第七十八話:神降ろし
ゴゴゴゴゴ……!!
天が裂け、光と闇の境界が歪む。
天界に君臨していた三柱の神々が、ゆっくりと立ち上がった。
「貴様は、神の理を侵し、輪廻の秩序を乱した」
「人の身でありながら、冥府を支配し、死すら超越しようとする異端」
「ならば、ここで裁きを下すのみ」
三柱の神々が静かに宣告する。
その瞬間、世界が弾けた。
ズドォォォォン!!
神々の力が解放され、雷鳴の如き衝撃が天界を駆け巡る。
その光に晒された天使たちは、ただひれ伏すしかなかった。
「……ついに、動くか」
レイヴンは剣を構え、歯を食いしばる。
《神降ろし》——神々が自らの権能を解放し、化身として降臨する術式。
かつて人類の歴史において、神が直接介入することはほとんどなかった。
だが今、それが行われようとしている。
「……レイヴン、あなたの決意は?」
レクシアが静かに問いかける。
レイヴンは天を見上げ、わずかに笑った。
「決まってるだろう。神が相手でも、俺は冥府の王として——抗う」
その言葉に、レクシアは満足そうに微笑んだ。
——そして、戦いの幕が開く。
「天命の名のもとに——貴様を討つ」
三柱の神々が、それぞれの武具を掲げた。
光が砕け、雷が轟く。
バキィィィィン!!
天界の大気が震え、空間そのものが砕けるような衝撃が走る。
三柱の神々が繰り出した一撃を、レイヴンは巨大な黒の障壁で防いでいた。
《冥府の護り》——冥府の支配者のみが扱える結界魔法。
だが、その防御をもってしても、衝撃は体の芯まで響く。
「……なるほど。確かに、格が違うな」
レイヴンは剣を握り直す。
天に君臨する三柱——
創世神オルディウス
裁定神エリュシオン
秩序神アストラル
彼らは、それぞれの領域を司る絶対的な存在だった。
オルディウスが放った一撃は、天を裂き、大地を抉る。
エリュシオンの力は、裁定の光となり、罪ある者を焼き尽くす。
アストラルの秩序は、あらゆる混沌を否定し、世界の理を押し付ける。
それら全てを相手に、レイヴンは立ち向かうしかなかった。
「……冥府の王よ。神に刃向かうなど、愚かなことだ」
オルディウスが雷を纏いながら宣告する。
「愚かかどうかは、俺が決める」
レイヴンは不敵に笑い、剣を掲げた。
「冥府の軍勢よ——応えろ!!」
その号令とともに、冥府の門が開く。
そこから現れたのは、かつて彼が育て上げた無数のアンデッド軍団。
かつて戦った歴戦の英雄たち、敗れた王たち、そして冥府に集う者たち——
彼らが、レイヴンの号令に応じ、神々へと挑む。
「……ふふっ。まさか、神々に戦を仕掛けるとはね」
レクシアが微笑みながら、杖を構える。
彼女の魔力が冥府と共鳴し、黒き霧が天界へと広がっていく。
「ならば——存分に踊りましょう。冥府の王と共に」
神々 vs 冥府の軍勢。
ついに、かつてない戦乱の幕が切って落とされた。




