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第三十話:冥府の処刑人

「——来るぞ!」


 レイヴンの声と同時に、冥府の処刑人が巨大な剣を振り下ろした。


 ズンッ——!!


 衝撃が冥府の大地を揺らし、灰色の霧が舞い上がる。レイヴンは即座にバックステップで距離を取りつつ、ヴェルザークの動きを見た。

 黒騎士は処刑人の斬撃を受け止めることなく、身体をひねることで最小限の動きで攻撃を回避。次の瞬間、彼の漆黒の剣が鋭い弧を描いた。


 キィンッ——!


 処刑人の鎧に斬撃が命中するも、ダメージのエフェクトは発生しない。まるで攻撃そのものが無効化されたかのようだった。


「クソッ、やっぱりか……!」


 レイヴンは舌打ちする。冥府の処刑人は、通常の攻撃がほとんど通らない強敵だ。対抗するには、特殊な手段が必要になる。


「レクシア、処刑人の弱点は?」


 レクシアは即座に答える。


「処刑人は“秩序を守る存在”です。つまり、彼の力を無効化するには冥府の支配者としての権能を行使するしかありません」

「……つまり、《冥府の魔王の証》がカギってことか」


 レイヴンは装備ウィンドウを開き、称号スキルを確認する。


《冥府の魔王の証》——冥府において絶対的な支配力を持つ証。一定範囲内のアンデッドに対し、強化効果を与える。さらに、冥府の存在に対する“支配”を試みることが可能。


「支配、ね……」


 レイヴンは処刑人を見据え、深く息を吐いた。


「ヴェルザーク、お前は奴の注意を引き続けろ。俺は試したいことがある」

「……了解した」


 黒騎士は無言で剣を構え、処刑人へと向かっていく。

 一方、レイヴンは《冥府の魔王の証》の力を意識しながら、処刑人に向かって手をかざした。


「——跪け」


 その瞬間——


 冥府の大地が不気味に揺れ、処刑人の動きが一瞬止まった。青白い炎を灯す瞳が、レイヴンの方を向く。


「……ギ……ギギ……」


 金属が軋むような音を立てながら、処刑人の巨体がゆっくりと震え始めた。


「こいつ……本当に支配できるのか?」


 レイヴンの脳裏に、支配の成功確率が表示される。


 ——支配成功率:25%


「……四回に一回ってところか。悪くはない」


 だが、処刑人はなおも抵抗を続ける。彼の身体から黒い瘴気が立ち上り、レイヴンの支配を振り払おうとしている。


「クソ……もう少し……!」


 レイヴンはさらに力を込める。その時——


「冥府の王よ」


 ヴェルザークが処刑人と斬り結びながら、低い声で言った。


「貴方は何を迷っている?」

「……迷い?」

「王ならば、命じろ。貴方は、冥府の支配者なのだろう?」


 その言葉を聞いた瞬間、レイヴンの中で何かが吹っ切れた。


(そうだ……ここは、俺の支配する世界だ)


 彼は処刑人を見据え、冷然と告げた。


「——俺に従え」


 その瞬間、冥府の処刑人の炎が揺らぎ、黒い霧が周囲を包んだ。


 ——支配成功


 処刑人の瞳から青白い光が消え、レイヴンの前に跪く。


「やったか……?」


 レイヴンが確かめるように言うと、レクシアが微笑んだ。


「ええ、おめでとうございます、レイヴン様。これで貴方は冥府における真の支配者となりました」

「……そうか」


 レイヴンは新たに得た力を実感しながら、静かに拳を握った。


(このゲームの“異変”の正体……もう少しで掴めそうだな)


 そして、彼は冥府の奥へと歩を進める。

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