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進め!魔法学園2  作者: 木こる
屍山血河
40/62

もしも時間を戻せたら

昼休みの食堂にて、神楽はどんぶりを抱えながら

空いている席がないかと見渡した。

すると、よく見知った顔が視界に入ったので

自然と足がその場所へと向かう。

道中の生徒たちは即座に神楽から目を背けたが、

目標地点に座る女子はこちらに気づくと箸を置き、

軽く手招きしてから食事を再開する。

見れば彼女はカツ丼を注文したようだが、

それにソースをかけるなんてとんでもない。

まったく変わった友人を持ってしまったものだ。


「ねえサクラ

 もし時間を戻せる能力があったら、

 あんただったら何するー?」


「なんだそりゃ、思考実験かぁ?」


「え、何

 しこうじっけん……?」


「おいおい、自分から難問吹っ掛けといて

 その反応はないだろーよ

 でもまあこれがお前だよな、うん」


「難問ってほどかしらね?

 よくある妄想トークのつもりで振ったんだけど」


サクラはわざとらしく人差し指を立て、

「チッ、チッ」と否定する。


「時間がテーマなんだろ?

 それって量子物理学とかの領域じゃん、たぶん

 ほらあれだよ、あれ

 タイムパラドックスって聞いたことあるか?」


「ちょ、いやいやいや……

 あたしだってそれくらい聞いたことはあるけど、

 本当にそういう学術的な問いじゃなくて……」


「……ぶはははは!!

 やっぱそうだよなあ!?

 オイラにゃ最初からわかってたよ

 お前がそこまで考えてないことくらい」


「なんなのよ、もう……」


まったく変わった友人である。




「──んで、時間を戻せたらどうするかだったな?

 とりあえず暇だし、つき合ってやるよ

 その能力に制限みたいなもんはあるのか?

 例えば戻せる時間はキッカリ6秒とか、

 1日1回しか使えないとか、

 能力の代償として指を折らなくちゃいけないとか」


「いや、だからそこまで考えてないってば

 てか最後の物騒な条件は何よ……

 まあとりあえず戻せる範囲は3日までと仮定して

 MPさえ足りてれば何度でも使えるし、

 指は折らなくてもよいものとするわ」


「じゃあ、もしMPが足りない場合でも

 指を折れば使えるって条件を追加してもいいか?」


「なんでそこにこだわるの!?

 ……んじゃまあ、指折りルールも追加で」


「時間を戻したら折れた指は元通りになるよな?

 つまり実質ノーコストで使い放題になるが、

 それだとさすがに反則すぎるか……」


(どうしよう、話が進まない……)


「その能力は世界線を移動するタイプか?

 それとも全ての事象がリセットされるタイプか?」


「え、ちょ……世界線?

 それは量子なんちゃらの学術的な専門用語?

 いい加減にしないと怒るわよ

 ……ってか、この話題やめよっか?

 今日の天気について語り合う方がまだマシかもね」


「おっと、悪りい悪りい

 今の質問は結構マジだったんだが、

 たしかに少し難しい単語に聞こえたよな

 まあ忘れてくれ

 タイムトラベルの話を続けようぜ」




「──当然、記憶の持ち越しはセットだよな?

 せっかく思い通りに時間を戻せたとしても、

 ()()()が無かったら意味無いもんな」


「そりゃもちろん

 と言いたいとこだけど、制限を加えましょうか

 断片的な記憶しか持ち越せない……てのはどう?」


「断片的かあ

 それだと難易度が一気に跳ね上がるぞ

 ちなみにその記憶は自分で選べんのか?

 それとも何か重大なイベントが起きる前に

 突然フラッシュバックする設定にしとくか?」


「う〜ん……

 どっちかというと前者が近いかしらね

 能力1回につき過去に持っていけるお土産は1つ、

 制限時間は30秒の設定でいきましょう」


「指を折ればプラス30秒、も追加で」


「OK

 その場合、折れた指は元通りにならない」


「うぇぇ〜、それは怖えーよ!!

 じゃあ15秒減らしていいから指は治る設定で!!」


「OK

 基本30秒、最大45秒で手を打ちましょう

 ……ああそうそう、

 未来の記憶は頭の中にあるんじゃなくて

 特定の物に保存する方式なんてどうかしら?」


「物に?

 んんん〜〜〜未来の記憶ぅ〜〜〜???

 ……えっと、つまりサイコメトリーもありか?

 なんだかややこしくなるな」


「え、あんたサイコメトリー知ってんの?

 もしかして結構有名な能力だったりする?」


「そういう漫画読んだことあるし、まあ有名だろ

 しかし過去を読み取る能力で未来をねえ……

 ちょっと整理するから待っててくれ」




「──よし、こうしようぜ

 ・時間を戻せる能力者

 ・記憶を保存できる能力者

 ・過去を読み取れる能力者

 ・自分の指を折る奴

 この4人は分けて考えるべきだと思う

 そうしないと不公平だかんな

 超能力は1人につき1つまでのルールだ」


「OK

 バランスは大事よね」


「次に、なんで時間を戻すのかって理由が必要だな

 オイラの知ってるアニメでは、

 “大事な人を救うために主人公が奔走する”

 ってパターンが多いな」


「それよそれ

 仲間たちの死を回避するために頑張る感じ

 主人公はサイコメトリー能力者ね」


「えっ、指を折る奴が主人公だろ?」


「なんでよ!?」


「だって一番きつい役割だしなぁ

 やり直しのコストを免除するにしろ、

 未来の情報をより多く収集するにしろ、

 全部こいつの覚悟に懸かってるんだぜ?

 いくら運命を変える可能性を高めるためでも、

 自分で自分の指を折るだなんて普通できねーよ」


「ふむ、言われてみればたしかに……

 精神がタフじゃないと主人公は務まらない、と

 じゃあ主人公はそいつで」


「サイコメトラーは最大の協力者ポジションが適任だ

 まあ、ヒロインにしとくのが妥当だろうな」


「なっ……!

 ヒロイン……ヒロインねぇ

 まあいいわ、これで主役2人が決まったわね

 当然ラスボスは時間を戻す奴として……」


「おいおい、仲間たちの死を回避するために

 味方陣営の誰かが時間を戻すんだろー?

 そいつは普段おちゃらけた性格なんだけど、

 いざという時はなけなしの勇気を振り絞ってだな」


「いやいや、主役2人も含めて皆殺しにされんのよ

 死んでからじゃ時間を戻せないでしょー?

 過去の主人公に希望を託す役割なら、

 記憶を保存できる能力者が適任だと思わない?」


「ほうほう、それはそれで……

 時間跳躍とサイコメトリーって案外、

 相性のいい組み合わせなのかもな

 結構やるじゃん、お前」


「ふふん、どーよっ」




「──ところで神楽よ」


「うん?」


「ラーメン伸びてんぞ」


「ラーメ…………んんんっ!!」


神楽のどんぶりの中では、小麦粉で出来たそれが

30分かけてたっぷりと水分を吸収したことにより

限界まで膨れ上がっていた。そして汁はもう無い。

まあ完全に食べられなくなったわけではないし、

食べ物を無駄にはしたくないので残さずに食べるが。


神楽はサクラとの会話に白熱するあまり、

この場所へ何をしに来たのか忘れてしまったのだ。

食堂は楽しく食事をするためにある空間だ。

その目的を果たせず、なんとも歯痒い気分である。


いや、妄想トークはそれなりに盛り上がったし、

食事なら目の前に手つかずで置いてある。

ただそれが同時に行われなかっただけのことだ。

マルチタスカーたる者にあるまじき失敗である。

もしも時間を戻せたら、今日は1人で食事しよう。


「神楽、食うの手伝ってやろうか?

 オイラの胃袋ならまだ余裕あるぜ」


「んじゃよろしく!!

 あたし1人じゃ昼休みが終わってしまう〜〜〜!!」


「じゃあ卵もらうぞ」


「いや、麺を食べてほしいんだけど

 ……まあいいわ

 手伝ってもらえるだけでもありがたいし」


それを最後まで言わせる前に、

サクラは既に神楽のどんぶりの中から

卵を奪い取ってケチャップをかけていた。


……ケチャップ?


ああ、卵料理……例えばオムレツには欠かせない。

卵とケチャップは切っても切れない関係にある。

しかし、試す気にはなれない。

その卵はラーメンのスープに浸かっていたのだ。

合う……のか?


そうだ、トマトラーメンとかいうのがあったはず。

案外アリな組み合わせなのかもしれない。

いつか試してみるのも悪くない。

気が向いたら、であるが……。


「ところでサクラ

 こんだけ長話した後になんだけどさ、

 最初の質問に答えてもらってないよね?

 もし時間を戻せたら何する?

 使用条件とかごちゃごちゃしたのは無しで、

 過去でやってみたいことってなんかある?」


「宝くじ買うね」


なんとも俗な回答である。

それっぽい専門用語を度々ほざいておきながら、

結局はカネときた。

でもまあ、これがサクラだ。

まったく変わった友人を持ってしまったものだ。

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