表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/86

第二十話:死者の軍勢、戦場に集う

 広大な砂漠の中心——そこに、レイドボス《砂塵の魔王バルザグラード》は君臨していた。


 体長十メートルを超える巨大な魔人。黒曜石のような肌に、灼熱のオーラをまとい、両手には巨大な戦斧を携えている。


——【レイドボス:バルザグラード(Lv70)】——


 


「おいおい、デカすぎるだろ……」

「この規模だと、まともにぶつかるのは自殺行為だな」

「だけど、こいつを倒せばユニーク装備が確定ドロップだぜ? やるしかねえ!」


 集まったプレイヤーたちは、レイドボスの威容を前にざわめいていた。

 ここにはトップランカーと呼ばれる強者たちも集結している。

 前衛を務める重装騎士たち、強力な魔法を操る大魔導士、そして回復役の神官たち。

 総勢五十名以上のプレイヤーが、このレイド戦に参加していた。


 


 そんな中、一人の男が静かに戦場を見つめていた。


プレイヤーネーム:《レイヴン》(Lv55)

職業:《ネクロマンサー》


 


 日焼けした肌に、クセのある茶髪のセミロングを後ろで束ね、顎髭を生やした男。

 彼は、杖を持つ手をゆっくりと握りしめる。


(……さて、俺のやり方を見せてやるか)


 


 


◆ 戦闘開始


 


 先陣を切ったのは、廃プレイヤーの一人である《ヴァルド》(Lv63)。

 黒銀のフルプレートに身を包んだ騎士で、トップギルド【鉄壁の楯】の幹部でもある。


「先手を取る! 行くぞ!」


 ヴァルドが咆哮し、突撃を開始。

 それに続き、他の前衛職たちも一斉にレイドボスへと襲いかかる。


「いけぇぇぇ!!」


 重騎士たちが攻撃を仕掛け、魔導士たちが強力な魔法を放つ。


 しかし——


——【バルザグラードが《砂嵐の咆哮》を発動】——


「なにッ!?」


 次の瞬間、砂塵が吹き荒れ、前衛のプレイヤーたちが吹き飛ばされていく。


「ぐぁっ!」

「耐えられねえ!」


 盾を構えたヴァルドですら、数メートル後方へと押し戻された。


「クソ……このままじゃ、戦線が崩れる……!」


 


 その時、静かにレイヴンが前へと進み出た。


「ふむ……派手なものだな」


 


「おい、ネクロマンサーの兄ちゃん、あんたも攻撃に加わって——」


 ヴァルドが言いかけた瞬間。


「《死者の召喚》」


 


——【スキル効果発動】——

死者の魂を呼び寄せ、戦場に配備する


 


 地面に黒い魔法陣が展開され、そこから無数のスケルトン・ウォーリアたちが現れた。

 それも、ただの雑魚ではない。


 


【スケルトン・ウォーリア(Lv45)×10】

【スケルトン・アーチャー(Lv42)×8】

【スケルトン・メイジ(Lv40)×6】


 


「な……ネクロマンサーの召喚って、こんなに大量にできるのか?」

「普通は一体ずつしか使い捨てにしないはずだが……」


 驚く周囲をよそに、レイヴンは静かに杖を振るう。


「隊列を組め。前衛は防御を固め、後衛は魔法と射撃で支援。交戦距離を保ちながら、敵の行動を制限する」


 レイヴンの指示を受け、スケルトンたちが整然と動き始める。

 前衛にスケルトン・ウォーリアを並べ、アーチャーとメイジが後方に控える陣形。


「……嘘だろ。まるで軍隊じゃないか」

「ネクロマンサーの召喚って、こういう運用ができるのか……?」


 レイド戦に参加していたプレイヤーたちは、思わず息を呑んだ。


「フン……アンデッドは使い捨ての駒じゃない。立派な部隊だ」


 レイヴンは不敵に笑う。


「俺の軍勢が、戦場を制圧する——」


 


 次の瞬間、バルザグラードが咆哮し、巨大な戦斧を振り下ろした。


「——来るぞ!」


 ヴァルドが警戒の声を上げる。


「構えろ! 《死者の加護》!」


——【スキル効果発動】——

支配下のアンデッドに即死・状態異常耐性を付与する


 


 バルザグラードの一撃がスケルトン・ウォーリアたちに直撃する——が、彼らは崩れることなく耐え抜いた。


「耐えた!? 通常なら一撃で消し飛ぶはずなのに!」

「バフスキルか……!? いや、それだけじゃない」


 さらに、レイヴンは冷静に次の指示を出す。


「後衛、攻撃開始。火力を集中しろ!」


 


 スケルトン・メイジたちが詠唱を完了し、一斉に魔法を放つ。


「《ダークフレイム》!」

「《シャドウボルト》!」


 


 闇の魔法がバルザグラードの巨体に直撃し、爆発が起こる。


 


「す、すげえ……まるで戦術部隊じゃねえか」

「ネクロマンサーって、こんな運用ができるのか……?」


 プレイヤーたちは衝撃を受けながらも、次第にレイヴンの戦術に引き込まれていく。


 


 レイドボス戦は、まだ始まったばかり。


 しかし、すでに戦況は変わり始めていた——

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ