第二十二話:死者の軍勢、進撃せよ
砂嵐が吹き荒れる戦場で、巨大なレイドボス——《砂塵の魔王バルザグラード》が咆哮を上げる。
周囲のプレイヤーたちは視界を奪われ、混乱し、戦線は崩壊の危機に瀕していた。
だが、その中でただ一人。
プレイヤーネーム:《レイヴン》
彼だけは、まるで動じることなく戦場を見据えていた。
「……さて、ここからが本番だ」
——【スキル《死者の視界》発動】——
——【支配下のアンデッドは視界妨害を受けなくなる】——
このスキルにより、レイヴンの支配するアンデッドたちだけが砂嵐の影響を受けずに行動できる。
「前衛、陣形を維持したまま突撃しろ。後衛は火力を集中」
——【スケルトン・ウォーリアが突撃を開始】——
——【スケルトン・アーチャーが狙撃を開始】——
——【スケルトン・メイジが詠唱を開始】——
白骨の軍勢が、混乱するプレイヤーたちを飛び越えて前線に出る。
通常のプレイヤーたちは視界が奪われているため動けない。
しかし——
「死者に視界は不要だ」
レイヴンのアンデッドたちは、砂嵐の中でも正確に標的を捉え、バルザグラードへと突撃していく。
「な……アンデッドが、まるで生きているかのように動いている!?」
「違う……あれは”生きた軍隊”だ……!」
プレイヤーたちが驚愕する中——
「後衛、魔法発射準備。敵の足を止める」
——【スキル《呪縛の影》発動】——
——【バルザグラードの動きが鈍くなった】——
レイヴンが静かに杖を掲げると、バルザグラードの周囲に黒い影が絡みつき、その動きを鈍らせる。
その瞬間——
「今だ、集中砲火!」
——【スケルトン・メイジが《ダークフレイム》を発動】——
——【スケルトン・アーチャーが《影縛りの矢》を発動】——
黒炎がバルザグラードの巨体を包み込み、影の矢がその四肢を貫く。
「うおおおおっ!?」
「こ、こいつ……一人でレイドボスの相手を……!?」
プレイヤーたちは目の前の光景に圧倒されていた。
——ネクロマンサーの戦い方が、ここまで組織的なものだとは誰も知らなかった。
◆ 崩壊する魔王
——【バルザグラードの体力が残り30%を切った】——
「よし、ここで畳みかける……!」
レイヴンが次の指示を出そうとした瞬間——
——【バルザグラードが《最終形態》へ移行】——
——【バルザグラードの身体が砂と同化し始める】——
「……やはり、そう来るか」
レイドボスには最終フェーズが存在する。
このフェーズに入ると、バルザグラードは砂塵そのものとなり、物理攻撃がほぼ通らなくなる。
「普通なら、この状態になると戦況はひっくり返る……だが——」
レイヴンの瞳が鋭く光る。
「この俺の軍勢にとっては、むしろ好機だ」
——【スキル《死霊術・冥府の束縛》発動】——
黒い魔法陣がバルザグラードの足元に広がる。
砂と同化しようとするその体が、黒い鎖に絡み取られ、地面へと縛り付けられた。
——【バルザグラードの《砂塵化》が無効化された】——
「な、なんだこれは!?」
「バグか!? いや、アイツのスキルか!?」
プレイヤーたちは騒然とする。
しかし、レイヴンはただ冷静に次の指示を下した。
「……すべての火力を、一点に集中させろ」
——【スケルトン・メイジが《ネクロバースト》を詠唱開始】——
——【スケルトン・アーチャーが《貫通の矢》を発動】——
——そして、次の瞬間。
——冥府の軍勢が、魔王を完全に包囲し、撃ち抜いた。
——【バルザグラード、討伐完了】——
——【レイドボス討伐報酬を配布】——
◆ 戦場に響く静寂
静寂。
次の瞬間、プレイヤーたちが歓声を上げる。
「やった……! 勝ったのか!?」
「す、すげぇ……マジかよ……」
「でも、勝てたのは……」
皆の視線が、一人の男へと向く。
戦場の中心に立つ、ネクロマンサー——レイヴン。
彼は静かに、己の軍勢を見下ろしていた。
白骨の軍勢。
彼らは、一度も崩れなかった。
——「死者の軍勢は、決して折れない」
この日。
レイドボス討伐の立役者として、ネクロマンサー《レイヴン》の名が広まることとなる。




