッと我に返って言い返します。


「ぼっ、僕だって努力はしてる!!

 まだ結果が出てないだけさ!!」


「努力した結果が0点なんだろ?

 それは努力の方向性を完全に間違えたという証明だ

 つまり目標を達成するための行動を何もしていない

 ゆえに『なんの努力もしていない』なんだ」


「僕は毎日走ってるんだ!!

 それに筋トレもしてる!!」


「おい、勉強の話をしていたんじゃないのか?

 ……まあいい、乗ってやる

 まさかその毎日走ったり筋トレしたりってのは、

 戦闘訓練の時間に全員こなしてるノルマのことか?

 お前はいつも開始早々にギブアップして、

 残り時間をスマホいじりながら過ごしてるアレだ」


「それはそう……だけど、

 疲れちゃうんだからしょうがないじゃないか!!

 僕もいつかはちゃんとこなそうとは思ってる!!

 でも今はできない、それだけさ!!」


「甘ったれるな」


そう言い残し、大上君は自主訓練に向かいました。

どのルートでも全然ブレないですねえ、この人は。




7月20日は鳩中剣の誕生日です。

彼の友人たちはそのめでたい日を祝おうと、

食堂の真ん中に彼を座らせてワイワイやってました。

その現場を遠巻きに見ていた安土桃太郎は、

自分も仲間に入ろうと強引に割り込んできました。


「ハッピーバースデー、剣君!

 なんだよも〜、教えてくれればよかったのに!

 今日が誕生日だったなんて知らなかったよ!」


「お、おう

 あんがとな安土!」


「プレゼントは用意してないけど、

 僕も一緒に混ざってもいいかな?

 友達のめでたい日を祝福してあげたいんだ!」


「えっ?

 いや、どうかな〜ハハハ

 その気持ちだけで充分だぜ!」


「……もしかして、嫌なのかい?

 最近は一緒に冒険の旅に出てないし、

 まさか僕のことを避けてるんじゃ……」


「え、いや、えっとだな……

 みんなはどう思う!?

 はい、カッキー! 答えて!」


カッキーなる女子にキラーパス。

私はその子のことをあまり知りませんが、

きっとこう思ったはずです。

ふざけんな鳩中マジでふざけんな、と。


「ちょ、えぇぇ……

 ま、まあいいんじゃないかしら?

 ほら、今は5人だけど、これが6人になったら

 ケーキを切り分けやすくなるはず……でしょ?」


「おお、さすがはカッキー!

 取り分は減っちまうが、労力も減るもんな!

 コストカッターの二つ名は伊達じゃねえぜ!」


彼女の立ち位置は支援役(サポート)なんでしょうか?

まあどうでもいいことですけど。



しばらくしてケーキが運ばれてきました。

前日に友人たちで協力して作り、

食堂の冷蔵庫に保存した物なんだそうです。

彼らの仲の良さがよく伝わって、

なんだかほっこりした気分になりますね。


「おおお……すんげえ豪華じゃん!!

 普通のショートケーキが出てくるかと思いきや、

 フルーツぎっしりで超美味そうなんだけど!!

 お前ら、マジで感謝するぜ!!」


出てきたのは特大のフルーツケーキ。

鳩中パーティー(※リーダーは猿渡豪)には

高梨りんご、柿沼美和子というのが所属してまして、

名前の中に梨、りんご、柿の果実が含まれており、

“美和子”も“びわこ”と読めるのでビワも採用し、

更に高梨りんごの双子の片割れの名前は“いちご”……

ということで、そういうケーキにしたのでしょう。

ちなみに高梨いちごはこの場にいません。


そんなバラ科のフルーツぎっしりのケーキを、

安土桃太郎は美味しそうに食べました。


安土桃太郎はバラ科アレルギーです。


安土桃太郎は死にました。




……その、不謹慎なのはわかってますが、

今の私にとっては笑い話なんですよねこれ。

もちろん当時の犬飼杏子は目の前で人が死んだことに

強いショックを覚えてトラウマを抱えたわけですが、

何千回とループを繰り返してる私にとっては……ね。

我ながら性格悪くなったなあとは思っております。


なんにせよ柿沼美和子はいい仕事をしてくれました。

さすが、コストカッターの二つ名は伊達じゃない!



余談ですが、このルートの彼はモテませんでした。

顔の良さはそのままなので第一印象は良いのですが、

弱いし、頭悪いし、嘘つきなので嫌われていました。

イケメンならなんでも許されるわけではありません。


友達100人作ったという、あの話は嘘でした。

彼の私用スマホには確かに100人以上の名前が

友人リストに登録されてあったそうですが、

全て架空人物であり、電話番号もデタラメでした。

まあ友達を()()()ことには違いありませんが。


よっぽど友達が欲しかったんでしょうね。

でも努力の方向性を完全に間違えてしまい、

友達だと思ってる人物から差し出されたアレルゲンを

断らずに食べるという愚かな選択をしたのでしょう。


やっぱり幸せな人生歩んでないな、こいつ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ