第46話 主神のヒント
――シュン
転移魔法で家に帰ってきた俺達。すぐに玄関を開けて中に入る。
外も中も変わりなく一安心した。
「アグニ!俺は今から自室でスキルの再確認をする。悪いが昼も晩も食事はいらない。誰も来させないでくれ!ヒタムにも部屋に来ないように言っておいてくれ!」
そう言い残し俺は二階の自室へ入る。
「何かないか、なんでもいい。ヒタムや皆を守れるような何かないか」
スキルブックを最初から指で追いながら該当しそうな単語を探すが、守れそうなものは見つからない。
最終ページになったので、また最初から探していく。
何度もスキルブックを捲っているうちに紙で指を切ったようで、紙に血が付いている。しかし、そんな事を気にする時間が惜しい。
「なんでも良いんだ、何か何かないのかっ!」
まったく見つからず俺は頭を抱えて机に突っ伏す。
「どうしよう。結界を一部だけとは言え解除したのは失敗だったかなぁ」
ガックリと肩を落とし、再度スキルブックを開こうとした時に部屋がノックされた。
――トントントン
音はドアの下の方から聞こえる。ヒタムが来たんだろう。
――カチャ
ドアを開けるとヒタムが部屋に入ってきて俺の膝に乗ってきた。
「とうちゃん!ごはんは食べないとダメなのだっ!元気なくなるのだっ!」
ヒタムに怒られているときにアグニが慌てた様子で二階に上がってきて俺に謝る。
「申し訳ありません。ヒーちゃんにはリョウ様のお邪魔にならないようにと言ったんですけど……」
「いいよ。俺も休憩したかったしな。それに腹が減ったよ」
アグニに笑いかけヒタムを抱っこしようと立ち上がった時に、机に置いていたスキルブックを落としてしまった。
それを拾いあげた時に、ハラリと一枚の紙が落ちてきた。
「とうちゃん、お手紙が落ちたのだっ!」
ヒタムが拾い俺に渡して来たのは、俺達がココに転移してきた日に呼んだ主神の爺さんからの手紙だった。
内容は色々ありすぎて忘れてしまっていたが、何気なく目を通す。
「えっ!!!!!」
その手紙の中ほどに重要な事が書かれていた。
――――――
もしも、スキルブックの内容が物足りなくなった時、一度だけじゃがスキルの追加をしてやろう。
スキルブックを手に取り儂が祀られている教会の主神像に祈りを捧げればよい。
――――――
「おい!アグニ、ここから一番近い主神を祀ってる教会はどこだっ!」
「えぇっ。主神様をお祭りしているのは確か……。帝国に初めて馬車で向かった時に二泊宿泊したガルトの街にあるはずです」
「そこに主神像はあるのか?どうなんだよ!」
「大きい教会ですので主神様の像はあると思いますね」
「アグニ!今すぐアリアナを連れてきてくれ。ここの警護を任せたい!」
数分でアリアナを連れて戻ってきたアグニ。
「アリアナ!暫くアグニと出かけるが、すぐに戻る!その間、ヒタム達を守っててくれ!」
「はっ!承知しました!」
「アグニ、何度も悪いが今度は俺をガルムの街まで連れて行ってくれ!今度、お前の言う事を何でも聞くから。頼む!」
「(なんでもですね。言質はとりましたよ。フフフ)」
「エッ?なんか言ったか?」
「気のせいです!では参りましょう!」
――――――
俺とアグニはガルムの街の門の前に到着した。
本当は街の中にある教会前まで転移できれば良かったのだが、主要な街には転移阻害魔法がかけられているらしい。
主に犯罪者が転移で逃げられない為と聞く。
門番たちや近くにいた兵士、街への入場待ちの人々は俺達を見て跪いている。
「ここがガルムの街か。確かに皆で串焼きを食べたなぁ。それで教会はどれだ?」
「あの向こうに見えている高い建物がそうですね」
「よし!走るぞ!」
「はい!」
俺達は教会に向けて走る。
俺の黒髪は世界に存在しないので街の人々はすぐに俺と認識している。
走りながら横を向くと皆は跪いたり俺に祈りを捧げるような態勢になっている。
前方の人達も俺達に道を開けて跪く。
今はそれらの人々に対し、相手をする時間がなく申し訳ない気持ちのままに走り続ける。
三十分くらいは走り続けただろうか、やっと教会前に着く。
着いてすぐに教会の大きな扉を乱暴にあけた。
丁度、夕刻のミサの最中であったらしく、教会内には多くの信者で溢れていた。
そのまま、主神像の前まで走って行き、そばに居いた神父に声をかける。
「神父さん、悪いな。ちょっと主神様にお祈りさせてもらうぜ!」
すでに息があらく、顔も怖かったようで神父は少し後ずさりながらも了承してくれた。
俺は主神像の前で跪き、スキルブックを胸に抱えて祈りのポーズをして目を閉じて、心の中で主神の爺さんに問いかけた。
閉じた瞼ごしに光が俺に向けて光っているのがわかる。その光は徐々に強くなり、瞼の裏側まで光は届いていた。
(リョウ、久しぶりじゃな。ここに来ると言うのはスキルブックについてかのぉ?あぁ、声を出す必要なないぞ。心で答えればよいぞ)
(爺さん、久しぶりだな。そうなんだよ。スキルブックに新しく追加して欲しくってな。それよりもなんだよ俺の名前の頭文字の『り』から始まる単語って!限定的すぎるだろ!)
(ふぉふぉふぉ、仕方ないじゃろ。お主が『杖はいらん』と言ったじゃろうが、だから本当は大賢者のスキルを与えようと思っておったのに)
(えっ?俺、『杖いらん』なんか言った覚えねぇぞ!)
(言ったわい!『異世界行って俺杖いらん』って!思い出してみぃ!)
「それって、『異世界行って俺ツエェー』の事じゃん」
思わず声に出してしまった。
(ホレ、ホーレ言っとるじゃろが。まぁよい。それで困っておるのじゃろ?……ホイっと、それスキルブックを新しく授けたぞい!あとで確認するがよい。それよりもお主、いい加減に家の近くに儂の教会を作らんか!そうすれば儂も近くで見守れるものを)
(りょうーかい!わかったよ!落ち着いたら作らせるよ)
(絶対じゃぞ!こうやって祈ってくれれば話が出来るからのぉ。楽しみ待っとるよ)
(あっ、時間がないんだった。ゴメン、爺さん。絶対に立派な教会と主神像を作るから!じゃーな)
主神の爺さんとの会話を終え、目を開けると手に持ったスキルブックとは別に足元に新しいスキルブックが置いてあった。
慌てて手に取り、アグニと共に教会を出ようとしたのだが。
俺は見えてなかったが、どうやら凄まじい光が教会を包んでいたようで、大勢の野次馬が教会の外に集まっていた。
俺は走りながら集まっている人々へと道を開けるように呼び掛けた。
すると海が割れるように人々が道をあけてくれる。
走りながらも皆に感謝の言葉を掛けながら。
やっと街の外へ出た俺達はすぐに家への転移を行い戻る事ができた。
新しいスキルブックと一緒に。
これは後日、聞いた話なのだが。
俺が祈りを捧げた瞬間に神々しい光に包まれた現象は、『使徒様の奇跡』として有名になり、ここガルムの街はおおいに賑わったと聞いた。
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