第03話 召喚
「今度こそ召喚に成功させよ!貴様らの召喚失敗の言い訳はこれ以上聞けんぞ!次の召喚でも失敗すればお前たちの一族郎党をすべて次の召喚の贄とするぞ!」
「いえ今回の召喚には魔力の高い子供たちを贄としており、それだけでは足らぬと思いまして、他国の子供も攫って贄に致しております。贄としては十分な量でありますので、以前のような失敗はないかと思われます」
「贄としては何名じゃ?」
「はっ。子供が二百人、大人が四百人としております。我が国のスラム地域の住民すべてです」
「それで魔力は足りるのか?」
「十分だと思われます」
「子供の親はどうした?」
「はっ。女王様の奉公の為と申しておりますのに強固に反対するものばかりで。歯向かうものは殺して家の前に首をぶら下げておきました。これで偉大なる女王様に対して無礼を働く者はいなくなると思われます」
「よくやった。褒めて遣わす」
「ありがたきお言葉」
「あと、魔力の高い魔人国からも攫ってきておるか?」
「はい。あの国は野蛮ですが生まれつき魔力が高いものが多いですので、子供を百人程度見繕っておきました」
「そうか。それでよい。そういえば、あの役立たずの元勇者は如何しておるのじゃ?」
「あぁ、あのケガをして戦えなくなった元勇者ですか?」
「うむ」
「あの者でしたら城の雑用として今頃は倉庫整理中と思われますが」
「その家族は?」
「家族ともに宮廷のはずれの小屋に住まわせております」
「ふむ、元勇者と家族全員を連れてまいれ。戦いも出来んような奴でも魔力量だけは多かったであろう?その家族も勇者の血を引いておろう。贄の一部として捧げよ。多少は成功率も上がると言うものよ」
「はっ、すぐに連れて参ります」
――――――
「おい、何故だ。私や家族に枷をつけるとは何事だ。俺はこの国の為に働いた英雄ではないのか?
おまえらの言う通りに戦ったではないか?何故だ?」
勇者であった男は自分に枷をつけた兵士に疑問を投げ掛けた。
「うるさい!女王様の御前であるぞ」
しかし兵士は聞く耳などもたなかった。
「女王様、これはどう言うことなのでしょうか?この国の英雄である私を。私が何か無礼を働いたのであれば私だけに罰をお与えください。どうか家族だけは――」
「ふん!元勇者か。もう使い道はないが魔力だけは一人前であるか。喜べ元勇者よ。此度の召喚として貴様と貴様の家族を贄として使ってやろうぞ」
ならばと男はふんぞり返る女王に懇願するが、女王の言葉は男の神経を逆なでする。
「どういうことだ!女王!俺はあんた達の言う通りに他国へと攻め入ったではないか!」
「ふん!片腕切り落とされ使い道のない貴様を生かしやっていたのは妾の温情よ。最後に奉公の場を設けてやったのだ。喜べ、元勇者」
「貴様――」
「おい、元勇者とその家族が暴れたり叫んだりしては邪魔じゃの。足の腱を切り、動かぬようにし、喉を切り裂いて声が出せぬように召喚陣に入れよ」
女王は既に声を発する事ができなくなった元勇者を一瞥する。
「女王様。勇者の一族は贄として魔法陣に入れました。ただ、勇者以外の贄達は泣き叫んでうるさいので、すべて喉を切り裂いて声を出せなくしております。これで女王様のお耳には入らないでしょう」
兵士はやり切った表情で女王へと報告を上げた。
「よしよし。今度こそ絶対に成功させよ!隣国のティラステラ帝国が目障りじゃ。何故か我が国の召喚の秘術まで知られてしもうた。我が国の召喚魔法について他国と一緒に糾弾しおってからに。鬱陶しい!あぁ鬱陶しい!目障りじゃ!この世界は妾が統治するのじゃ!」
「「「その通りでございます。女王様!」」」
「今度の召喚で今度こそ滅ぼしてくれるわ。これで世界は妾のものよ」
女王は嫌らしい笑みを浮かべ野望を胸に掲げる。
「その通りでございます。女王様。この人数の魔力を糧とすれば隣国どころか獣人国や魔人国も、すべて滅ぼせるだけの勇者を召喚できるでしょう」
「宰相、本当であろうな。妾に嘘をつくようなことがあれば分かっておろうな」
そう、この国は召喚魔法を女神より賜り、召喚者を勇者として顕現させ世界征服を目論むラルスラーン教国。
しかし秘術である召喚魔法の方法である贄を捧げる事が隣国のティラスティラ帝国の耳に入り
『非人道的であるラルスラーン教国は邪神を祀る国である。また、勇者なる者を我が国や他諸国に戦を仕向ける邪悪な国である』
として近隣諸国と連合を組み敵国として何度も戦ってきた経緯がある。
当初は召喚された勇者にて連合国を撃退し、かなりの勢力を誇っていたのだが、勇者もすでに倒され、ここ数年は召喚に失敗し女王の怒りは頂点となりつつあった。
――バタン――
召喚の儀式の間のドアが乱暴に開けられ、兵士が慌ただしく入室してきた。
「危急でございます。危急の報でございます。ご容赦を!」
「控えよ!女王様の御前であるぞ」
「申し訳ございません。しかしながら急ぎお伝えしたい事がございます」
「何事であるか。申してみよ」
「申し上げます。隣国のティラスティラ帝国の軍が我が国に進軍しているとのことです」
「誠か?女王様、如何いたしましょうか?」
「召喚士達よ、急ぎ召喚を行うのじゃ!早うせよ!勇者を召喚して帝国を退けるのじゃ」
「御意に。では召喚を始めます」
「……召喚魔法発動」
召喚が始まったと同時に魔法陣がほのかに光を纏うと同時に魔法陣の中の贄にされた人々は苦し気な表情となり、また怨嗟の声を上げたくとも喉を裂かれているために声を上げることなくバタバタと倒れていくのであった。その表情は驚きと憎しみと悲しみを含んだ顔であった。
やがて玉座の間に白い光の柱が発現し、人型がぼんやりと浮き出始めた。
「おおぉ――!女王様、此度は召喚成功のようですぞ」
「うむ、これで世界は妾のものよのぉ」
「ははぁ、その通りでございますれば、召喚終了まで暫時お待ちください」
「うむうむ。早うせんと帝国の馬鹿共が我が国に入りこむのでな!」
ぼんやりしていた人型が、今やハッキリと男性であるとわかるようになってきた。
「なになに?なんだ?ここは?誰だ?あんた達?」
現れた男性は呆けたような表情で辺りを見回していた。
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