第八話:墓守の亡霊
墓地での戦いを続け、レイヴンのレベルは2に上がった。召喚できるスケルトンも2体になり、戦闘が少しずつ安定してきた。
「ふう……この調子なら、もう少し狩れそうだな」
スケルトンたちが倒したゾンビの残骸を眺めながら、レイヴンは考えた。
(ネクロマンサーの戦い方にも慣れてきたが……やはり、手持ちの召喚モンスターが弱い)
現在召喚できるのはスケルトン・ウォリアーのみ。攻撃力はそこそこだが、防御は心もとない。
もう少し戦力を強化できる手段があれば——
「……ん?」
ふと、墓地の奥に異変を感じた。
先ほどまでは静かだった空間に、奇妙な気配が漂っている。
(何かいる……?)
レイヴンは慎重に杖を構え、スケルトンたちを前に進ませた。
※
墓地の奥へと進むにつれ、空気がどんどん冷たくなっていく。
不自然なほどの静寂が広がり、まるで世界そのものが息を潜めているかのようだった。
「……これは、ただのフィールドモンスターとは違うな」
その時——
ズズ……ズズズ……
地面の下から、じわりと黒い靄が立ち上がった。
——ヒュウウウウ……
風が吹くとともに、一体の亡霊がゆらりと現れる。
《墓守の亡霊》
レベル:???
種別:アンデッド(エリート)
スキル:《亡者の鎮魂》《幽玄の刃》
(エリートモンスターか……)
通常のモンスターよりも格上の存在。下手をすれば、一撃でやられる可能性もある。
だが——
(こいつを倒せば、ネクロマンサー向けの強力なスキルやアイテムが手に入るかもしれない)
慎重にやれば勝てない相手ではない。
「……やるしかないか」
レイヴンは決意を固めた。
※
「スケルトン、前へ!」
レイヴンの指示で2体のスケルトンが突撃する。
だが——
ヒュッ……
亡霊が手をかざすと、スケルトンたちの動きが止まった。
——【亡者の鎮魂】発動!
「なっ……!?」
スケルトンたちが黒い霧に包まれ、そのまま**崩れ落ちるように消滅してしまった。
(これは……召喚モンスターを即死させるスキルか!?)
初手から厄介な技を使われた。だが、まだ終わりではない。
「……ならば、こっちもやってやる」
レイヴンはスキルを発動した。
——《ソウルサクリファイス》
自身のHPを削り、次の攻撃力を高めるスキル。
「喰らえ……!」
レイヴンは杖を振り下ろし、魔法を発動する。
——《ダークミサイル》!
漆黒の魔力弾が亡霊へと直撃する。
クリティカルヒット! 35ダメージ!
「……よし!」
だが、亡霊はまだ健在だった。
(あと一撃……だが、向こうも反撃に出るはず——)
その瞬間、亡霊が手を上げた。
——【幽玄の刃】発動!
「……っ!」
亡霊の手から霧状の刃が生まれ、一瞬にしてレイヴンの体を切り裂いた。
——致命傷! HP残り5!
「クソッ……!」
たった一撃で瀕死。だが、まだ終わりではない——
「……最後の一手だ!」
レイヴンはギリギリの体力で最後のスキルを発動した。
——《デスブレス》
亡霊に向かって黒い息吹が広がり——
——墓守の亡霊を倒しました!
「……っ、終わったか……」
※
亡霊が消滅し、戦闘が終わると同時に、レイヴンの視界にシステムメッセージが表示された。
【《墓守の亡霊》を撃破!】
【新スキル《死者の加護》を獲得しました】
「スキル……?」
レイヴンは詳細を確認した。
《死者の加護》
効果:召喚したアンデッドが一度だけ即死攻撃を無効化する。
(なるほど……さっきの【亡者の鎮魂】みたいなスキルを防ぐ手段になるわけか)
これはネクロマンサーにとって、かなり有用なスキルだ。
「……ふっ、やったな」
初のエリートモンスターとの戦いを乗り越え、貴重なスキルを手に入れたレイヴン。
ネクロマンサーとしての戦い方を確立しつつある彼は、次なる戦場へと歩を進める。