第八十四話:創造主との対峙
神界と冥府が交わり、新たな秩序が生まれた。
だが、その変化を見つめる存在がいた。
「この世界の創造主」——彼は静かにレイヴンを見据え、微笑んでいた。
「まさか、神々の理を塗り替える者が現れるとはな……」
創造主の姿は、人間にも、神にも見えた。
それは、見る者の解釈によって変わる、不定形の存在。
だが、その目には確かにこの世界を創りし者の威厳が宿っていた。
レクシアが警戒し、レイヴンの傍へと近寄る。
「……あなたは誰?」
創造主は穏やかに答えた。
「私は、この世界を創った存在。神々が生まれるより前から、この秩序を築いた者だ」
「ならば、お前はユグドレアの主か?」
レイヴンの問いに、創造主は首を横に振る。
「いいや。ユグドレアは、私が生み出した秩序の一部にすぎない。彼は管理者として機能したに過ぎないのだよ」
その言葉に、レイヴンの眉がわずかに動く。
ならば、この世界を創った真の支配者は——
創造主は静かに続けた。
「だが、お前は神の秩序を破壊し、新たな理を築いた。興味深い……」
「お前が俺を試しに来たというわけか?」
レイヴンは剣を構えた。
創造主の力は未知数だ。
だが、ここで譲るつもりはない。
「試すつもりはない。お前がどのような世界を築くのか……それを知りたいだけだ」
創造主は一歩前に進み、レイヴンの前で立ち止まる。
「私の理を受け継ぐつもりはないのか?」
レイヴンは即座に答えた。
「俺は、俺の意志でこの世界を創る。神の手ではなく、魂の選択によってな」
その答えを聞き、創造主は薄く微笑んだ。
「……ならば、見せてもらおう。その選択が、どのような未来を生むのかを」
次の瞬間、創造主の姿が消えた。
ただ、彼の言葉だけが残る。
「この世界は、お前に委ねよう」
※
静寂が訪れる。
レクシアが安堵の息をついた。
「……去った?」
「ああ。どうやら、今は様子見のようだな」
だが、レイヴンはまだ警戒を解かない。
創造主が去ったということは、今この世界の秩序は完全に自分の手に委ねられた。
その意味を噛みしめるように、レイヴンは天を仰ぐ。
彼が選んだ道は、神の支配を拒み、冥府の理を世界の法則とすること。
果たして、それが正しい道なのかは分からない。
だが、レイヴンはもう迷わない。
「レクシア、行くぞ」
「ええ、レイヴン……!」
二人は、新たな世界を築くために歩みを進める。
それが、神ではない者が紡ぐ、魂の選択による未来の始まりだった。




