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召喚で自爆させられ、また転移!? ~頭文字の男~  作者: スフィーダ


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閑話 許されざる者達

――――元女神:ラルスラーン


真っ暗な世界に元女神が佇んでいる。さっきまでいた白く輝いていた世界から一転、ここは何も見えない。前も後ろも上の下の何も見えない。自分のつま先すら見えないほどの暗さである。主神の怒りを買い、現在は主神の精神世界に閉じ込められた元女神。


「クソがぁぁぁ、あのジジイ。私をこんなとこに閉じ込めやがって。フン!もういいわ。でも、あのジジイも甘いわよね、『不老不死』の権能を残すなんてね。バカじゃない?」


取りあえず元女神が上へ上へと飛んでみる事にした。何時間、何日と飛び続けたのだが何も景色は変わらない。

次に下へ下へと降りていく。同様に何も変わらない。前方、後方、左右へと移動し続けても景色は変わらない。

「クソがっ!まぁいいわ。死ぬ事もないから脱出の時間はあるわね。フン、覚えとけよジジイ」




どれくらいの時間が経ったのだろうか。女神は喉の違和感と腹部から異様な音が鳴り続ける理由がわからない。神であった為にこの様な現象に見舞われる事がなかったから……。

これは喉の渇きと空腹状態。人も魔物も動物も当たり前の現象なのだが、今まで神の権能で飲まず食わずでも平気だったので、これが何か一切わからなかった。


通常、水分を取らなければ三日、食べなければ三週間で死亡するのだが、腐っても元女神は既にその日数を超えているのだが、それでも限界になりつつあった。


「あぁ、これは『喉の渇き』『お腹が空いた』と言う事なのね……。昔、遊びで雨を一切振らせないようにした国があったわ。皆がやせ細って死んでいった。草木も枯れてたわね。あの時はやせ細っていく者達を見て笑っていたんだけど、こんなに辛いのね。あぁぁぁ、水を頂戴。何か食べ物を頂戴」


しかし、暗い世界では答えが返ってくる筈もなく、ただ動かずに我慢するしかなかった。

『不老不死』の権能がなければ死んで楽になったかもしれない。今はその素晴らしい権能が憎くて仕方なかった。


以前は世界が羨むような美貌は跡形もなくやせ細ったミイラの様な見た目に変わり果てていた。髪の毛は抜け落ち、わずかに残った髪の毛も動くたびにパラリパラリと抜け落ちる。鏡があれば自分の姿を見て発狂するだろう。


「お……願い……、お……水……を…………」


主神からの言葉は返ってこない。女神の罰はまだ始まったばかりなのだから。




――――元ラルスラーン教国 ゾエ・シャンタル・ロゴス女王


水面に映る姿を見た元女王は愕然とする。

「何じゃ、この姿は!おぉおぉ、悍ま(おぞ)しや。妾が醜い蜘蛛になっておるではないか!あぁ、主神様、どうかお許しください!妾が間違っておりました。どうかどうかお許しを!」


当然、主神も元女王の声は聞こえているが、決して返事をすることはない。


カサカサカサカサ……


八本の脚を動かし、元女王は道をウロウロするしかなかった。まだ、自分の境遇は夢であろうと思い込むしかなかった。今や人通りも絶えたラルスラーン教国の外れで元女王は何とか記憶を辿りながら人がいる場所へと移動する。蜘蛛の糸を長く尻から吐き出し、風に乗り、木々を渡り、人がいるらしき方へと移動する。



「おぉ~い!その荷物はコッチだ。ここへ置けぇ~」

「わかりました親方!それからあおの荷物はどこへ持って行くんですかぁ~」


大きな声がする方へと向かうと、そこは馬車から荷物の荷下ろしをしている所へと辿り着いた。


「これこれ、そこの人足達よ。妾を助けよ!これ聞いておるのか!妾は元ラルスラーン教国の女王であるゾエ・シャンタル・ロゴスである。無礼者と手打ちにはせぬから妾を助けぬか!


その人足達を見上げながら声を掛けるのだが届く筈はない。虫が騒いでも人に聞こえるわけはないのである。


若い人足が元女王である蜘蛛を見つける。

「これ、そこの!お前じゃ、そうお前じゃ。妾を助けよ!」


――グシャ


「うわっ、気持ちわりいぃ。なんだ?この蜘蛛、胴体に顔みたいな模様があるじゃないか。毒蜘蛛みたいだな。踏みつけて殺して正解だったな」

「馬鹿野郎!何してやがる。そんな蜘蛛なんかより荷物を運ばねぇか!時間がねぇんだぞ!」

「親方、スイヤセン。すぐにやりますんで」


さっきまで踏みつぶした蜘蛛を見ていた若い人足は、すぐに蜘蛛の事を忘れて仕事に戻っていった。先ほど、若い人足が言ってたように蜘蛛の胴体には元女王の顔に似た模様が浮かんでいる。その模様は苦し気な断末魔の表情のようであった。


「痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、妾はどうなったのじゃ?あぁぁぁぁ、妾のハラワタが出ておる。あぁ、妾の手も足も千切れ飛んでおるではないか……」


蜘蛛は脚もバラバラで胴体からは気持ち悪い色の液体を滲ませて、ピクピクとしている。


「あぁぁぁぁぁ、誰ぞ助けてたもれ!あぁ、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い……………………、痛……い……、痛」


元女王の意識はなくなり、死んでしまった。が、『蘇生』の権能を付けられた元女王は暫くして蘇る。


「さっきの出来事は何じゃ?夢であろうか?それにしては痛みがあったのだが」


カサカサと蜘蛛は自分の身体を確認する。何ら異常は見当たらない。それに先ほどまでの人足達も既に出発したのだろうか?誰もいない。

そして、これからも永遠に殺され蘇る。また殺されては、蘇る。そう、かなりの痛みと苦しみを味わいながら……。



――――『戦神』、『享楽神』、『闇と混沌の神』

「ブゴッブゴッ」と、元神の一柱であった戦神は魔物のオークとなり鳴き声を上げる。

「ギャギャギャ」と、元神の一柱であった享楽神はゴブリンとなり鳴き声を上げる。

「ピィィィィ」と、元神の一柱であった闇と混沌の神はスライムとなり鳴き声を上げる。


お互いは誰かを認識出来ているが、魔物となった影響が強く現れ、互いに殺し合いを続けている。殺されては元女王と同じように苦しみながら死んでいく。

この元三柱も『蘇生』の権能を付与されているので、何度も蘇っている。

また、これらは何度も蘇っているので、初心者冒険者のよい狩場でもあった。初心者の為に一撃必殺とならず、切れ味の悪い武器で切られ、突かれ、威力の少ない魔法で痛みで死ぬまでにも時間がかかり、その分だけ痛みと苦しみは続く、死に絶えるまで。



――――ラルスラーン教国の者達

主神より罰を受けた宰相をはじめとするラルスラーン教国の重鎮、貴族、兵士、民達は蛾やアリ、ミミズなどにダンゴ虫のように変化させられている。

ある者は子供達に羽を毟られ、石をぶつけられ、薬をまかれて死に絶える。一番悲惨なものに変化させられたリョウを刺し貫いた兵士は釣り餌になってしまっている。

リョウを刺したように、釣り針に身体を刺し貫かれて痛み、魚に食いちぎられては苦しむ。魚のフンになっても、そこから蘇る。



これら主神の怒りに触れた者達は許される事がない永遠の地獄を味わい続ける。

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