第十九話:決着の時
「全員、最後の一撃に備えろ!」
レイヴンの指示が響き渡る。
「亡者の覚醒」によって強化された骸骨兵たちは、通常時とは比べものにならないほどの耐久力を持ち、ラガルドたちの猛攻にも耐え続けていた。
「チッ……しぶといな!」
ヴォルフが苛立ち、大剣を振り回して次々と骸骨兵を薙ぎ払う。しかし、倒しても倒しても、すぐに再生する。
「《蘇生の刻印》——起動!」
レイヴンが刻印魔法を発動すると、フィールドに残された骸骨の破片が黒い霧をまとい、瞬く間に元の形へと戻っていく。
「なんなんだよ、この戦法……!」
ヴォルフが苛立ちながら後退し、ラガルドとアイリスの方を見る。
「こっちのMPもそろそろ限界ね……」
アイリスが息を切らしながら呟いた。魔法障壁で味方を守り続けていたが、もう限界が近い。
「……これ以上は続けても無駄かもな」
ラガルドが苦笑しながら斧を肩に担ぐ。
「ギルド戦は戦争の縮図だ。防衛が鉄壁なら、正攻法で攻めるだけ無駄だろう?」
その言葉を聞いて、ヴォルフが悔しそうに舌打ちした。
「……くそ、負けたってことか」
アイリスも肩を落とし、ため息をついた。
「勝者、レイヴン率いる防衛側チーム!」
システムメッセージが表示され、戦闘が終了する。
「……やった!」
俊也——キャバルが拳を握りしめる。
レイヴンの戦術は見事にハマった。
「まさか、真正面から突破できないとはな。いや、認めるよ。お前、すげぇわ」
ラガルドがレイヴンに向かって笑いながら手を差し出した。
レイヴンも無言でその手を握る。
「……こちらこそ、強敵だったよ」
その瞬間、周囲から拍手が湧き起こった。観戦していたギルドメンバーや他のプレイヤーたちが、レイヴンの勝利を称えていた。
「いやー、すげえ試合だったな! まさかアンデッドをここまで戦術的に使うとは!」
「この戦法、他のネクロマンサーにも広まるんじゃね?」
「レイヴンさんの戦い方、参考にさせてもらいます!」
他のプレイヤーたちの賞賛の声が聞こえてくる。
(……ふむ。こういうのも悪くないな)
レイヴンは内心で微かに微笑む。
彼の名前は、この戦いを機にギルド戦のコミュニティ内で広まっていった。
そしてその名声は、レイド戦で不動のものとなる。




