閑話 主神と地球神
「ほい、邪魔するぞい」
「いらっしゃい。主神様。来られるのは良いのですが前もって連絡くらい頂きたいですね」
「フォフォフォフォ、許しておくれ、テルース。ちと気になる事があるのでな。どれ、最近はどうじゃ?元気にしておるかの?」
「それがですね…………」
地球神と呼ばれた名をテルース。その顔は曇っていた。
「どうしたんじゃ?」
「今の私の世界のいとし子達は、発展しているのは喜ばしいのですが空気汚染、土壌汚染が酷くなってます。年々、酷くなってきてます。また、方々で戦も起こってます。もぅ、この地球を滅亡させても良いのではと考えているくらいです」
「う~む。それは由々しき事態じゃのぉ。この世界を作ったのは四十六憶年前じゃったのぉ。最初に作った時は美しい世界じゃったのになぁ。何がどうなったんじゃろう?」
「多分ですが他の世界の神がイタズラで『戦の種』を落としたようです。それまでも戦はありました。国内でも国家間でもあったのは事実です。でもそんなに大きなものでは無かったのです。ある時に誰とは言いませんが、その『戦の種』のせいで、良の居た日本に大きな爆弾が落とされて数十万人の命が一度に失われたのです……」
「誰がやったか分かっておるのか?」
「お伝えしても?」
「あぁ、言っておくれ。この地球は作った時に思い入れの強い世界じゃ!誰が悪さをしたのじゃ?」
「…………………………………………ラルスラーン……です」
「…………また、アイツの仕業じゃったのか!あの愚か者めがっ!」
怒りに震えて主神は良のいる世界『アイルーン』の方向に目をやり怒号を吐く。
「主神様、何卒お願いです。あやつに罰をお与えいただけませんか?」
「ふぅ。アイツにはもう罰を受けさせておる。この中でなぁ」
そう言って主神は自分の胸を指さした。
「あぁ、精神世界に閉じ込めたのですね。いつ頃、お許しになるのでしょう?」
「アイツは戻らんよ。永遠に無限地獄で苦しんで貰う。『不老不死』の権能のみ残してすべて剥奪してやったわ」
「『不老不死』だけですか。それはまたキツイ処罰ですね。今頃は飢えと渇きに苛まれていることでしょう。それをお聞きして溜飲が下がりました。ありがとうございます」
「なに、礼には及ばんよ。あやつは少々やり過ぎたからの」
そう言って主神はニヤリと笑う。
「しかし、あの世界『アイルーン』でしたか?あの世界は我が地球に似せて作成されていたのでしょう?主神様も思い入れがあり、結構、目をかけていたのでは?何があったのかをお聞きしても?」
「うむ。今のアイルーンは地球のユーラシア大陸?じゃったかの。あれにそっくりじゃよ。テルースの言う様にちょくちょく見に行っておった。あやつ、ラルスラーンも最初は真面目に仕事をしていたのじゃがの。他の世界の神同志で喧嘩が起こっての。その仲裁に五千年程は様子を見にいけんかったのじゃ。あやつが妖精から女神に昇格したのは知っておろう?元来、悪戯好きの妖精族じゃが、ここまで酷いとは思わなんだ。悪戯の範疇を超えておるわ!後顧の憂いが無いように妖精族も消滅させておいた。」
主神はラルスラーンの今までの悪行。召喚魔法で勇者を地球から強制的に連れてきては勇者だと持て囃し他国を蹂躙させては『戦争ごっこ』と称して遊んでいた事を話した。
また、自分が黒色が嫌いだとの理由だけで黒色、もしくは近い色の動植物や種族を神の天罰として根絶やしにした事を話し、最後に良の事も話す。
その言葉を聞き終えた地球神テルースは大粒の涙をハラハラと流し、今まで犠牲になった者達や良のことが哀れで仕方がないと泣くのであった。
「それでのぉ、地球からかなりの人数が犠牲になったじゃろ。その謝罪に来たんじゃよ。どうか、どうか許しておくれテルース」
主神が地球神に深く頭を下げて謝罪した。
「もう、過去の事です。頭をお上げください主神様。悪いのはラルスラーンなのです。主神様のせいではございません。確かに腹立たしく思いますが、すでに主神様のお力で良き人生になるように転生させてくれたではございませんか。どうぞ、お顔をあげてください」
「許してくれるか。本当にすまんかったの」
「それで先ほど気になる事と仰っていましたが、何か気がかりでも?」
「うむ。最後にラルスラーンに召喚された者がのぉ。自分よりも友人の命を助けてくれって懇願してきたのじゃ。そんな事を言われたのは初めてでの。人は自分さえよければ良いとの考えの者が多いと思っておったから驚いての。さすがに理に反するから断ったがの。そやつは『良』と言う名の若者じゃ。まだ成人する前に両親を亡くして一人で頑張っていたんじゃ。それを助けた隣家の者が召喚事故に巻き込まれた良の友人じゃった。その家族はどうしてるのかと気がかりでの。本来は特別扱いはせんのじゃが、なんとも気持ちの良い、魂が綺麗な若者達じゃったんでなぁ」
「そう言うことでしたか。私も我が子達を特別扱いはしませんが、そういう事なら様子を見てあげてください」
――――――
「美紀も良君もいなくなっちゃって……。寂しくなったわね」
「そうだな。良君もあの『白い光』に巻き込まれたって言うじゃないか。あれを最後に不思議な現象は無くなったけどな」
「そうねぇ。美紀は病院で亡くなったから葬儀は出来てたけど、良君は消えたままだしね」
「良君はどこに消えたんだろうな。聞けば美紀の担当していた黒ヒョウの檻の一部と黒ヒョウの子供も一緒に消えたって言ってたな。親の黒ヒョウは頭だけ消えていたそうだよ。俺達も何とか手がかりが欲しいから聞きまわったけど、何もわからなかったもんなぁ」
「日本だけじゃなくって世界でも調査して分かってないんでしょ。超常現象っていってるけど」
「…………」
「でもね、お父さん!私は良君は絶対に生きてるって思うの。だってね、お母さんの恵子さんが亡くなったときもお涙堪えて見送ってたじゃない?あんな根性がある子が死ぬわけないわっ!ねぇねぇお父さん、そうでしょ…………。ウッウッウッウッウッ」
「泣かないでくれ。俺まで辛くなる。そうだな!良君は生きて現れるさ!『おじさん!おばさん!久しぶり』ってな」
――ピンポーン
「はーーい。(あら?誰かしら?美紀のお友達がお線香を上げに来たのかしら?でも、先日来てくれたわよね?違うお友達でも来たのかしら)」
返事をして玄関を開けると外には誰もいなかった。
「おかしいわねぇ」
そう言って美紀の母親が玄関に入ろうとした時に
「ワン!ワンワン!」
そちっらを振り向くと玄関の脇に段ボールが置いてあり、中には白と黒の仔犬が入れられていた。
「あらっ?あらあら、どうしたの?箱の底に手紙があるわね?」
手紙を広げてみると、「この子達をお願いします」とだけ書かれていた。
「おとうさーん、おとうさーん。ちょっと来てぇーーー」
「どうした、どうした」
「これ見てよ。ワンちゃん達がそこに捨てられていたの」
そう言いながら玄関脇を指し示す。
「白の方がメスで黒いのがオスか。捨て犬だろうな、そんな手紙が入っているんだから」
「ねぇ」
「ダメだ!」
「まだ何も言ってないじゃない!」
美紀の母親はふくれっ面で旦那を見上げる。
「飼いたいって言うんだろ?無理無理。誰が世話するんだよ!」
夫婦で言い合っていると美紀の妹が大学から帰ってきた。
「もう!お父さんもお母さんも近所迷惑でしょ!恥ずかしい!……って、あれ?その子達どうしたの?」
母親は妹に捨てられていた事。父親が飼う事を反対している事をチクる。
「えぇーひっどーい、お父さん。非人間的ぃ~。こんな可愛い子達を保健所に連れていくつもりなの?保健所に行ったらガスで殺されるんだよ!知ってるの?」
女性二人に挟まれてヤイヤイの言われ、父親はしぶしぶ了承するしかなかった。
後日談であるが、美紀の父親は仔犬達にデレデレになった事は言うまでもない。
――――――
「ふぅ、主神様。今回だけですよ。我が子に贈り物をするのは」
「わかった、わかった。じゃが、あれで少しは心の傷も癒えるじゃろうって。テルースよ感謝するぞい」
「はぁ、まあ良いですけど。私も気になりましたからね」
地球の遙か上空より二神が美紀達家族を見守っていた。
ブックマーク、評価をお願い致します。
誤字、脱字等がありましたらご報告をお願い致します。




