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進め!魔法学園2  作者: 木こる
屍山血河
26/32

1学期

時は4月。

関東魔法学園に新たな顔触れがやってきた。

下ろしたての制服に身を包んだ彼らの表情からは、

これからの学園生活への期待と不安が見て取れる。


もし仮にあなたが上級生の立場だとして、

不安がる新入りたちに、なんと声を掛けるだろうか?

きっと「大丈夫さ!」と言って彼らを励ますはずだ。

しかも親指を立てながら。歯をキラリと輝かせて。


だがここに、爽やかな先輩とは程遠い存在が1人。

今の彼女は親指ではなく中指を立てかねない勢いだ。


「死ねよあいつ……」


2年1組の鬼島神楽は、恨めしそうに歯軋りしながら

憎しみを込めた眼光で新入生の一団を見つめていた。


「安土君!」「こっち向いて安土君!」

「写真撮らせて!」「後ろ姿もカッコいい!」

「芸能事務所とか所属してる?」「匂い嗅がせて!」


一団の中心には安土桃太郎の姿が。

彼は大勢の女子に取り囲まれていながら、

それがさも当然のことであるかのように

無表情のまま通り過ぎていった。


絵に描いたようなモテ男。圧倒的強者。

人生の勝利者。栄光しか知らぬ男。


それは神楽が最も苦手とするタイプの男だった。

彼女はただでさえ男嫌いであるというのに、

あのように優秀な雄のフェロモンを撒き散らして

雌を侍らせている野郎は、特に鼻持ちならない。


「夜道でぶっ刺してやろうか……」


「やめとけ神楽

 あいつ新入りの癖に、もう自前の武器持ってんぞ

 そんだけの実力があると学園に認められてる証拠だ

 お前じゃ100%返り討ちにされんだろうよ」


親友のサクラにそう諭されるも、

神楽の敵意は言葉一つで消えるようなものではない。


「だって、ムカつくんだもん!!

 何あれ!? あの態度!!

 無表情とかあり得ないからぁ!!

 ちょっとは喜びなさいよ!!

 あの『俺様がモテるのは当然』みたいな顔!!

 ってか、群がってる子たちもどうかしてるって!!

 あんな奴のどこがいいって言うの!?」


「ん、だから顔がいいんだろ?

 女にモテて当然の顔してんじゃんか

 悪いこと言わねーから、張り合うのはやめとけ

 嫌いな奴には関わらないのが一番だぜ?」


「あたしの取り分が減るじゃない!!」


「取り分って、お前……

 男女問わず世の中の大多数はノーマルなんだ、

 あいつに群がってる連中なんかは特にそうだろうよ

 獲物を狙うなら、それ以外の女にしとけって」


「ノンケを堕とすのがいいんじゃない!!」


「……そっか、頑張れ

 ノーマルのオイラにゃよくわかんねー性癖だが、

 敢えて困難な道を突き進む姿勢は嫌いじゃないぜ」


「えっ、ちょっと何よもぉ〜

 急に褒められたら調子狂うじゃないの〜」


「褒めたか……?

 うん、褒めたな

 そーゆーことにしておこう」




後日、4階の廊下にて。

神楽が窓辺で双眼鏡を覗き込んでいると、

誰かに肩を叩かれたので「シッ、シッ」と追い払う。

が、その誰かは立ち去らずに神楽の肩を何度も叩き、

次第に叩く強さがパンチレベルにまで上がってゆく。


いい加減痛みに耐えかねた神楽は、

怒鳴りつけんばかりの勢いで邪魔者を睨みつけた。


「……げえっ、アロエ先輩!!

 こんにちはぁ〜、えへっ、えへへへへ」


そこには電撃番長──関東アロエの姿が。

しかも眉間にしわを寄せており、明らかに不機嫌だ。


神楽は去年この先輩に不意打ちカンチョーをかまし、

反撃のローリングソバットをモロに喰らって

全治3ヶ月の入院を余儀無くされた経験がある。

まあ、恐怖を刷り込まれたので苦手なのだ。


「神楽、あんたさぁ……

 全然懲りてないでしょ

 また半殺しにされたい?

 今度は手加減してやんないよ?」


「ぅええ!?

 いやいやいや、滅相もない!!

 てか、え? なんで?

 あたし何もしてないですよね!?」


するとアロエ先輩は呆れたような顔になり……

まあ実際、呆れながら答えた。


「それよそれ、アンタが手に持ってるやつ

 1年から『変な先輩が窓から覗いてくる』

 って苦情が来てんのよ……それも大量にさぁ

 どうしてこう毎度毎度、問題を起こすかねぇ

 アタシの(ホーム)でふざけた真似すんじゃないよ」


ホーム……実際、アロエ先輩はここに住んでいる。

当学園の敷地内にあるタワーが彼女の本籍地であり、

『関東』の苗字は関東魔法学園から取ったものだ。

さておき、彼女も神楽を苦手としていた。

何をしでかすのかわからない奴は扱いに困る。


「で、アンタ一体ここで何してたのよ?

 どうせまたろくでもないことでも

 企んでたんでしょうけど……」


「やっ! 違います!

 あたしはただ、可愛い可愛い後輩たちが

 危ない目に遭わないか見張ってただけであります!

 なんせここは魔法学園!

 近くには魔物が蔓延るダンジョンがありますし、

 それにほら、変態とか侵入したら大変ですから!」


「アンタがその変態なんだよ」


神楽は双眼鏡を没収された。




──5月、警察が来た。


「ほら、お前を捕まえに来たぞ」


もちろんサクラは本気で言ったわけではない。

神楽に対する軽い挨拶みたいなものだ。

だが彼女の目は笑っておらず、どこか寂しげだった。


入学したばかりの後輩が失踪してから1ヶ月、

その間、生徒たちはお気楽に過ごしていた。

平和な学園生活を送っていた裏で

実は行方不明事件が起こっていたなどと、

一体誰が予想できたであろうか。


「まさかマジモンの行方不明だったとはなあ……

 てっきり魔物と戦うのにビビっちまって、

 友達の家にでも隠れてるのかと思ってたぜ

 オイラの情報収集能力もまだまだだな」


「あんたのせいじゃないわよ、サクラ

 もし落ち度があるとすればあたしの方ね

 後輩の動きには充分注意してたつもりなのに……」


「お前が見てたのは女のケツだけだろー?

 で、獲物は見つかったのか?」


「ええ

 1年2組、犬飼杏子

 あたしの中では『わんこちゃん』と呼んでるわ」


「あー、やっぱあの子か

 ド貧乳のお前と違って爆乳だもんな

 ちなみに、そのあだ名で合ってるぜ

 なんか犬っぽいし」


「胸の大きさは関係無いわ

 あの、恋する乙女感がいいのよ……

 絶対上手くいかないと本人もわかってるだろうに、

 どこか諦め切れない感じがいじらしいのよね

 完全に玉砕した時は精一杯慰めてあげなきゃ……」


「フラれて落ち込んでる相手に

 トラウマを植え付ける気かよ、鬼だな」


「何よ、弱ってる時こそ最大のチャンスでしょー?

 そーゆータイミングで誰かに優しくされたら、

 その人のことが気になっちゃうもんなのよ」


「……って記事を読んだんだな?

 恋愛マニュアルを鵜呑みにすんな

 それは一般人向けだ、変態は対象外だろ」


「あたしは変態じゃないわ」




──6月、神楽は渡り廊下の物陰に潜んで

女子3人の会話を盗み聴きしていた。

どうやら標的は安土桃太郎を映画に誘ったが、

ノーリアクションで立ち去られてしまったらしい。

これは失恋したものと判断すべきか悩みどころだ。


「あんな奴のどこがいいの?」と亀山千歳が発言し、

彼女も反安土派の同志なのかと期待する。

だが、違った。

亀山のそれは質問というより尋問に近い雰囲気で、

犬飼杏子の目をじっと見つめて待機していた。


彼女は恋敵の情報を探っていたのだ。


それに対する標的の返答は「顔」であり、

しょうもない回答に満足した亀山はフッと笑い、

それ以上の探りを入れようとはしなかった。


季節はもう夏だというのに、

少し寒気のする場面を目撃した神楽であった。




その数日後、事件が起こる。

警察沙汰という意味ではない。

もっと小さな、取るに足らない出来事だ。


「うおっ!?」

「あんぎゃ!?」


神楽と安土の接触。


ダンジョン内にて、1年の大上とかいうモブ男子が

ザコい魔物と遊んでいるのを見飽きた神楽は、

隙だらけの標的に抱きつこうとしたのだ。

だが今まさに全力で犬飼杏子に飛び掛かった瞬間、

安土桃太郎が進路上に割り込んできたために

2人は縺れ合うようにして地面に転倒したのである。


それだけならただの事故で済む。

しかし、それだけでは終わらなかったのだ。



──暗闇と静寂。

その場所は暑くも寒くもなく、

自分の肉体さえ存在しない不思議な空間だった。


ただ、意識だけは確かにあった。


鬼島神楽と安土桃太郎は、

その不思議な空間で思念体となって漂っていた。

基本情報

氏名:鬼島 神楽 (きじま かぐら)

性別:女

サイズ:AAA

年齢:16歳 (3月30日生まれ)

身長:151cm

体重:41kg

血液型:O型

アルカナ:運命の輪

属性:無

武器:ニルヴァーナ (杖)

防具:星読みのローブ (衣装)


能力評価 (7段階)

P:3

S:3

T:2

F:15

C:2


登録魔法

・スーパーノヴァ

・アブソリュートゼロ

・グランドクロス

・サンクチュアリ

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