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進め!魔法学園2  作者: 木こる
決死行
15/33

12月

ダンジョン内でガシャン、ガシャンと音が鳴り響き、

何組かの女子グループは慌てて手鏡を取り出して

汗で化粧が崩れてないか、鼻毛が飛び出してないかと

入念にチェックを行い、音の主が現れるのを待った。


しばらくして彼女たちの前に姿を現したのは

合金製の禍々しい髑髏──“ブラックダイヤモンド”。

安土桃太郎が冒険活動中に着用している、

黒光りする重厚な全身鎧であった。


「安土君、今日もお疲れ様!」

「私たちも早く追いつけるようになるね!」

「このダークな感じがまた……ふふっ、たまらん」


当初はあまり評判の良くない防具だったが

今ではすっかり評価が逆転してイケメン鎧と化し、

ファンアートを描く者やデスメタルにハマる者が

続々と現れているそうな。


それはさておき、今日のイケメン鎧は何かが違った。


「あ、あれ?

 なんか……安土君、背伸びた?」


「動きも少しぎこちないというか……

 なんだかロボットみたい」


「って、あれえ!?

 安土君が2人いる!!」


ギャラリーが勘違いしてしまうのも無理はない。

イケメン鎧の後方には生身のイケメン──

安土桃太郎の姿があったのだから。


「え、じゃあこれ……誰?」


女子たちは当然の疑問を口にするが、

どうせ安土に尋ねたところで無視されるのがオチだ。

ならば聞くべき相手はイケメン鎧の中の人、

安土桃太郎の偽物を問い詰めるのが妥当だろう。



怖い顔をした女子に囲まれたイケメン鎧は

おろおろと慌てた様子で後ずさりし、

安土に対して救援要請の視線を向ける。

だがそこは安土桃太郎。

戦闘以外で仲間を助けるという選択肢は無い。

安土には期待できないと悟ったイケメン鎧は、

自らイケメン兜を脱いでその正体を明かす。


「あっ、猪瀬さんだ!」

「なんで猪瀬さんが安土君の鎧着てんの!?」

「ちょっと中の匂い嗅がせてよ!」


「あ〜、いや、これはなんというか……

 ウチは断ったんだけど、安土君からの命令で

 『防御役(タンク)は一番いい鎧を着ろ』と……」


困り果てた表情で彼女は答えた。

実際、困っていた。

猪瀬は防具を新調する必要は無いと考えていたが、

安土にはそうしなければならない事情があったのだ。


妖刀パワーを失った安土にこの鎧は重すぎたようで、

どうせ新しい鎧に切り替えるのなら、返品するよりも

有効利用できる味方に譲り渡そうと考えたのである。


その結果がこれだ。

猪瀬はイケメン安土のおさがりを着ることになり、

安土のファンからは羨望と嫉妬の眼差しを向けられ、

杏子からも変な目で見られるようになったのだ。


「ウチが欲しがったわけじゃないのに……」


ちなみにこのブラックダイヤモンドだが、

今まで猪瀬が着ていた鎧の10倍以上の価値がある。



注目を浴びるようになったのは猪瀬だけではない。


亀山千歳の新装備“ブラックマトリクス”は

艶かしい光沢を放つ黒いボンデージであり、

きわどい食い込みと露出の激しさから

思春期の健全な男子たちの視線を釘付けにしたのだ。

昭和の漫画であれば、彼らは目をハートにしながら

鼻血を垂れ流していたに違いない。



犬飼杏子は黒い水玉模様のコート

“ブラックレイン”に身を包んでおり、

小柄な彼女の可愛らしさを引き立てていた。

しかし安土ファンからの評価は手厳しいものであり、

「あざとい」の意見でほぼ一致する結果となった。


いつも安土の周りをうろちょろしている彼女は、

目障りな女として認識されていたのである。



そして元から注目の的である安土桃太郎は、

イケメン鎧を脱いでもやはりイケメンであった。


彼の新装備“阿修羅”は軽装戦士向けの市販品で、

多くの者が使用しているので特に珍しくはない。

だが、そんな普遍的なTシャツのような存在でも

イケメンが着ることでイケメン防具と化すのだ。


ファッションとは、顔が10割である。

何を着ているかより、誰が着ているかが重要なのだ。



鬼島神楽からは皆、目を逸らした。






──ファッションショー気分を堪能し終えて

学園に帰還した一行は報告書を提出しようと

職員室へ向かっていたのだが、廊下の途中に

人集りが出来ていたせいで足止めを喰らう。


安土の存在を察知した女子たちが気を利かせて

道を空けてくれたので少し進むことはできたが、

安土は窓の外の人物に気がつくと再び歩みを止め、

観られる側から観る側へとその立場を逆転させた。


校庭には大上隼斗がいたのだ。

彼は戦士の表情でファイティングポーズを取り、

対峙している猛獣からの苛烈な攻撃に備えて

神経を尖らせているのがこちらまで伝わってきた。


制服を着た猛獣の名は──関東アロエ。

当学園に通う3年生であり、『電撃番長』の異名で

皆から恐れられている凶暴な先輩である。

彼女は怒りの感情が昂ると髪の毛が逆立って

周囲に放電現象を起こす特異体質の持ち主であり、

その取り返しのつかない状態は『逆鱗』と呼ばれた。


大上は今、完全にブチ切れモードのアロエ先輩と

一戦を交えようとしているのである。


「え、何があったんだろう……?」

「大上……死んだわね、あいつ」

「誰か止めてあげてーーーっ!!」


猪瀬が呼び掛けるも、ギャラリーは誰一人として

その場から動こうとはしなかった。

無理もない。彼らは皆、怯えていたのだ。

平常時でさえおっかない先輩だというのに、

一体誰が本気で怒った暴君を止められようか。


安土桃太郎……は、当然助けない。

彼はまるで信号待ちでもしているかのように、

ただ突っ立って窓の外を眺めているだけだった。


鬼島神楽は青褪めながらガクガクと震えている。

やっぱりだめだこの人。




誰もが傍観者でいる中、颯爽と現場に駆けつけて

流れを変えたのは2年生の金子正数だ。

彼は勇敢にも両者の間に滑り込むように割って入り、

アロエ先輩と大上の顔を交互に目視した後に

胸の前で両手を交差させ「ファイッ!!」と叫んだ。


レフェリー金子の合図でまばゆい閃光が迸る。


ああ、戦いが始まったんだ。と観衆が理解した直後、

雷が落ちたかのような轟音と共に突風が巻き起こり、

窓ガラスが今にも割れんばかりの勢いで激しく揺れ、

身の危険を感じた生徒たちは壁際へと避難した。


アロエ先輩は、ただ移動しただけである。

ただそれだけで音速の壁を超えて衝撃波が発生し、

安全圏にいるはずの観客たちを後退させたのだ。

稲妻の化身──それが関東アロエだった。


大上は一体どうなってしまったのだろうか?

あれだけの衝撃が観客席にまで届いたのだ。

爆心地にいた彼が無事で済むはずがない。

全身バラバラになってしまっただろうか、

それとも跡形も無く消し炭にされただろうか……。


壁際の生徒たちが1人、また1人と窓辺に駆け寄り、

哀れな犠牲者の惨状を確認しようと身を乗り出す。


すると、そこには信じられない光景が広がっていた。




大上隼斗は生きていた。


それどころか彼はアロエ先輩に関節技を()めており、

先輩は苦悶の表情を浮かべながら喚き散らして

地面をバンバンとタップしていたのだ。


「──勝負あり!! そこまで!!」


レフェリー金子の宣言により、

この瞬間、大上の勝利は確実なものとなった。


なんということだろう。

とんでもない番狂わせが起きてしまった。

持たざる者の大上が、最恐の存在に打ち勝ったのだ。


惜しむらくは、その場にいたほとんどの観客が

決定的瞬間を見逃してしまったことだろう。

彼らは皆、ソニックブームに怯んでしまったがゆえに

一瞬の攻防から目を離してしまったのである。


そんな彼らのためなのか、安土による解説が入る。

これはありがたい。


「これだけ大勢の生徒が見物していたんだ

 生意気な後輩に格の違いを見せつけるためにも、

 彼女は自身の得意な技で決めたかったはずだ

 大上はその心理につけ込んだんだろう

 ……4つの有名な必殺技のうち、

 ヒールハンマーとローリングソバットは

 その場で放つ技だから除外するとして、

 敵との距離を詰めながら攻撃する技は残り2つ

 そのうちバレルロールは範囲攻撃であり、

 大技ゆえに隙が大きく一対一の戦いには不向きだ

 となると、残るはドロップキックしかない

 大上は必ずその技が来ると読んでいた

 あとは冷静にタイミングを見計らって

 相手のキックをドラゴンスクリューで絡め取り、

 4の字固めに持ち込んでフィニッシュだ

 まあ、そのタイミングを合わせるのが

 至難の業ではあるんだがな

 ……ちなみに大上が履いているのは導電性安全靴だ

 あれで相手の放電を地面へと誘導することで

 感電によるヒットストップを防いだというわけだ

 事前にそんな物を用意していたということは、

 この喧嘩は大上から仕掛けたものなんだろう

 まったく命知らずな奴め

 ……ちなみに、俺ならもっと上手くやれた

 試合開始の合図を待つなど愚の骨頂、

 あの睨み合っていた時間は無駄にも程がある

 相手に敵対の意思があると判断した瞬間──斬る

 非公式戦なんだ、何を迷う必要がある?

 存在しないルールに縛られてどうする?

 その甘さがいつか命取りになるぞ」


安土はそれだけ言い残し、

呆然と立ち尽くす観衆を掻き分けて

廊下の奥へと消えていった。

基本情報

氏名:金子 正数 (かねこ まさかず)

性別:男

年齢:17歳 (10月1日生まれ)

身長:174cm

体重:58kg

血液型:A型

アルカナ:審判

属性:氷

武器:聖騎士の剣 (片手剣)

防具:聖騎士の盾 (盾)

防具:聖騎士の鎧 (重鎧)


能力評価 (7段階)

P:6

S:5

T:7

F:5

C:7


登録魔法

・アイスボール

・アイスストーム

・マジックシールド

・ライジングフォース

・ディーツァウバーフレーテ

・ヒール

・サンクチュアリ

・アナライズ

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