第七十五話:神々の宮殿
——光の海。
それが、レイヴンとレクシアが踏み入れた神界の第一印象だった。
どこまでも広がる純白の空。大地はなく、宙に浮かぶ大理石の回廊だけが続いている。
「……これは、想像以上ね」
レクシアが目を細める。
まるで夢の中の世界のように、現実感が希薄だ。
「こんな場所が、本当に『ゲームの一部』だっていうのか……?」
レイヴンは剣を握り直しながら呟く。
この場所には、ゲームの制約を超えた何かがある——そんな直感があった。
ズ……ズズ……
その時、光の空間に不穏な気配が漂った。
「何か来る……!」
レクシアが叫んだ瞬間、白銀の光が彼らを包み込む。
視界が歪み、まるで空間そのものが意思を持ったかのように変容した。
——次の瞬間。
彼らは、神々の宮殿と思しき場所へと転移していた。
神域。
巨大な柱が並ぶ、神々の玉座の間。
そこには、レイヴンとレクシアを待ち受けるかのように三つの影が佇んでいた。
「……やはり来たか」
その声は、静かに響くが、圧倒的な威厳を持っていた。
レイヴンは剣を構え、目の前の存在を見据える。
——三柱の神。
このゲームの根幹を成す、真の支配者たち。
「冥府の王よ」
中央の神が、レイヴンを見つめる。
その目には、計り知れない知識と、冷酷な意思が宿っていた。
「貴様は、本来ここに至るべき存在ではない……しかし、それでもなお道を開いた。ならば、問おう」
彼は静かに手を掲げた。
「貴様は、この世界の理を覆すつもりか?」
その言葉に、レイヴンは息を呑む。
——理を覆す。
それは、この世界の在り方そのものを変えることを意味する。
そして、それこそがレイヴンがここまで辿り着いた理由でもあった。
レクシアが静かにレイヴンを見上げる。
彼女もまた、答えを知っていた。
「……決まってる」
レイヴンは一歩前に出た。
「俺は冥府の王として、この世界の真実を知る者として——」
剣を掲げる。
「神に抗う!!」
その宣言に、神々は微動だにしない。
「……そうか」
中央の神が静かに呟いた。
次の瞬間、空間が震え、圧倒的な神威が解き放たれる。
「ならば、その力、見せてもらおう」
——神と冥府の王。
決戦の幕が、ついに開かれる。




