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進め!魔法学園2  作者: 木こる
屍山血河
27/33

染みついた殺意

「え?

 何これ……

 ちょっとあんた!!

 あたしに何したのよ!?」


何も無い空間の中で、神楽の思念体が叫ぶ。

だがこの場所には音すら存在しないので、

当然その叫びは声にはなっていなかった。

しかし、それでも彼女の声は通じていた。

もう1つの思念体、安土桃太郎の意識には届いていた。


「俺は何もしてない……

 魔力の波長が違う、そっちだ

 妙な現象に巻き込みやがって……」


「はああっ!?

 なんであたしなのよ!!」


「お前は鬼島家の一族だろ?

 特殊な力を持つ家系だと聞いたことがある

 記録によれば、他人の過去を覗き見るという

 悪趣味な能力を使う者が中には存在したそうだな

 この現象もおそらくそれに属するものだろう」


「え……はあ!?

 何その面白そうな能力!!

 ……って、いや、ちょっと待って?

 なんでそんなこと知ってんのよ!?

 あんた、もしかしてあたしのストーカー!?」


「なんでそうなる……

 関東魔法学園に通ってる生徒の大半は、

 将来有望な血筋だと判明してる奴らだろうが

 その中でも特に期待値が高いグループの中に

 お前の名前も入ってるんだよ

 自分の生徒情報を確認してないのか?」


「え、生徒情報……?」


「本当に上級生かよ……」


そんなやり取りを行なっていると、

空間に変化が起こり始める。


それまで真っ暗闇だったその場所に

横型の長方形を象った図形がぼんやりと出現し、

それが徐々に淡い光を帯びてゆくではないか。

その大きさや距離感、静かな緊張感が与える印象は

まるで上映前の映画館そのものだった。


「なになに?

 一体何が始まるわけ?

 もしかして、あんたの恥ずかしい秘密とかが

 赤裸々に明かされちゃうのかしら!?」


「やめろ……

 もし制御できそうなら今すぐに上映を中止しろ

 というか頑張って制御しろ

 これは夢や幻なんかじゃなくて、

 今俺たちが実際に体験してる現実だ

 魔力が暴走してるんだよ……意味はわかるよな?」


「は? 魔力が暴走?

 それってなんかまずいの?」


「お前は本当に……いや、説明は後回しだ

 最悪の場合、両方死ぬことになる

 それだけ伝われば充分だろ」


「ちょ、死ぬなんて嫌よ!!

 あたし何すればいい!?

 どうやったら制御できんの!?」


「俺が知るか

 とにかく精神統一するしかない

 全ての魔法の基本だからな

 一応、俺はもう試してる

 あとはお前次第だ」


「ぐぬぬ、精神統一……って、

 あんたさっきから『お前』呼ばわりしてるけど、

 あたしこれでも上級生なんですけどねえ!?

 すんごく生意気なんじゃありませんかねえ!?」


「心を乱すな、死ぬぞ」


「はい」


神楽は最大限集中し、魔力の制御に努めた。




だが2人の抵抗も虚しく、

上映会は始まってしまったのだ。

スクリーンの中央には人影らしき輪郭が映し出され、

それは背景と共に段々と色を付けてゆき、

画像がハッキリするにつれて音響も機能を果たす。


そして画面中央に映し出された人影の正体は、

やはり人間であった。


その男は、黒薔薇の装飾が施された刀を構えていた。

着物に散りばめられた金銀宝石で月光を照り返し、

口元で刀を横に寝かせた立ち姿が実に雅である。


「ぶっ……あはははははは!!

 何よこれ!! あんたじゃないの!!

 なんなのあの服ぅ〜!!

 すんごい派手な着物じゃな〜い!!

 あんたコスプレの趣味があったのね〜!?

 なんのアニメ!? それともゲームかなぁ!?」


「いや、あれは……俺じゃない」


「何よ〜、照れなくてもいいでしょー?

 今時コスプレなんて普通よフツー!

 第一、冒険者自体コスプレ集団扱いされてるしね!

 もっと恥ずかしい秘密を見せなさいよ〜!」


と神楽は大爆笑するが、安土は真剣な表情で

スクリーンに映し出された人物に注目していた。



『死ねえええええっ!!!』



突如、音割れせんばかりの大音量で

女性の叫び声が上映会場に鳴り響く。

その声の主は……


「お前だな」

「はあ? あたしなわけないでしょ」

「録音した自分の声を聴いたことは?」

「ないわ」


刹那、画面が激しく荒ぶる。

急激なカメラワークの変化により、

観ている方まで実際に揺らされた気分になる。

ジェットコースターの乗客の視点だ。


そして画面の回転が緩やかになるにつれ、

そのカメラがどこから撮影しているのかが判明する。


空中。


カメラは上空から地表を見下ろしていた。

周囲一帯は燃え盛る炎の海であり、

その中央には2人の人物が向かい合っている。

1人は安土桃太郎に酷似した派手な着物姿の剣士、

もう1人は鬼島神楽に酷似した着物姿の女性であった。


「ちょっと嘘ぉ!? 本当にあたし!?」

「いや、違う」

「何よ、あんたがあたしだって言ったんでしょ!?」

「そうだが、これはなんというか……」


言葉を詰まらせる安土だったが、すぐ異変に気づいて

神楽にもその箇所を注目するよう促した。


「女の腕を見ろ」

「腕? ……って、無いじゃん!!」


そう、その女性には肘から先が存在していない。

その断面からは噴水の如く鮮血が噴き出しており、

状況から察するに以前からそうだったのではなく、

たった今、両腕を失ったばかりなのだと想像がつく。


彼女の腕は切断され、空中に打ち上げられたのだ。

画面に映し出された映像は彼女の腕が撮影したもの、

あるいは手に持っている物からの視点なのだろう。


「こら安土ぃ!!

 何してくれてんのよお!?

 あたしを斬るとかあり得ないからぁ!!

 どう責任取るつもりなのよお!?」


「これは興味深い……」


「サイコパスか!!」


「いや、そうじゃない

 これは()()()()()()()()()()なんだ

 画面に映っている男は安土桃之進、

 女の方は──“首切姫・鬼島(きじま)輝夜(かぐや)”で間違いない」


「はあっ!? カグヤぁ!?

 なんかあたしと名前そっくりなんですけど!?

 顔も声もそっくりだし、ってか、モモノシン!?

 つまり、あれもあんたのそっくりさんで、

 あたしのそっくりさんの腕を斬って……

 あああ、何がどうなってんのよもおお!?」


「知りたいか?

 それなら今度資料を持ってきてやる

 安土桃之進と鬼島輝夜についての記録をな

 楽しい歴史の授業をしてやろう」


「結構です」


そんなやり取りを行なっていると、

再び空間に変化が起こり始める。


先程とは違い、これから何が起きるのか

2人にはわかっていた。

初めての体験ではあるが、魂で理解していたのだ。


閉幕。

これにて上映会はお開きだ。

辺りは元の暗闇と静寂に包まれてゆき、

2人の思念体がサラサラと霧散を開始する。


1分にも満たない映像を鑑賞しただけだというのに、

2人は1本の映画を消化したような気分に浸っていた。

そして、やがて無事に目覚めることも確信していた。

魔力の暴走によって引き起こされた怪現象だったが、

彼らは特に命の危険に曝されることなく戻れるのだ。

やはり魔法とは、なんとも不思議なものである。



『死ねえええええっ!!!』



油断したところに、再び叫び声が鳴り響く。


「リバイバル上映!?」

「またかよ……」


となるが、どうも先程の映像とは別物のようだ。

相変わらず画面には(MIYABI)な剣士が映し出されているが、

背景が炎に包まれていないのである。




2人は信じ難い光景を目の当たりにした。


冒険者である彼らには、その場所がダンジョンの中

であることはすぐに察することができた。

ススキと桜の季節感が合わないという理由もあるが、

ただなんとなくでわかってしまうものなのだ。

だがそれより、問題は地面に転がっているモノだ。


そこには2つの死体があった。

真っ二つになった鎧の断面からは中身が溢れ出し、

その傍らには首の無い屍が横たわっていた。

画面の端には分離されたパーツ──亀山千歳の頭部。


「あの鎧は……俺だな

 そして声の主はお前だろう」


その悲惨な状況を即座に分析し、

勘の良い安土は理解……確信した。



「これは…………未来の出来事だ

 俺たちはいずれ安土桃之進と戦い、そして死ぬ」



なんと、ほぼ正解である。

たった一瞬2つの惨死体を目にしただけで、

この男は自らが辿る残酷な運命を悟ったのだ。

これはもう、イケメンと言う他ない。

乱雑に散らばった肉片こそが彼の末路なのだが、

そこはまあ勘違いしてしまっても仕方ないだろう。


「はあ!?

 未来ってどーゆーことよ!?

 あんたが言うには、あたしの特殊能力って

 他人の過去を覗き放題ってやつなんでしょ!?」


「そういう奴が血族の中にいたってだけだ

 おそらくお前の能力の正体は“サイコメトリー”、

 『物や場所の記憶を見る能力』だろう

 俺たちは今、()()()()()()を見せられてるんだ」


「え、ちょっと待って

 そのクビキリヒメとかゆーのは、

 あたしのそっくりさんのあだ名なんでしょ?

 それに記憶って過去のもんなんだから

 未来の記憶なんてまだ存在しないわけで、

 あたしの能力は物の記憶を……だああああっ!!

 もうわけわかんない!! 結局なんなの!?」



「俺たちは同じ時間を繰り返している」



イケメン。


「この映像は未来であり過去、過去であり未来……

 無限ループの途中経過を記録したものだ

 この世のどこかに時間逆行の能力者が存在して、

 俺たちの死後に時間を巻き戻しているんだろう

 そのタイミングがいつなのかは不明だが、

 とりあえずそう考えると辻褄が合う」


イケメン探偵の爆誕である。


「ちなみに『首切姫』は鬼島輝夜の二つ名だが、

 俺が所持している妖刀の銘でもある

 事前の説明不足ゆえに少々混乱させたな

 ……改めて言い直すと、これは()()()()

 首切姫は憎悪の念を吸収する人喰いの魔剣……

 前周のお前が安土桃之進に対して抱いた殺意が、

 首切姫に染みついたまま今周に持ち越されたんだ」


パーフェクトイケメン推理。


安土桃太郎という男は、この時点で既に自分たちが

時間の檻に閉じ込められているという事実に気づき、

悲惨な結末から逃れるために動き出していたのだ。

基本情報

氏名:安土 桃太郎 (あづち ももたろう)

性別:男

年齢:15歳 (9月6日生まれ)

身長:165cm

体重:60kg

血液型:O型

アルカナ:死神

属性:無

武器:首切姫 (妖刀)

防具:ブラックダイヤモンド (重鎧)


能力評価 (7段階)

P:9

S:8

T:7

F:6

C:5


登録魔法

・ディスペル

・リフレクト

・マジックアーマー

・ディヴォーション

・ソウルゲイン

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