第七十二話:神罰の槍、冥王の剣
レイヴンの《冥王の剣》が、漆黒の光を帯びながらセラフィエルへと振り下ろされた。
それは死者の王が握るべき剣であり、神々の支配に抗う意志の象徴。
「——受けよ、神殺しの一撃を」
対するセラフィエルは、槍を煌めかせる。
それは天の神々より賜りし神罰の槍。
神の理に背くものすべてを浄化し、輪廻に還す力を持つ。
「汝の力、ここで封じる」
光と闇、天と冥府——神界と死者の王の力が激突する。
刹那、世界が震えた。
天界と冥府を分かつ門が、衝撃に耐えきれず軋む。
「このままでは……門が崩れる!」
レクシアが焦りの声を上げる。
しかし、レイヴンは微塵も動揺せず、ただ前を見据えていた。
「ならば、力で突破するまでだ」
剣にさらなる冥府の力を込める。
ゴゴゴゴ……!
空間が軋み、重力すら歪むような感覚が走る。
「《冥府の剣技・終焉の断罪》」
その一閃は、魂の定めをも断ち切る一撃。
神の理に縛られぬ死者の王の力が、神界の守護者に襲いかかる。
「なにっ……!」
セラフィエルの槍と剣がぶつかり合い、神罰の光が闇に侵食されていく。
ついに——
セラフィエルの槍が砕けた。
「馬鹿な……!」
彼の表情に、絶望が浮かぶ。
神罰の槍が負けるなど、神々の理の中ではありえないこと。
だが、ここに”例外”が生まれた。
「神の力も、万能ではないと何度も言ったはずだ」
レイヴンの剣がセラフィエルの肩口に食い込む。
「ぐっ……」
神の血が流れ、白金の光が闇の中へと消えていく。
「貴様……何者だ……?」
セラフィエルが震える声で問う。
レイヴンは淡々と答えた。
「冥府の支配者、そして神の理を覆す者だ」
そして、剣を振り抜く。
セラフィエルの身体が、光の粒子となって弾けた。
神界の守護者、ここに陥落。
※
セラフィエルを打倒し、門の前に立つレイヴンとレクシア。
門はすでに崩壊の寸前だった。
「レクシア、開けるぞ」
レイヴンが静かに言う。
レクシアは少し戸惑ったが、すぐに頷いた。
「……ええ」
彼女は冥府の魔術を操り、門の封印を解いていく。
そして——
バシュン!
眩い光が、門の奥から溢れ出す。
「……この先が、神界」
天へと続く光の階段。
そこは、魂が輪廻の果てに到達する場所——神々の領域。
「さあ、行きましょう」
レクシアが手を差し伸べる。
レイヴンは迷わずその手を取った。
「神の理を、ここで終わらせる」
そして二人は、光の中へと足を踏み入れた——




