第七十四話:神界の守護者
光が裂ける。
轟音とともに放たれた天槍がレイヴンへと襲いかかる。
「ッ……!」
レイヴンは身を翻し、迫りくる一撃を紙一重で回避した。
だが、槍が地を穿つと同時に、周囲の空間がひしゃげるように歪む。
「……空間ごと削る攻撃か」
光の中に立つ《神界の守護者》は、一歩も動かず、ただ槍を構え直していた。
「神々の御業に抗う者よ。ここより先へは行かせぬ」
低く響く声。
その存在は、まさに神の代行者——天界の監視者そのものだった。
レクシアが後方から叫ぶ。
「レイヴン、神界の守護者は通常の攻撃では傷つかないわ! 神の理そのものが彼を守っている!」
「だろうな……ならば、冥府の力を以て貫くまでだ」
レイヴンは黒剣を構え、冥府の魔力を全身に纏わせた。
足元には、漆黒の影が広がり、亡者たちの囁きが木霊する。
「行くぞ——《冥王剣・冥獄の斬撃》!」
ズバァァァッ!!
黒き刃が閃き、次元を裂くように神界の守護者へと襲いかかる。
だが——
カキィンッ!!
「……無駄だ」
天槍が一閃。
冥府の斬撃を打ち砕き、レイヴンへと突き出される。
「クッ……!」
間一髪で受け止めるも、神の力が全身を焼き尽くさんばかりの衝撃となる。
まるで、存在そのものを否定されるかのような力。
——このままでは押し切られる。
その刹那、レクシアが両手を掲げ、冥府の魔力を解放した。
「《冥府の鎖》!」
ガシャァァァン!!
漆黒の鎖が無数に現れ、神界の守護者の動きを封じる。
「……っ、少しだけど、拘束したわ!」
レクシアの声が響く。
だが、鎖はすぐに砕かれようとしていた。
——今しかない。
レイヴンは全身の冥府の魔力を剣に集約し、跳躍する。
「これで——終わりだ!!」
天槍が振るわれる刹那、レイヴンの剣が冥府の深淵を引き裂いた。
《冥獄の終焉》——
黒き光が守護者を包み込み、空間ごと削り取るように炸裂する。
そして、静寂が訪れた。
レイヴンが地に降り立ち、ゆっくりと息を吐く。
光の中で、神界の守護者の姿が薄れ——やがて、完全に消滅した。
「……やったのね」
レクシアが呟く。
レイヴンは頷き、神界の門を見上げた。
——道は開かれた。
扉が重く開き、向こう側から溢れる神々の光が、二人を包み込んでいった。
「行くぞ、レクシア」
「ええ……ここが、真実へと至る道だから」
二人は、ついに神界へと足を踏み入れた。




