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召喚で自爆させられ、また転移!? ~頭文字の男~  作者: スフィーダ


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第01話 動物園

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ~~~~~~~~~~~~~~~~~」

俺は何度目かのクソでかい溜息をつく。


周りの人達は奇異なものを見るように、俺を避けてひそひそ話をしながら通り過ぎていく。

子供たちは無邪気に俺の装いを親に聞いている。

それはそうだろう、楽しい動物園で一人、喪服の男がいるのだから。


幼馴染だった友人であり家族のようだった美紀。

すこしの恋慕があったことは否めないけど。


――――――

俺は母子家庭で育ったのだが、病弱だった母が高校入学の日に亡くなってしまった。

高校の入学金を工面するためにパートを掛け持ちして無理がたたって倒れたんだ。


高校なんか行かずに中卒で働くと言っていたのだが、

「高校だけは絶対に行きなさい。お金のことは心配しないで」

「いやだ!俺が働けば母ちゃんに楽させられるだろ!勉強嫌いなのは母ちゃんも知ってるだろ!俺は中学卒業したら働くからな!」

「良!いい加減にしなさいよ!」

こんな風に母子喧嘩が絶えなかった。


その声が隣の美紀の家に届いてたんだろう。母子喧嘩がエキサイトしてきた時に、

――ピンポーン――

「上がるわよ」

「美紀、上がってきてから言うんじゃねーよ!」

「うるさい!また、おばさんを困らせてんでしょ!」

「他人のお前には関係ねぇーよ。帰れ!」

「…………あぁ?殴るぞ!良!」

「いっ!!!痛ぇなぁ。殴ってから言うなよ!このクソブスが!」

「…………喧嘩売ってんのね?良。表に出ろや!」

「てめぇ、女だからって加減しねぇからな!」


ゴツンッ


「いったーい、おばさん何すんのよー」

「いたたたた。母ちゃん、手加減しろよ」

「二人とも、いい加減になさい!もういいわ。良、母さんは高校には行かせるからね!これ以上は言わないわよ。いいわね!」

と美紀の乱入で母子喧嘩もなぁなぁになってしまうのが日常だった。


母ちゃんの葬式は俺と美紀の家族だけで見送った。

結局、高校には行くことにした。まぁ、勉強だけは何故かできてたからな。


大学には行かずに専門学校卒業後にIT系企業で働いているが、理不尽な上司や無茶な要望をする取引先に元ヤンキーに血が騒いで何度殴りかかろうかと思ったくらいに。


美紀は、昔から動物が大好きで獣医か飼育員になると小学生の時から言ってたけど、本当に動物園の飼育員になった。


「ねぇねぇ良!私やっと大大大好きなメリーちゃんの担当になったんだよー」

「メリー?」

「黒ヒョウのメリーちゃん!何度も言ってたでしょ!本当に聞いてないんだから」

「だって俺、動物興味ねぇし」

「もぉ!」

「でね、でね。そのメリーちゃんが子供産んだんだ。それが小っちゃくてかわいいの」

「そりゃ、あかちゃんは小さいだろうが」

「良!殴るよ!」

「はい、ごめんなさい」

「で、そのあかちゃんの名前知りたい?知りたいでしょ?」

「はぁ」

「ヒタムちゃんって言うの。マレー語で『黒色』って意味なんだって」

「ひぇ~」

「園長からヒタムちゃんを任されたんだよー」

「ふ~ん」

「赤ちゃんだから抱っこしてミルクを飲ませてんの」

「へぇ~」

「もぅもう、可愛くって~」

「ほぉ」

「でね、ヒタムちゃんがね」

ずっと話続けている美紀に対して女性への返事は『はひふへほ』で全部大丈夫となんかのTVで見てて助かった。

俺の目の前で際限なく黒ヒョウの話を続けている美紀を無視してスマホでゲーム。

これが俺たちの日常だった。


「今日はお祝いだぁ!良、飲みに行こうよ」

「なんの祝い?」

「また話聞いてなかったわね。ヒタムちゃん生まれて半年のお祝い!」

「俺、関係あんの?美紀の奢りなら付き合うぜ」

「もぉ……まぁ、いいか。奢ってあげようじゃないか。わっはっは」

結局、二人ともベロンベロンに酔ってしまって、美紀の親父さんに叱られたっけ。



せっかく念願の動物園の飼育員になれて、大好きな動物の担当者になれたって

めちゃくちゃ喜んでたのにな。


あんなに喜んでたのに、最近の人体消失事件に巻き込まれるなんてな。

それも目撃者の話では、白い光に包まれた小学生を突き飛ばして自分の左腕が犠牲になったそうだ。

何かでスパッと切られたように肩口から腕が消えたと言う。

救急車も呼ばれたらしいがすでに遅く、出血多量であっけなく死んでしまった。


知らせを聞いてすぐ病院に向かったけど、本当に眠っているように見えたのが辛かった。

呼びかければ目をあけるんじゃないかと思って、何度も何度も呼びかけた。

けど、目覚めることはなかった。


今日は美紀の四十九日法要だったから、現世にいるのは今日までか。


死ぬ前日が美紀の誕生日だったから特注の腕時計を渡した事を思い出した。

安月給の俺にしては痛い出費だったけど喜ぶ顔が見たくて奮発した。

なんかゲームの主人公が盤面に描かれていて、その時計のバンドに特注で

美紀の名前を彫り込んでもらったよ。

渡すときは照れてしまって恥ずかしかった思い出がある。


「きゃー!!!いいの?これ貰っても?後で返せって言っても返さないからね!」

「バンドに名前入れてるのに返されても困るよ」

「それもそうね。ありがとう!大事にするね」

「まぁ喜んでもらえたらなにより」

「良の誕生日には何かいいものをプレゼントするからね!楽しみにしててね!」

「はいはい。待ってますよっと」


――――――

昨日の事のように俺は黒ヒョウの檻の前で思い出に耽っていた。

黒ヒョウの親子は並んで寝そべっている。

あの小さいのがヒタムって名前だったかな?


「なぁ、黒ヒョウ。あんないいやつが死ぬなんてなぁ。今もお前の近くにいるかもな」

と動物に聞いても答えは返ってくるはずもなく。黒ヒョウ達はチラリとこちらを見てまた寝てしまった。


「帰るか…………」


檻から踵を返したとき、俺の視界は白に染まった。

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